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第一章

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「んー俺の部屋で良いかな…?うん、ちょっと歩くことになるけど大丈夫?」
「ああ」
「良かった。じゃあ案内も兼ねてこの宮を紹介するよー。精霊王の宮というのは精霊王が招いた人しか入れない、見つけることもできない。俺も端から端までちゃんと見て回ったことはないんだけど、かなりの広くて、敷地だけなら王都と同じくらいあるんだよ」
「それは…広いなんてレベルではなくないか…?王都と同じくらいって貴族街も含まれるのか?」
「うん。貴族街と王城もだねー」

 前世で言うなら大きな街一つ分ってところかな。貴族街は貴族やお金持ちの屋敷がある通りだからね。貴族のお屋敷なんだから建物だけじゃなくて庭もかなりの広さがあるし中にはお城並みの家だってある。
 そんな大きな街と同じくらいの広さがあるんだから端から端まで見て回ろうとは思わないでしょ。それだけで二日はかかるよきっと。

「やっぱり部屋数が多いのですか?」
「部屋数も多いし、一部屋が異常なくらい広い。玉座の間とか書庫とか客室とか。使われてない部屋もあるんじゃないかなぁ?書庫は……そうだねぇ、この宮の五分の一くらいを占めてるかな」

 一番広い部屋が書庫になるね。

「ヤバいな。行ったことねえから知らねえけど、王城の図書室より広いんじゃね?」
「だろうねぇ。精霊王は様々な場所から国内外の状況を把握しているからね。得られる情報も知識も多いし長生きな分、歴史あるこの国でも精霊王はまだ三代目。より正確で詳しい歴史が分かるから記録が多いし禁書もたくさん。世界中で精霊王ただ一人しか知らない情報や過去だってたくさんあるんだよー」

 だから精霊王は口が堅くないとダメ。ちょっとしたことから戦争に発展することだってあるんだから、おいそれと自分の知る知識を話しちゃいけないんだよー。
 結果、そういうのと関係ないところでも秘密主義になりやすいらしいんだけどそれは俺も人のこと言えないねぇ。前世の記憶がどうちゃらこうちゃらって絶対頭を心配されるからさぁ。

 俺は前世の生い立ちもあって秘密主義とまではいかなくても、家のことを人に話さないというのは義務付けられていたし口が堅い自信はあるよ。

「はい、着いたよ」

 宮の最奥。転移した場所がキッチンで比較的奥の方にあったから入り口からに比べたらそんなに歩いてない。まあ宮の隅から隅まで歩けば二日はかかるってだけで、真っ直ぐ俺の部屋に行くなら入り口から最奥の俺の部屋でもそこまで遠くはないけどね。

「えぇー………」
「……ひっろ…………」

 俺の私室。他の部屋と同じように和風の造りで広さは約百畳。畳だから数えることもできるけど面倒なので大体の数字。広すぎて部屋がスカスカになりそうって思うかもだけど意外と置く物あるんだよねー。家具ひとつひとつがまず最高級品で大きさもある。これくらいの大きさじゃないと広さゆえに物足りなくなるから。
 それと俺専用の浴室とかもあるね。俺個人の意見としてはこんなに広くなくても良いんだけど、まあ精霊王なら仕方ない。

「じゃあささっと脱いじゃって。その間に魔法を掛けておくよー」
「は、はい」
「ナギサは着替えないのか?」
「俺は服着たまま遊ぶから」

 にしても、この世界は不思議だよねぇ……女性がズボンを履くことは認められていてもまだ少ないのに、それより露出の多い水着は普通に着る。なんか日本と異世界の文化が混ざってるみたい。
 水の宮だって和風な造りだし、ほんとどういう仕組みなんだろうね。日本要素がある異世界って転生者からしたら優しい世界かもしれないけど同時に混乱するよー。
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