37 / 91
第一章
36
しおりを挟む
「明日、急遽国王陛下主催の立食パーティーに招待されませんでした?貴族全員参加と聞いていますがあまりにも急なので気になったのですが」
「ああ。俺の家も招待されたぞ。なんでも大事な話があるらしいな」
「はい。普通にパーティーをして何かに直接関わりのある人だけ残るように言われるみたいですが、何の話でしょう?」
「あーそれ、俺も招待されてるよ。エルフ族も魔族も精霊族も何人かは呼ばれるそうだねぇ」
精霊狩りが始まって約一ヵ月半。いまだに被害はゼロ。無駄だと理解したのか精霊を狩ろうとする奴も減ってきた。それで学園が明日から夏休みに入るから、このタイミングで立食パーティーを開くように陛下にお願いした。犯人のこととかはまだ言ってないけど二つ返事で了承してくれた。
こんな急な話、国中を混乱させることになるのにねー。
「なんで貴族じゃないお前が招待されてるんだ?」
「さーね。気になるなら国王陛下に直接聞きな。大した理由はないよー」
「……そうか」
「あれ、珍しくランスロットくんが大人しい。どうしたのー?頭でも打った?」
「おまっ!信じられないぐらい失礼だな!」
それは君限定だよー。面白いじゃんね、ランスロットくん。俺だって揶揄いがいがない人にまでおんなじことはしないよ。
「ランスロットもナギサ様を認めてきていると言うことでは?と言うか、結構最初から認めてたくせに最初があんなでしたから素直になれないんですよ」
「セーイーンー!余計なこと言うんじゃないっ!」
本当のことですよね?と言うセインくんもランスロットくんをからかうのが結構好きそうだよね。気が合うー。それよりね、君たちエリオットくんの存在忘れてない?一応先輩だよ?気まずそうにしてるんだけど見えてるかなぁ?
今は食堂で昼食を取ってるんだけど、最近では同学年に友人がいないらしいエリオットくんとも一緒に食べてるんだ。人数が多い方がやっぱり楽しいよねぇ。でも気まずいのを紛らわそうとしてるのか俺の髪をぼっさぼさにかき混ぜてくるのやめてくれない?髪が長いわけではないから直さないとーとかそういうんじゃなくてね、ただ頭が揺れる。
「ねーねーエリオットくん。ちょっと手放してよ。俺、ごはん食べられないんだけど……」
「だってお前、ナギサ。俺は平民で尚且つお前ほどは図太くねえんだよ」
だからこんな状況で話に混ざる度胸はねえし、俺はもう食べ終わったからな。授業まではまだ時間あるしな、と続ける。
だからと言って俺の髪ぐちゃぐちゃにしないでくれない?ぼさぼさでもぐちゃぐちゃでも別に何でも良いけど、食事中なんだよこっちはさー。
「男の髪撫でまわして楽しいのー?」
「いや、まったく?」
「じゃあやめよーよ!」
楽しくないのになんでやるのかな?楽しいならまだ良い……ことはないけど、マシ………なのかな?だけど楽しくないのにやらなくて良くない?どっちにとってもマイナスでしかないんですけどー。
「……漫才でもしてんのか?」
え、この世界に漫才なんて言葉あるんだねー?初めて知ったんだけどー。
「そんなわけないでしょ。エリオットくんが二人の会話に混ざりづらいからって俺の髪で遊ぶんだよー。俺、ごはん食べたいからさ、エリオットくんも話に混ぜてあげてよ」
「ちょっ」
「ああ、それは悪かったな。一緒に話そう。で、お前はさっさと食べ終われ。遅いんだよ」
「俺のせいじゃないと思うんだけどなぁ」
すーぐ俺のせいにしてくるのやめてよねぇ。俺だっていつもは皆と同じころに食べ終わるしー。
今日は邪魔されてたから遅いんだよ。それに遅いって言ってもねぇ、君たちが早いんだよ?いっつも食べ終わるの早いじゃん俺たち。
「………やっぱり仕草が綺麗なんだよな…公爵家の俺らからしても格が違うって思うんだが。どんな生活してるんだよ。実は王族だったりするか?」
そうだね。間違ってないよー。精霊の、という言葉が先に来るけどねぇ。精霊に王族とかはないから族じゃなくてただの「王」にはなっちゃうけど。
「そんなわけないでしょー。それにそんな綺麗なものでもないってぇ」
ま、誤魔化すしかないよねー?仕草が綺麗って言っても、たしかに丁寧にするよう気を付けてはいるけど上には上がいるものだよ。
そんな大層なものではないから。
それより肘を付いて話してるくせにだらしない感じがしないランスロットくんの方がちゃんとしてるよー。たぶんねぇ。
「ごちそうさまでした。俺も食べ終わったから行こー」
「午後からの授業って……」
「──あの、お話し中すみません。先生から伝言なのですが、明日は国王陛下主催の夜会があるので午後からの授業はなくなったそうです。ですので皆様自由にご帰宅ください、だそうです」
「そうなのですか?ありがとうございます」
「いえ。私はこれで失礼します」
思わず隣にいたエリオットくんと目を見合わせちゃったよ。すご。ベストタイミングだねぇ?皆に報せ回ってるようだし大変だね。心の中で激励でもしておこっかー。
「…だそうです。今からどうしますか?僕は帰ろうかと思いますが」
「俺も帰る。明日の準備しなければいけないからな」
「俺は妹と一緒に帰るので一年の教室に寄ろうと思います。先に帰っていただいて結構ですよ」
「なら俺も帰るよー。夏休み中、予定が合えば遊ぼーね。じゃ」
俺も準備があるからねぇ。明日の主役は俺……ではないね。パーティーの主役は俺だけど、パーティー後のお話の主役は俺じゃない。むしろ言動だけ見れば悪役かもね。事情を知らなければの話だけどさ。
明日のパーティーが貴族全員参加なのは他の種族や高貴な人がいても違和感ないようにするためだよ。国王陛下が配慮してくれた。この件がすべて片付いたらアルフォンスくんとはお別れだねぇ。もちろん一生のお別れってわけではないから会いに行こうと思えばいつでも会えるんだけど、今までほど仲良くはしてもらえなくなるんじゃないかなって話。
やっぱり子供は好きだからさ、しばらく会わなくなってよそよそしくなったりしたらすごい嫌なんだけどー。ショックなんだけどー。………今のうちにあまり会えなくなってもよそよそしくならないようにもっと構っておこ。
「ああ。俺の家も招待されたぞ。なんでも大事な話があるらしいな」
「はい。普通にパーティーをして何かに直接関わりのある人だけ残るように言われるみたいですが、何の話でしょう?」
「あーそれ、俺も招待されてるよ。エルフ族も魔族も精霊族も何人かは呼ばれるそうだねぇ」
精霊狩りが始まって約一ヵ月半。いまだに被害はゼロ。無駄だと理解したのか精霊を狩ろうとする奴も減ってきた。それで学園が明日から夏休みに入るから、このタイミングで立食パーティーを開くように陛下にお願いした。犯人のこととかはまだ言ってないけど二つ返事で了承してくれた。
こんな急な話、国中を混乱させることになるのにねー。
「なんで貴族じゃないお前が招待されてるんだ?」
「さーね。気になるなら国王陛下に直接聞きな。大した理由はないよー」
「……そうか」
「あれ、珍しくランスロットくんが大人しい。どうしたのー?頭でも打った?」
「おまっ!信じられないぐらい失礼だな!」
それは君限定だよー。面白いじゃんね、ランスロットくん。俺だって揶揄いがいがない人にまでおんなじことはしないよ。
「ランスロットもナギサ様を認めてきていると言うことでは?と言うか、結構最初から認めてたくせに最初があんなでしたから素直になれないんですよ」
「セーイーンー!余計なこと言うんじゃないっ!」
本当のことですよね?と言うセインくんもランスロットくんをからかうのが結構好きそうだよね。気が合うー。それよりね、君たちエリオットくんの存在忘れてない?一応先輩だよ?気まずそうにしてるんだけど見えてるかなぁ?
今は食堂で昼食を取ってるんだけど、最近では同学年に友人がいないらしいエリオットくんとも一緒に食べてるんだ。人数が多い方がやっぱり楽しいよねぇ。でも気まずいのを紛らわそうとしてるのか俺の髪をぼっさぼさにかき混ぜてくるのやめてくれない?髪が長いわけではないから直さないとーとかそういうんじゃなくてね、ただ頭が揺れる。
「ねーねーエリオットくん。ちょっと手放してよ。俺、ごはん食べられないんだけど……」
「だってお前、ナギサ。俺は平民で尚且つお前ほどは図太くねえんだよ」
だからこんな状況で話に混ざる度胸はねえし、俺はもう食べ終わったからな。授業まではまだ時間あるしな、と続ける。
だからと言って俺の髪ぐちゃぐちゃにしないでくれない?ぼさぼさでもぐちゃぐちゃでも別に何でも良いけど、食事中なんだよこっちはさー。
「男の髪撫でまわして楽しいのー?」
「いや、まったく?」
「じゃあやめよーよ!」
楽しくないのになんでやるのかな?楽しいならまだ良い……ことはないけど、マシ………なのかな?だけど楽しくないのにやらなくて良くない?どっちにとってもマイナスでしかないんですけどー。
「……漫才でもしてんのか?」
え、この世界に漫才なんて言葉あるんだねー?初めて知ったんだけどー。
「そんなわけないでしょ。エリオットくんが二人の会話に混ざりづらいからって俺の髪で遊ぶんだよー。俺、ごはん食べたいからさ、エリオットくんも話に混ぜてあげてよ」
「ちょっ」
「ああ、それは悪かったな。一緒に話そう。で、お前はさっさと食べ終われ。遅いんだよ」
「俺のせいじゃないと思うんだけどなぁ」
すーぐ俺のせいにしてくるのやめてよねぇ。俺だっていつもは皆と同じころに食べ終わるしー。
今日は邪魔されてたから遅いんだよ。それに遅いって言ってもねぇ、君たちが早いんだよ?いっつも食べ終わるの早いじゃん俺たち。
「………やっぱり仕草が綺麗なんだよな…公爵家の俺らからしても格が違うって思うんだが。どんな生活してるんだよ。実は王族だったりするか?」
そうだね。間違ってないよー。精霊の、という言葉が先に来るけどねぇ。精霊に王族とかはないから族じゃなくてただの「王」にはなっちゃうけど。
「そんなわけないでしょー。それにそんな綺麗なものでもないってぇ」
ま、誤魔化すしかないよねー?仕草が綺麗って言っても、たしかに丁寧にするよう気を付けてはいるけど上には上がいるものだよ。
そんな大層なものではないから。
それより肘を付いて話してるくせにだらしない感じがしないランスロットくんの方がちゃんとしてるよー。たぶんねぇ。
「ごちそうさまでした。俺も食べ終わったから行こー」
「午後からの授業って……」
「──あの、お話し中すみません。先生から伝言なのですが、明日は国王陛下主催の夜会があるので午後からの授業はなくなったそうです。ですので皆様自由にご帰宅ください、だそうです」
「そうなのですか?ありがとうございます」
「いえ。私はこれで失礼します」
思わず隣にいたエリオットくんと目を見合わせちゃったよ。すご。ベストタイミングだねぇ?皆に報せ回ってるようだし大変だね。心の中で激励でもしておこっかー。
「…だそうです。今からどうしますか?僕は帰ろうかと思いますが」
「俺も帰る。明日の準備しなければいけないからな」
「俺は妹と一緒に帰るので一年の教室に寄ろうと思います。先に帰っていただいて結構ですよ」
「なら俺も帰るよー。夏休み中、予定が合えば遊ぼーね。じゃ」
俺も準備があるからねぇ。明日の主役は俺……ではないね。パーティーの主役は俺だけど、パーティー後のお話の主役は俺じゃない。むしろ言動だけ見れば悪役かもね。事情を知らなければの話だけどさ。
明日のパーティーが貴族全員参加なのは他の種族や高貴な人がいても違和感ないようにするためだよ。国王陛下が配慮してくれた。この件がすべて片付いたらアルフォンスくんとはお別れだねぇ。もちろん一生のお別れってわけではないから会いに行こうと思えばいつでも会えるんだけど、今までほど仲良くはしてもらえなくなるんじゃないかなって話。
やっぱり子供は好きだからさ、しばらく会わなくなってよそよそしくなったりしたらすごい嫌なんだけどー。ショックなんだけどー。………今のうちにあまり会えなくなってもよそよそしくならないようにもっと構っておこ。
応援ありがとうございます!
280
お気に入りに追加
546
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる