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第二章 開戦

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マリナの意識が戻って一週間。たどたどしい上、声が少し枯れているが段々声が出るようになってきた。運動はまだ出来ないが歩くくらいなら出来るくらいまで回復してきている。医者によると、あの瀕死の状態からすれば驚異的な回復力らしい。

ということで、今日はずっとお預けにされていた皇太子殿下とスチュワート嬢がマリナのお見舞いにくる。マリナはとても楽しみにしているようだ。

「マリナ、どうやら到着したようだぞ」
「そのよう、ですね!」

ついでに令嬢にあるまじき行為…ドレス姿で走ってきているような音がする。かと思えば次の瞬間バァーン!とこの部屋のドアが開けられた。驚いたマリナが抱き着いてくる。役得だな。

「マリナっ!」
「お久しぶりです、わね。カレン!」
「マリナ、心配したのよ!マリナが生死を彷徨っていると聞いて一体どれだけ心配したことか!」

マリナが目覚めて何度も見たこのいきなり抱き着くという光景。心配していたのはみんな同じなので、直接何かを言うことはしないがどいつもこいつもマリナに触れすぎだと思う…

「心配かけて、ごめんなさい。あなたも無事で…良かったわカレン」
「私は危険なことなんてなかったもの」
「…マリナ、すまなかった。我がガザード皇家が命じたばかりにこのようなことになってしまって」
「あっ頭をあげてください!私は皇族の、影なのです。命じられたことに、答えるのは当然なのです」

声を出しづらいだろうに必死で当然のことだと伝えるマリナに、怒りがわいた。いや、怒っているのはマリナに対してではなくメルリーエンにだが。
いつか絶対に報復をしてやりたいと考えてしまう。そんなことをすればまた戦争に発展しかねないので我慢するが。

「そうか…皇帝陛下より伝言だ。今後マリナが助けを求める時はガザード帝国皇帝は全力を尽くして動こう、と。マリナ自身のことでなくとも、誰かを助けてほしいとかそういうものでも構わない」
「きっと私が、不要だと伝えても、聞いてくださらない、のでしょう。ありがとうございますと、お伝えいただけますか?」
「承知した」
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