上 下
51 / 128
第一章

50

しおりを挟む
「みんな準備できたね。普通にビーチで泳ぐのと水の宮の敷地内で泳ぐの、どっちがいい?敷地内でも十分な広さはあるよ」
「こんな機会二度とないかも知れないから敷地内で遊ばせてもらわないか?」
「俺は賛成」
「僕も同じことを思っていました」
「そう?じゃ、中庭パティオに行こっか」

 中庭って言っても陸じゃなくて海中なんだけどねー。この宮はかなり深い所にあるから敷地内で泳ぐなら空気があって呼吸できるし、魚や珊瑚が綺麗に見えるよ。
 海中は海中でも俺の結界の中だからねぇ。ここなら溺れる心配もないしー。
 結界内でも俺が招待しない限り見つけることすらできない宮は、魚も存在がないかのように壁をすり抜けて入ってくる。

 少し歩くと中庭に到着した。深さがあるにも関わらず太陽の光が届く透明度の高い海水、様々な小魚にカラフルで宝石の如く輝く珊瑚。まったく同じ景色ということがないこの中庭は何度見ても幻想的で飽きない。
 事実、セインくんにランスロットくん、エリオットくんの三人は中庭の綺麗な景色に目を奪われていた。

「綺麗でしょ?」
「そうですね。こんなに素敵なものは中々見られません。…兄上たちにもお見せしたい……」

 後半はボソッと呟いた、ひとりごとのつもりだった言葉なんだろうけど俺には聞こえてしまった。そんなに気に入ってもらえたならこの宮を管理する俺としてはとても嬉しいねー。

 いつか招待してあげても良いかもね。

「鬼ごっこって知ってるー?」
「知ってますよ」
「じゃあ俺が鬼ね。範囲は中庭だけ、じゃあスタート!」
「ちょっおい、急すぎだろ!」

 スタート!って言って十秒数えて始めると急いで全員逃げて行った。それにしてもこの世界は鬼ごっこまであるのかぁ……過去に転生者でもいたのかな。さすがに似てるところが多すぎるよね、あとで調べて見よ。

「みんなおいでー!」

 手をパンパンッと二度叩いてこの宮にいる精霊たちを呼び出す。さっきカヌレ作ってたけどたぶんもう出来てるから暇してるんじゃないー?
 それなら四人でやるより楽しいからみんな呼んだ方が良いよね。案の定みんな暇してたみたいで、なにをするか説明したら「王様から逃げろー!」とか言い、走って泳いで俺から離れて行った。

 中庭だけって言っても大分広さはあるんだよねぇ。精霊も合わせて二十人くらいかな?あまり早く捕まえてもつまんないから遊ぼ。

「じゃあ行くよー」
「え!?ナギサ、おまえちょっと速すぎだって…!」

 遊びだからね、魔法を使うなんて無粋なことはしないよ?だけどねぇ、俺は泳ぎも走りも得意なんだよねー。水泳は全国大会で三年連続優勝経験あり、走るのは陸上やってたんだよね。短距離は五十メートル五秒台で長距離と共に優勝経験ありだから。………最高記録は、だけどねー?

 そりゃあ毎回優勝とはいかないよ流石にさ。タイムだってどうしても落ちる時は落ちるし。まあ転生してから前世で習ってたようなことあまりしてないから大分衰えてると思うんだよねぇ。一応欠かさず練習はしてるんだけどね。

 それでもその道の選手だった俺が負けるわけにはいかないので最後はしっかりみんな捕まえさせて頂きますよー。なんのプライドなのか自分でも分からないけどー。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,819pt お気に入り:2,527

美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:873pt お気に入り:2,780

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:773pt お気に入り:2,215

箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

異世界ホストNo.1

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:334

後輩

BL / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:41

嫌われ悪役令嬢に転生してしまった件

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,644pt お気に入り:90

処理中です...