厄災のレジスタンス

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第一話 呪われた世界

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第一話 呪われた世界

かつて何もない無そのものだった万物から、全ての創造主である『原初の神』が生まれた。
『原初の神』は何もない無に灯りを灯したことで、そこから大きな木が芽吹き、全てを誕生させていった。
『原初の神』は世界の次に、そこに住まう命を創造した。


硬い鱗、鋭い爪と牙、畏怖の象徴そのものである角、そして大空を羽ばたく翼を持つ『竜族』を。

森羅万象に存在する自然界から生まれた自然の子供である『精霊族』を。

過酷な環境を生き抜き、野生の勘が研ぎ澄まされた狩人である『獣族』を。

死後の霊魂を天国へと運ぶ、聖なる光の化身である『天使族』を。

誰よりも弱いが、皆で力を合わせることで栄光の文明を築く『人族』を。

そして、光の世界を統べる全ての種族の頂点に君臨する超高次存在『神族』を。


『原初の神』は自身の創作物である命達に、無条件の博愛を注いでいた。
命達が住みやすい様に天気を変えて豊作にしたり、命達に力強く生きやすくするために自身の加護を与えて、死後の霊魂に労いを与えるための理想郷である天国を創造して、命達に安寧と平和を与えた。
しかし、『原初の神』の純粋な愛情を、生命は、世界は、受け入れなかった。
神族を筆頭とした生命たちは、『原初の神』に与えられた力を自身の力だと奢って、『原初の神』に変わろうとしていた。力を使いすぎて、弱体化していた『原初の神』を殺すために、全種族を巻き込んだ大宴会を開いた。自身の創作物たちからもらった贈り物に『原初の神』は喜んだ。そして『原初の神』に毒が入った酒を渡し、そして毒にやられて、種族たちの思惑通りとなった。

『原初の神』は怒りと悲しみ、憎悪に震えながら血を吐き、皮膚が腐食していき、生き地獄を味わっていた。種族たちはその姿を見て嘲笑い、死が目と鼻の先まで近づいた時に、『原初の神』は怒りに満ちた表情でこう言った。


「お前たちは、私の怒りと憎悪によって、私が味わう苦痛を超える地獄を迎え滅びる。覚えていろ、今の至福の時を、私がそれを絶望の深淵へと突き落とし、貴様らを滅ぼしてくれる………………!!!!」


『原初の神』は死に際に、誰かの幸せにするためではなく、誰かを地獄へと叩き落とすために、自身の魂と亡骸を贄に最後の創造を行った。

  世界を燃やし焦がし尽くす“火”を
 
  全ての人と大地を水の底に沈めて清める“水”を

  竜巻となりすべてを吹き飛ばす“風”を

  地割れを起こして人を奈落の底へと落とす“地”を

  破滅の光で全てを溶かし天へと召し上げる“聖”を

  万物の恐怖そのものの悪夢へと突き落とし“闇”を

  星の命を根こそぎ吸い上げて枯らす“生命”を

  そして、この世の全てを造り出して、壊し尽くす”混沌“を。

『原初の神』の死後に世界へとかけた八つの呪いは、全種族を何度も壊滅させていった。
どうにか怒りを鎮めてもらうためにあらゆる手を尽くしたが、八つの大厄災は無慈悲に全てを蹂躙していった。立ち向かおうとしても、その圧倒的な力によってねじ伏せられて、何度も世界を滅ぼし再生させた。もはやこの世界は、『原初の神』の怒りを買った、呪われた世界へと堕ちてしまった。

これは、もう何度目かの世界に住まう種族たちが、自分自身の罪へと立ち向かう、残酷で美しい記録である。
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