飛竜誤誕顛末記

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第四章 将軍様一局願います!

第14話 逸らした視線

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「ケイタ、手を離しなさい」
カイマンを抱きしめる腕を力づくで剥がされた。
「嫌だっ」
【ケイタッ、離しちゃ駄目だっ】
あぁ、駄目なのか。
やっぱり逃げられないのか。
バルギーと兵達の手によって、徐々にカイマンと引き剥がされていって絶望する。
どんどんと離され、俺はもうカイマンに絡まる網を握るだけだ。
でもそれが最後の命綱な気がして、渾身の力で網に指を絡ませ握り締めた。
「お前達、無理に引っ張るな。指が傷つく」
バルギーの言葉に兵達が慎重に俺の指から網を取り外そうとするけど、俺だって必死だからもう指が折れても良いっていうくらいの気持ちで抵抗する。
多分俺程度の力なんて本当は簡単に抑え込めるだろうけど、むしろそれで傷付ける事を恐れているのか兵士達は慎重だ。
諦めの悪い俺に、痺れを切らしたのはバルギーだった。
「ケイタ、いい加減にしなさい」
耳元で低く唸られ、俺の手首を掴んでいたバルギーの手に力が込められた。
容赦の無い力に、骨が軋む。
「イタイッ!バルギー、イタイッ!」
「なら手を離しなさい」
「将軍、乱暴な事をしないでください!」
イバンの怒る声が聞こえる。
だけどバルギーの力は全く緩められない。
「ケイタ離しなさい。折ってしまうぞ?」
耳元で恐ろしい事を囁かれた。
「将軍っ」
傷付けるなと周りに命令するのに、自分は平気で俺を傷つけようとしてくる。
分からない。
バルギーのその心の有り様が。
だけどまぁバルギーの心なんて、今更どうでも良い事か。
俺の心は無視されたんだから、俺だってバルギーの心を理解する必要は無いんだ。
そう思うのに、やっぱり納得できない気持ちと、遠く離れてしまった心が悲しかった。
悲しくて、悔しかった。
「・・・お・・折ればいいんだ・・・折ればいいだろっ!・・・折りたきゃ折れよ!!」
どうしても屈するのが悔しくて、だから悲しみを怒りに変えて感情のままに叫ぶ。
傷付けたいなら傷付けりゃいい。
そんな事くらいで、俺は諦めない。
「・・お前らしい答えだな」
俺の叫びを聞いて、バルギーが酷く疲れたような声音で呟いた。
あぁ、折られる。
そう思ったけど、バルギーの手からは逆に力が抜かれた。
「本当に折るわけがないだろう・・・・折れる訳が無い」
小さな呟きは妙に覇気のない声だった。
痛みを鎮めるように、バルギーが絞めていた俺の手首を静かにさする。
相変わらずの心が見えない、不可解な優しさ。
そして、その優しい仕草にそぐわない酷い行動。
「できればお前から手を離して貰いたかったが」
俺の手首を労るようにさすった後にバルギーが取り出したのは、見たことのある黒い枷だった。
初めてバルギーに抱かれた時につけられたあの枷だ。
「止めてください、それは罪人につけるものです」
イバンがわなわなと声を震わせる。
よく分からないけど、だいぶ怒っているみたいだ。
でも、バルギーは何てことないように答えた。
「逃げた奴隷は罪人であろう」
言われた言葉に思わず唇を噛み締めてしまう。
なんでそんな酷い事を言うんだ。
もう期待しない。バルギーとの関係は諦めた。
そう決めたはずなのに、やっぱりバルギーに冷たくされると耐え難い悲しみに襲われた。

バルギーが枷をゆっくりと開く。
あれを付けられたら、もう網を掴み続けるのは無理だ。
それなら枷をつけられる前に、大人しく自分から手を離した方が賢いかもしれない。
そうすれば、枷はつけられずに済むかもしれないんだから。
でも、俺はそうしたくない。
たとえ馬鹿な選択だと言われても、自分の意思では屈したくない。
だから枷をつけられるその瞬間まで、自分の意思では絶対に離してやるものか。
そう心に決めて網を握る力を強くした。
でも意思を奪われる瞬間を見るのは嫌で、そこから目を逸らし天を仰ぐ。
バルギー越しに見上げた空は何処までも高く高く、そして青く澄んでいた。
手首に固い感触が触れ、カチリと音が聞こえるのと同時に体から力が抜ける。
【ケイタっ!ダメっ!】
カイマンの悲痛な叫び声と、どこか安堵したようなバルギーの小さな溜息。
「帰るぞ、ケイタ」
力の抜けた指から絡まる網が取り除かれていく。
もう自分の意思じゃ動けない体では、何の抵抗もできない。

でも。

俺は絶望していない。
「ケイタ?」
思わず浮かんだ小さな笑みに、バルギーが訝しげに顔を覗き込んできた。
間に合った。
俺を覗き込むバルギーの向こう。
青く澄み切った遥か上空から、太陽の光を反射しながら急降下してくるのは飛竜達の群れ。
それはまるで薄緑に光る銀色の流星群のようで、とても綺麗な光景だった。
空を見つめる俺の視線を追うようにバルギーも頭を上げる。
だけど、バルギーの視線が空へ向くよりも先に竜の声が頭の中に響いた。

【離れろ、人間ども】

博識で思慮深い竜の声。
ブワリと全身に風圧を感じたのと同時に、周りにいた兵士達が薙ぎ払われすっ飛んでいった。
俺を抱き込んでいた筈のバルギーの気配も、気付けば側から消えている。
兵達の悲鳴に、次々と地面に降り立つ竜達の足音。
枷のせいで動けず地面に倒れる俺を庇うように、デュマンの大きな体が覆い被さってきた。
【すまないなケイタ。遅くなった】
【ケイタ、大丈夫かっ】
俺を覗き込むデュマンの首の後ろからアントが顔を覗かせ、そのまま俺の上に舞い降りてきた。
『ありがとうデュマン、アント。助かった』
【あぁ、くだらない物をつけられたな】
動けない俺に直ぐに気付いみたいで、デュマンの口が枷の嵌った手首へと近づく。
バキリッ。
硬質な音と共に、手足に力が戻ってくるのが分かった。
見れば、硬そうな筈の枷はデュマンによって容易く噛み砕かれていた。
ヨロリと体を起こし、兵士に揉みくちゃにされながらも印をずっと抱き続けてくれていたエリーを撫でる。
『エリー大丈夫か?』
見下ろせば、エリーは俺に触れないように全身で奴隷印を抱きしめつつ力強く頷いてくれた。
『ありがとう』
続いてカイマンの安否を確認しようとしたら。
【ア、アント。遅いぃぃーー!!こ、こ、こわがっっだぁぁぁぁ】
思った以上に近くからカイマンの泣き声が上がった。
見れば、全身に網と縄を絡ませ簀巻状態のカイマンがビチビチとしている。
【ごめんてカイマン。でも偉かったぞ!ちゃんとケイタを守ってたな】
アントが苦笑気味に褒めながら、カイマンの網を解き始める。
そばに居た他の飛竜達も手伝って、カイマンが網から解放された。
【ケイタ、こわかったな!こわかったなーっ!】
カイマンがベソをかきながら、俺に擦り寄ってくる。
俺を助けようと戦ってくれていた姿は中々頼もしかったけど、本当はカイマンも怖かったらしい。
そんな恐怖と戦いながら俺を守ろうとしてくれていたのかと思うと、ありがたさと愛おしさが込み上げる。
『うん。怖かった。でもカイマンのおかげで助かった。めっちゃ頼もしかったよ。ありがとうな』
頭を撫でてやったら、ムフーと可愛い声をあげて泣き止んでくれた。

「ケイタァっ!」
デュマンの下でカイマンを慰めていたら、離れたところから怒号に近いバルギーの叫び声が聞こえた。
思わずビクリと肩が跳ねる。
視線を上げれば俺を囲む飛竜達の群れの向こう、イバンの手を借りて立ち上がるバルギーが居た。
周りを見渡せば、飛竜達に薙ぎ払われた兵達も何人か倒れてて、他の兵士達の手を借りてヨロヨロしながら立ち上がっている。
「こちらに・・・こちらに来なさい・・・・」
バルギーは竜達を刺激しないよう注意しながら、そっと俺に手を向けてきた。
「ケイタ・・・」
バルギーの目に浮かぶのは、焦燥か恐怖か。
俺が竜に襲われるのを恐れているのか、それとも俺が竜と一緒に行ってしまうのを予感して焦っているのか・・・・。
「デュマン!何をしている!」
バルギーの後ろでナルガスが焦りを含んだ声で怒鳴っている。
【ふん、うるさいの】
飛竜達に睨まれ近寄れない人間達を見て、デュマンが鼻で笑った。
それから俺を見下ろしてくる。
【ケイタ、こんなに痩せ細ってしまって可哀想に。あ奴らめ、こんな無力な子供1人を寄ってたかって甚振るとは情けのない】
デュマンにも子供って言われた・・・。
まぁ、長生きなデュマンから見たら、確かに子供かもしれないけれど。
「ケイタ!そのまま動かずにいろ!」
ナルガスが難しい顔で叫んでいるけど、デュマンはどこ吹く風といった感じだ。
【ケイタ、あ奴らの言葉は聞かなくて良い。人間達はもうお前には近寄らせないから安心していいぞ】
デュマンの大きな顔が優しく俺の体をさすってくれて、言われた通り安心感を感じた。
【さぁ、乗りなさい。連れて行ってやる】
デュマンが体を低くして、俺に背中を向ける。
その大きな背中には鞍が装着されていた。
【これ付けるので時間が掛かったんだ。ケイタ乗せるならこれが必要だってデュマンが言うからさ。飛竜達に教えて貰いながらやったけど、凄い大変だったんだぞ!】
鞍を見て、アントがげんなりした声を出した。
え、これアントがつけたの?
すげぇ、ベルトとかちゃんと締まってるんだけど。
『器用だな、アント・・』
【まぁな!でも、もう2度とやりたくないぞ!ほらケイタ、急げ】
『あ、うん』
アントにも急かされて、デュマンが差し出してくれた腕を踏み台に白い体をよじ登る。
「ケイタ駄目だっ!乗るんじゃない!」
「ケイタ!やめなさい!」
俺の行動を見て、ナルガスとバルギーが悲鳴をあげた。
イバンやハリド、周りの兵士達も顔を引き攣らせながらやめろと口々に叫ぶ。
バルギーに捕まるのが怖くて人間全員に対して警戒心を抱いていたけど、叫ぶ兵士達の中には見知った顔もチラホラあって、その顔が純粋に俺の身の安全を案じているというのも伝わってきた。
今まで良くしてもらった記憶が蘇って、彼らの言葉を無視する事に罪悪感を感じる。
【ケイタ、気にしなくていい。お前はお前のことだけを考えれば良い】
俺の迷いを察したのか、デュマンが諭すように囁く。
『うん・・・・』
そうだ。今更もう引き返せない。
バルギーの元に戻る事なんて出来ねぇんだから。
俺は逡巡する気持ちを振り払って、デュマンの背中に再び登り始める。
「ケイタっ、やめてくれ!」
「将軍だめです!竜達が攻撃体勢を取ってるのが見えないんですか?!」
「馬将軍いけません!」
バルギーが飛竜達の威嚇を無視して走り出そうとするのを、イバンとハリドが必死で抑えている。
「貴様ら離せっ!ケイタ!降りなさい!駄目だっ!」
2人を振り解こうと暴れながらバルギーが必死な目をこちらに向けてくる。
「ケイタ!頼むっ」
縋るようなバルギーの目の奥と奥が合った。
そこにあったのは、以前ナマズに襲われた俺を見た時と同じ目。
怪我をした俺を怒りながら案じてくれた時と同じ目。
熱で倒れる寸前に見せたのと同じ目。
奴隷商で助け出してくれた時に浮かべたのと同じ後悔と心配の目。
何度も見てきた深い情を感じさせる暖かさがそこにある気がして、俺は咄嗟に目を逸らしてしまった。
だって、また期待して傷つきたくなかったんだもん。

バルギーから送られる強い視線から意識を剥がして、ようやく登ったデュマンの背中の大きな鞍に跨った。
バルギー達が叫んでいるけど、意識的にそれを聞かないように他の事へ思考を移す。
横をチラリと見れば、カイマンは既に他の飛竜に張り付いてスタンバってる。
『アント、ダイルとアリ達はまだかな・・・』
【ん?あいつらも直ぐ来るぞ。ここに飛んできた時に下走ってるの見たもん】
【ふふふ、ラビクめ乗り遅れたな】
デュマンが何か勝ち誇ったように笑いを漏らす。
【さぁ、飛ぶぞ。ケイタしっかり掴まっているんだよ】
体を低くしていたデュマンが起き上がり、翼を広げる。
それを見て、周りの飛竜達も同じように一斉に翼を広げた。
【あぁ、お前とお前はダイル達を待ってやれ】
【分かったデュマン】
【任せろ】
群れの中の2頭にデュマンが指示を出す。
【ケイタ、体を低くしてデュマンに体を寄せてろ】
アントが俺の背中に張り付く。
言われた通りにすれば、アントがいいぞとデュマンに合図を送った。
【よし行くぞ】
言うが早いかデュマンが翼を振り大地を蹴る。
飛行機が離陸した時のような、一瞬下から引っ張られるような感覚と次いで浮遊感を感じた。
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