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第一章
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「ありがとう」
断罪と言いながら客室に案内されてそれぞれ席に着いた俺たち。メイドがお茶を持ってきてくれたので礼を言って、礼儀として一口飲んでからカップをソーサーに戻した。
広めの客室。テーブルを囲うように椅子を設置されている部屋の上座に俺、その隣に精霊たち、両斜めに他三種族で集められた人。
人間族からは国王王妃両陛下と王弟殿下(二人のうち下の弟)、エルフ族からはエルフの王と王妹、魔族からは魔王と魔王の右腕。俺や精霊たちを合わせ、合計十三名。ここまで来たら犯人が誰なのかはもう分かるよねぇ。
「──ねぇ国王、この世界において精霊はどんな存在ー?」
「え……あ、はい。全四種族のうち唯一魔法というものを使うことができる種族で、文化や技術の発展に欠かせない存在で、滅びれば国どころか世界の未来もないとされる非常に重要な存在です」
「んーまあそうなんだけど……そうじゃなくて、精霊の性格は?」
「非常に気まぐれ、何に縛られることもなく自由な性格だったかと」
「うん。じゃあ精霊王は?」
「どの代の精霊王も例外なく非常に強く、誰よりも仲間思いです。精霊たちの主人ですが同時に親のような存在でもあり仲間に対しては大変甘くて優しいと言われていますが、仲間が傷付けられた場合には神々さえも敵に…回すほど……冷酷に、なる…と………」
そうだねぇ。実際にどうなのかは置いといてその神々さえも敵に回すほど冷酷になると言われてるのが精霊王だねー。まあ神なんていないから所詮は例え話だけど。
「で、その精霊王を敵に回したのは誰だっけー?」
「「「………」」」
「君たちはほんっと、愚かだよねぇ……今から約四千年前、このティルアード王国は亡びかけた。原因は覚えてるー?みんな王族なんだから分かってるよねぇ?………精霊に手を出したからだよ。初代精霊王アリサ様が動いたのはそれが理由。アリサ様と前精霊王のローランド様お二方の温情でこの国はまだある。君たちはまた、同じことを繰り返すんだねぇ」
馬鹿だよねぇ。どの時代のひとたちも愛国心なさすぎない?それともこの国はもう要らないとか?
「魔王はどう思う?この国は皆にとって要らない国なのか、それとも精霊はそんなに恨まれるようなことでもしたかな」
「……いえ」
「エルフ族長、この国はもう要らないー?壊していいのかなぁ?」
「そんなことは…!」
全員黙って俯いたまま黙る。これじゃあ俺が悪いみたいじゃないー?この場において傍から見た時に悪役なのは俺かもしれないけどさ。精霊たちまで手が震えてるし俺の方を見ようとしないんだけどー……
「まあそんなことはどうでもいっかー。君たち王を責めても仕方ないしね。問題は君たちだよね。精霊殺しによる呪いと精霊狩りの主犯、俺が犯人に気付かないとでも思った?とっくに気付いてたよ。揃いも揃って王に近い立場のくせになんでこんな馬鹿なことするのかなぁ?ねぇ、王弟アベル、エルフ王妹カナン、魔王の右腕クシェイド?苦しむ俺たちの仲間をいたぶるのは楽しかったー?終わりが見えない苦しみに精神が壊れる精霊をいたぶるのは楽しかった?ねぇ、どんな気分でやってたの?教えてよ、俺にもさ」
立ち上がって一人一人の顔を覗き込んで言うと三人そろって泣きそうになってる。ここで泣かないでほしいんだけど。俺たち精霊がとんでもない穢れに耐えてここにいるんだからさ、これ以上見苦しい姿を見せないでくれないかなぁ?
俺にしてはまだ穏やかな方だと思うんだけど、ここで泣いてどうするのー?まだ断罪とはいえないと思うよ?まだただの話し合いでしょこれは。
「…ナギサ様、殺気」
「え?あっ、ごめん」
無意識に殺気が出てたみたいだね。ほんとに気付かなかったよ。普段なんでもない時におどおどしてるくせに、こういう時に限って普通とまではいかなくても、他の人に比べたら平気そうな顔で声を掛けてくるのがノームなんだよねぇ……謎だよねー。いつもは大精霊としてそんなので大丈夫なのって感じなのにねー。
「それで、どうなのー?俺はさ、今日は暇じゃないの。さっさと話を進めさせてくれないかなぁ」
「あ、ああっ、言ってやるよ!最高だったなあ!俺たちを見下しているかのように圧倒的な強さを誇る精霊が、自分たちの手で断末魔を上げるのは…!」
──この部屋にいる誰もが部屋の温度が一気に寒くなったなったと錯覚しただろう。それほど強烈な殺気をナギサは放った。直に浴びた王弟は白目を向いて失神してしまっている。
「あっそ。起きろ」
恐ろしく重くて低い声でナギサはそう言って魔法で無理矢理起こした。その信じられないほどに冷酷な表情を見た精霊たちは絶望しながら揃ってこう思った。ナギサ様の怒りが振り切れたな、と。過去にも一度あったがこうなったナギサは誰一人として止められない。
ただナギサの怒りが収まるのを待つことしかできない。シルフが全力で浄化魔法を掛けたところでまったく意味はないだろう。過去最高峰の強さを誇るナギサだ。実際にはしないが大精霊全員で掛かっても、精霊全員で向かって行ってもたった一つの動作で無力化するだけの実力を持っているのだ。
「ひっ!」
「誰が眠っていいなんて言った?もう少し起きていろ、じきに永遠の眠りに付かせてやる」
ギロッと睨むとまた失神しそうになったから魔法で圧死する手前の強さで拘束して宙に浮かせた。俺が精霊を殺した感想を聞くのはこの男だけじゃないからねぇ?というか三人とももう泣いてるし。なんでー?
王たちの黙って俯いて震えることしかできないことが哀れに思えてくるねー。
断罪と言いながら客室に案内されてそれぞれ席に着いた俺たち。メイドがお茶を持ってきてくれたので礼を言って、礼儀として一口飲んでからカップをソーサーに戻した。
広めの客室。テーブルを囲うように椅子を設置されている部屋の上座に俺、その隣に精霊たち、両斜めに他三種族で集められた人。
人間族からは国王王妃両陛下と王弟殿下(二人のうち下の弟)、エルフ族からはエルフの王と王妹、魔族からは魔王と魔王の右腕。俺や精霊たちを合わせ、合計十三名。ここまで来たら犯人が誰なのかはもう分かるよねぇ。
「──ねぇ国王、この世界において精霊はどんな存在ー?」
「え……あ、はい。全四種族のうち唯一魔法というものを使うことができる種族で、文化や技術の発展に欠かせない存在で、滅びれば国どころか世界の未来もないとされる非常に重要な存在です」
「んーまあそうなんだけど……そうじゃなくて、精霊の性格は?」
「非常に気まぐれ、何に縛られることもなく自由な性格だったかと」
「うん。じゃあ精霊王は?」
「どの代の精霊王も例外なく非常に強く、誰よりも仲間思いです。精霊たちの主人ですが同時に親のような存在でもあり仲間に対しては大変甘くて優しいと言われていますが、仲間が傷付けられた場合には神々さえも敵に…回すほど……冷酷に、なる…と………」
そうだねぇ。実際にどうなのかは置いといてその神々さえも敵に回すほど冷酷になると言われてるのが精霊王だねー。まあ神なんていないから所詮は例え話だけど。
「で、その精霊王を敵に回したのは誰だっけー?」
「「「………」」」
「君たちはほんっと、愚かだよねぇ……今から約四千年前、このティルアード王国は亡びかけた。原因は覚えてるー?みんな王族なんだから分かってるよねぇ?………精霊に手を出したからだよ。初代精霊王アリサ様が動いたのはそれが理由。アリサ様と前精霊王のローランド様お二方の温情でこの国はまだある。君たちはまた、同じことを繰り返すんだねぇ」
馬鹿だよねぇ。どの時代のひとたちも愛国心なさすぎない?それともこの国はもう要らないとか?
「魔王はどう思う?この国は皆にとって要らない国なのか、それとも精霊はそんなに恨まれるようなことでもしたかな」
「……いえ」
「エルフ族長、この国はもう要らないー?壊していいのかなぁ?」
「そんなことは…!」
全員黙って俯いたまま黙る。これじゃあ俺が悪いみたいじゃないー?この場において傍から見た時に悪役なのは俺かもしれないけどさ。精霊たちまで手が震えてるし俺の方を見ようとしないんだけどー……
「まあそんなことはどうでもいっかー。君たち王を責めても仕方ないしね。問題は君たちだよね。精霊殺しによる呪いと精霊狩りの主犯、俺が犯人に気付かないとでも思った?とっくに気付いてたよ。揃いも揃って王に近い立場のくせになんでこんな馬鹿なことするのかなぁ?ねぇ、王弟アベル、エルフ王妹カナン、魔王の右腕クシェイド?苦しむ俺たちの仲間をいたぶるのは楽しかったー?終わりが見えない苦しみに精神が壊れる精霊をいたぶるのは楽しかった?ねぇ、どんな気分でやってたの?教えてよ、俺にもさ」
立ち上がって一人一人の顔を覗き込んで言うと三人そろって泣きそうになってる。ここで泣かないでほしいんだけど。俺たち精霊がとんでもない穢れに耐えてここにいるんだからさ、これ以上見苦しい姿を見せないでくれないかなぁ?
俺にしてはまだ穏やかな方だと思うんだけど、ここで泣いてどうするのー?まだ断罪とはいえないと思うよ?まだただの話し合いでしょこれは。
「…ナギサ様、殺気」
「え?あっ、ごめん」
無意識に殺気が出てたみたいだね。ほんとに気付かなかったよ。普段なんでもない時におどおどしてるくせに、こういう時に限って普通とまではいかなくても、他の人に比べたら平気そうな顔で声を掛けてくるのがノームなんだよねぇ……謎だよねー。いつもは大精霊としてそんなので大丈夫なのって感じなのにねー。
「それで、どうなのー?俺はさ、今日は暇じゃないの。さっさと話を進めさせてくれないかなぁ」
「あ、ああっ、言ってやるよ!最高だったなあ!俺たちを見下しているかのように圧倒的な強さを誇る精霊が、自分たちの手で断末魔を上げるのは…!」
──この部屋にいる誰もが部屋の温度が一気に寒くなったなったと錯覚しただろう。それほど強烈な殺気をナギサは放った。直に浴びた王弟は白目を向いて失神してしまっている。
「あっそ。起きろ」
恐ろしく重くて低い声でナギサはそう言って魔法で無理矢理起こした。その信じられないほどに冷酷な表情を見た精霊たちは絶望しながら揃ってこう思った。ナギサ様の怒りが振り切れたな、と。過去にも一度あったがこうなったナギサは誰一人として止められない。
ただナギサの怒りが収まるのを待つことしかできない。シルフが全力で浄化魔法を掛けたところでまったく意味はないだろう。過去最高峰の強さを誇るナギサだ。実際にはしないが大精霊全員で掛かっても、精霊全員で向かって行ってもたった一つの動作で無力化するだけの実力を持っているのだ。
「ひっ!」
「誰が眠っていいなんて言った?もう少し起きていろ、じきに永遠の眠りに付かせてやる」
ギロッと睨むとまた失神しそうになったから魔法で圧死する手前の強さで拘束して宙に浮かせた。俺が精霊を殺した感想を聞くのはこの男だけじゃないからねぇ?というか三人とももう泣いてるし。なんでー?
王たちの黙って俯いて震えることしかできないことが哀れに思えてくるねー。
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