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第2章
五月の恋と君との日々(中編)
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帆文と鈴恵はそれから二人で店番していた。
今日はたまたまお客さんが多い日で、三人、四人と続けて店を覗く人が現れた。
鈴恵はバイトに慣れてきたようで、落ち着いた様子で接客している。一冊、二冊と本を買っていくお客さんに笑顔で対応していた。
しかし、次にカウンターに来たお客さんは今までとは違っていた。
どこかの業者か文学を研究する人かわからないが、ハンチングの帽子をかぶった男は文庫本や大型本を合わせて十数冊をカウンターに置いた。古書店に来る人は本を一気に買う人が多い。安いからという理由と、もしかしたらここを逃せば二度と手に入らないかもしれないと思うからである。そのため、四冊、五冊ならまだしも、多い時には二十冊、三十冊の本を一気に買うこともあった。
帆文自身も経験があったが、これをされるときつかった。一気に大量の本を処理しなくてはならない上、必要以上に待たせてはいけないと思ってしまうことから慌てるのである。しかし、慌ててしまったら、ミスをする確率が上がる。帆文もこれでミスをしたことがあった。売った本はずの本を一冊記録し忘れたのである。その時は店長が助けてくれてなんとかなったが、帆文にとっては苦い経験になった。
帆文は鈴恵をさりげなくフォローするために、そっとカウンターに近寄る。
しかし、鈴恵は落ち着いて対処していた。一冊一冊丁寧に確認しながらノートに記録し、値段をレジスターに打ち込んでいく。バイトを初めてまだ二週間足らずだが、鈴恵はもう十分仕事ができるようになっていた。おそらく彼女は元々そういう人間なのだろう。常に考えて動くからこそ、飲み込みや理解が早いタイプ。
それなのに彼女は初めてここに来た時、ひどく自信がなかった。おどおどビクビクして、まるで消えてしまいそうな儚い様子だった。彼女に何があったのかわからない。ただ、帆文はどうして中学生である彼女が働いているのか、どうしてあんなに儚げな様子だったのか気になった。
お客さんがいなくなると、帆文は鈴恵に声を掛ける。
「お疲れさん」
「あっ、はい。お疲れ様です」
ほっと一息ついていた鈴恵は、はっと顔を上げて帆文を見た。
「あれだけたくさんの本をさばけるなんてすごいよ」
「そんなことないですよ。店長さんはもっと早く対応してましたから」
鈴恵はそういうと、少し寂しそうに笑った。
帆文はその顔を見て、おそらく自分がまだちゃんと動けていないと思っている事を察する。同時に、鈴恵の印象を、飲み込みが早く常に考えて動くタイプから、飲み込みが早く常に考えて動くが自分を追い詰めるタイプへと訂正する。
「でも、二週間であれだけできるようになるのはすごいって」
帆文が笑顔で賞賛すると、鈴恵は小さく笑った。
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」
そして、ぽつりと呟く。
「いら・・・・・・子は・・・・・・られるだけですから」
「え?」
よく聞き取れなくて帆文は聞き返す。しかし、鈴恵はにこっと笑うだけだった。
「どうかしました?」
「いや、今何か言わなかった?」
「?」
鈴恵は首をかしげる。
それでこの話題は終わった。僅かに帆文の心にしこりを残すが、気のせいだと割り切った。
それからはいつもどおりののんびりとした時間が店内に流れる。
鈴恵はカウンターで文庫本を一冊手に取ると読み始める。
帆文も書架整理が終わると、カウンターにあるイスに座って本を一冊手にとって読み始めた。
二人で並んで本を読む。
帆文が手に取ったのは、恋愛小説だった。高校生の恋の物語である。男の子が好きになった女の子は不治の病に冒されていたというベタな展開の恋物語だった。
ケイのことがあったので気になって初めて読むが、共感も何もできないのでいまいち頭の中に入ってこない。
帆文は気分を変えるために時計を見る。時計の針は午後六時前を刺していた。そして、ちらりと鈴恵を見る。
鈴恵は本の世界に入り込んでいるようだった。
その瞳は一心不乱に活字を追っている。
肩まで伸びたさらさらの黒髪。
黒色のフレームの眼鏡の奥の伏し目がちで、やや垂れた瞳。
そして、白いエプロンをつけた小柄な体型。
帆文は鈴恵の姿を見てふと思った。
初めて会った時と今の姿はどこか違う。小綺麗になったというか、生き生きしているというか。はっきりとはわからないが、どこか違って見えた。
「時岸さん?」
鈴恵は声で帆文ははっと気づいた。
「どうかしました?」
鈴恵は不思議そうに帆文を見ている。
「あっ、いや」
帆文は慌てて首を振った。つい見とれてしまったなんて言えるはずもなかった。
「何を読んでるのかなと思って?」
とっさの言い訳にしては上手く言えたなと帆文は自画自賛する。
「これですか?」
鈴恵は文庫本を軽く持ち上げると、タイトルを帆文に見せた。
「『独りぼっちの宇宙人』?」
帆文はタイトルを読み上げる。初めて聞くタイトルだった。
「どういう本なの?」
「まださわりしか読んでないんですけど、地球にやってきた宇宙人が、自分の居場所を見つけていくお話みたいです。最初、宇宙人は独りぼっちなんですけど、宇宙人には特別な力があって、それを使って仲間を増やしていくんです」
「特別な力?」
「生物を作れる力です。だから、宇宙人は人間のようなものを作っていました」
「人間のようなもの? なんか怖いな」
「そうですか? でも、そうやって仲間を増やして自分の居場所を作っていくんです」
「不思議な話だな。もしかしてSF?」
「うーん、どうでしょう。どちらかというとファンタジーみたいですけど」
「そっか。ファンタジーが好きっていってたもんね」
「はい。時岸さんは何を読んでたんですか?」
帆文はそう言われてなんとはなしに本を軽く持ち上げた。しかし、はっと気づく。
「えっと、『君に恋してる』」
鈴恵はタイトルを読み上げると、頬を赤らめた。帆文はしまったと思い後悔すると、慌てて口を開く。
「いや、違うから。こういうのいつも読んでるんじゃなくて。今回たまたまなだけだから」
「いえ、そのっ、いいと思います。男の人でもそういうの好きな人っていますし」
鈴恵は赤い顔で俯く。大きく誤解されていた。帆文は必死に弁解する。
「違うから。こういうの好きじゃないから」
「私は別に気になりません。むしろ、ありです。ありだと思います」
鈴恵は拳に力をこめ、両手を胸の前でぶんぶん振って力説する。何がありなのか帆文にはわからなかった。
「何言ってるの? 違うから」
「そんな必死にならなくても大丈夫です。わかってますから」
鈴恵はにこっと帆文に微笑みかけた。絶対にわかっていなかった。
「だから、違うって」
帆文は必死に首を振る。
「今日友だちが後輩に告られたことを知って、付き合うってどういうことかわからないっていっていたから、なんとなくこういうのを読んだの」
そう言うと、鈴恵ははっとして帆文の方を見た。
「そうなんですか」
「うん。やっとわかってくれた?」
鈴恵はこくりと頷く。その姿はどこかしょんぼりして見えた。
「よかった」
帆文はほっと頷くと、立ち上がって手に持った本を本棚にしまう。同時に、この本は二度と手に取らないようにしようと帆文は誓った。
「時岸さんの友だちってどんな方なんですか?」
「え? どうして?」
「あっ、いえ。なんとなくです」
鈴恵はそう言うと、はにかみながら俯く。
「まあ、いいけど。えっと、ケイっていうお調子者でいつもへらへらしてるんだけど、サッカーやっているときはかっこいいやつと、ニシアキっていうマイペースだけど友達思いでドラムがうまいやつかな。一番仲がいいのはこの二人」
一番と言いながら二人上げていることに帆文は気づいたが、まあいいやと納得する。別に間違ったことは言っていない。帆文にとっては二人とも一番仲のよい友だちだった。
「なんだかいいですね」
鈴恵ははにかむような笑顔を浮かべた。
「そうかな」
帆文は少し照れくさい気持ちになり、そっけなく答えた。
「ええ」
鈴恵は小さく頷いた。帆文は恥ずかしくなって頬をかく。そして、ふと思いついたように声を上げた。
「そうだ。草川さんって誰かと付き合ったことある?」
「え?」
鈴恵は驚いたように声をあげると、真顔で帆文を見た。そして、ふるふると首をふる。
「ないですけど」
「そっか」
「どうしてです?」
「さっき言ったように、俺の友達が付き合うってどういうことかわからないって言っていたから。少し気になって」
「時岸さんは誰かと付き合ったことはあるんですか?」
「あったら、こんな質問していないよ」
「ああ。それもそうですね」
「まあ、気にしないで。なんとなく聞いただけだから」
「はい。でも、多分ですけど」
そこで鈴恵は一瞬考えるように、視線を宙にさ迷わせた。そして、うんと頷くと、口を開く。
「付き合うってお互いのことを知ることなのかなって思います」
「え?」
「なんとなくですけど」
「ああ。でも、確かに」
帆文は納得したように頷く。
「ありがとう。草川さん」
帆文がお礼を言うと、鈴恵ははにかんだ。
「どういたしまして」
そして、帆文はふと時計を見た。
「そういえば、店長遅いな」
「ああ、戻るのは七時くらいになるっておっしゃってました」
「そっか」
二人の間に沈黙が流れる。帆文はなんだか沈黙が気まずかった。鈴恵は特になにも気にしてない様子で、帆文を眺めている。
「本の続きでも読みますか?」
「はい」
鈴恵は頷くと持っていた『独りぼっちの宇宙人』を読み始める。そして、ふと顔をあげた。
「時岸さんは読まないんですか? 『君に恋してる』」
「絶対に読まない」
帆文はきっぱりと言い放った。
七時前に店長は帰ってきた。
「ふー、疲れた」
そう言うと店長は居間にばたりと倒れ込む。店長に続いて、鈴恵と帆文も居間にあがった。もし、店に誰か来たらわかるように居間への扉だけは開けておく。
「お疲れ様です」
鈴恵が声をかけると店長は倒れこんだまま顔をあげた。
「鈴ちゃんは優しいわね」
「そんなことないです」
鈴恵は照れたようにはにかんだ。
「そんなに疲れてるってことは、来週のイベント大変なんですか?」
「そうね。それなりの規模だから本も二百冊くらい持っていきたいの。だから、選書やら設営の準備やらで結構大変そうよ」
「来週は、三人でやるんですか?」
「ええ。鈴ちゃんもお願いね」
「はい」
「さて、それじゃあ、二人はもうあがりね」
店長はそう言うと、のそのそと立ちあがり、奥部屋に行くと白い封筒を二つ持って戻ってきた。
「はい。お疲れ様」
店長はまず帆文に封筒を渡す。個人口座のない中学生にとって、給料は手渡しだった。
「ありがとうございます」
帆文は嬉しそうに給料袋を両手で受けとった。
「それから、鈴ちゃんもお疲れ様。初給料ね」
「はい。ありがとうございます」
鈴恵は緊張した表情で、両手を差し出すとそのまま給料袋を受けとった。
「ちゃんと中身を確認してね」
店長の言葉で帆文は後ろを向くと、明細と金額を確認する。一方、鈴恵はとまどっていた。そんな鈴恵に帆文はそっと声をかける。
「目の前で確認するのはなんだか嫌らしいと思うから、俺は後ろを向いて確認しているんだ。明細にはちゃんと働いた時間分が書かれているか、お金はちゃんと入っているかって。こういう確認は必ず自分でするものだって店長が前に言ってたんだ」
「そうなんですか」
鈴恵は驚いたように言うと、帆文にならって後ろを向いた。そして、中身を確認する。
「はい。合ってました」
確認を終えると鈴恵は笑顔を浮かべた。
「まあ、それは言わなくてもいいよ」
帆文は困ったような笑みを浮かべる。
「う。すいません」
鈴恵はぺこりと頭を下げた。
「いや、いいから」
帆文は手をひらひら振る。鈴恵はこくりと頷いた。
「それじゃあ、遅くなる前に気をつけて帰りなさい。せっかく頑張って稼いだ給料なんだから落としたら駄目よ」
「はい」
帆文と鈴恵は二人とも頷くと、二人で並んで店を出た。そして、帆文と鈴恵は自転車に乗って帰路についた。
二回目の二人乗りは、前よりは緊張しなかった。
自転車をこぎだしてからしばらくすると、帆文のはふと前回一緒に帰った時に言っていた「お金がほしいからバイトを始めた」という鈴恵の言葉を思いだした。その理由として、何のためにお金がほしいのか気になった帆文は鈴恵に尋ねる。
「そういえば、前にお金が必要だと言っていたけど、草川さんは給料を何に使うの?」
帆文の背後にいる鈴恵は一瞬はっと息を飲んだ。そして、沈黙が流れる。帆文の肩をつかむ鈴恵の手に力がこめられる。帆文は何か言おうとしたが、聞いた手前どう言うべきかわからない。だから、結局、待つことしかできなかった。
しばらくの間、帆文が自転車をこぐ音だけが響いた。しかし、ついに沈黙に耐え切れなくなって帆文が口を開く。
「言いにくかったら言わなくていいよ」
「すみません」
帆文は背後で鈴恵が頭を下げるのがわかった。
「いいって。気にしないで。俺も給料の使い道なんてあまり人に言えないからさ」
「・・・・・・それって聞いてもいいんですか?」
「今、あまり人に言えないって言ったよね」
「すっ、すみません」
「いいよ。まあ、でも、別に隠すほどのことじゃないからいいか」
「え?」
「俺は生活のためにバイトしてる」
「え? ・・・・・・生活?」
鈴恵は驚いたように声を上げる。
「ああ。でも、別に貧しいわけじゃない」
「じゃあ、どうして生活のためにバイトなんかしてるんです?」
「・・・・・・早く大人になるため」
帆文はぽつりとつぶやく。しかし、言ってから帆文はしまったといわんばかりに、苦虫をつぶしたような表情を浮かべた。
「え?」
鈴恵は疑問の声を上げる。しかし、そこで小さな橋が架かっている十字路に着いた。この前、鈴恵を下ろした場所だった。
「着いたね」
帆文の言葉を聞いて、鈴恵は自転車から降りた。そして、帆文の前に移動する。
「どうして、時岸さんは早く大人になりたいんですか?」
まっすぐに鈴恵は帆文を見つめた。帆文はそんな鈴恵の視線からすっと目をそらすと、ぶっきらぼうに言う。
「別にいいだろ。草川さんには関係ないことだ」
鈴恵ははっと驚いたように表情を歪めると目を細めた。その目尻には微かに涙が浮かぶ。今にも泣き出しそうになりながら、それでも彼女はぐっとこらえていた。そして、無理矢理笑顔を作った。
「そうですね」
震える声で言うと鈴恵はぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございました。お疲れ様です」
「ああ。お疲れ様」
帆文はそんな鈴恵から目をそらしながら、そっけなく言うと自転車をこぎ始める。そして、しばらくこぐとちらりと背後を見た。鈴恵は相変わらず、見送るように帆文のほうを見ていた。その姿を振り切るように帆文は自転車をこぐ速度を上げる。
帆文はいらだっていた。
なんであんなことを言ったのか自分でもわからなかった。
『別にいいだろ。草川さんには関係ないことだ』
子どもじみた八つ当たりでしかない言葉は、帆文の心にしこりを残していた。しかし、もっと根本的な問題あった。
『・・・・・・早く大人になるため』
なんであんなことを言ったのか自分でもわからなかった。
それは帆文にとって誰にも言ったことのない願いだった。
心の奥底にしまってある大切な、大切な願いだった。
それをどうして鈴恵に言ったのか。自分でもわからなかった。
「くそっ」
帆文はいら立ちをぶつけるように悪態をつく。しかし、心が晴れることはなかった。
帆文は苛立ったまま自宅に戻る。玄関に入ると、寛人が迎えてくれた。
「おかえり」
「ああ」
帆文はぶっきらぼうにいうと、寛人に向けて給料袋を差し出した。
「これ今月の分だから」
寛人は目を細めた。
「何度も言うけど、受け取れない」
「なんで?」
「文が精いっぱい働いて稼いだお金だからだ」
「じゃあ、今まであんたが稼いだお金はどうした? 全部自分のために使ってきたのかよ。違うだろ。俺のために使ってただろ。迷惑なんだよ。そういうの」
寛人は何も言わなかった。ただ、悲しそうに表情を歪めながら帆文をじっと見つめていた。
「とにかく、金は受け取ってくれ」
帆文はそういうとダイニングへ向かう。ダイニングには夕食が用意されていた。その机の上に、給料袋を置くと、ダイニングを出ようとする。しかし、そこで寛人と鉢合わせた。当然のことだった。
「ご飯は?」
寛人は穏やかな口調で言った。
「いらない」
対照的に帆文はぶっきらぼうに言った。そして、自室へ向かう。そんな帆文の背後に声がかけられる。
「冷蔵庫に入れておくから、食べたくなったらいつでも食べて」
帆文は何も答えなかった。
自室に戻ると、そのままベッドに倒れこんだ。
帆文はいらだっていた。
寛人に給料袋を渡したことも。
早く大人になりたいという願いも。
中学生なのにバイトをしていることも。
それら全てがガキ臭くて、幼い、子どものわがままでしかないことを理解しているからこそ、帆文は苛立っていた。
今日はたまたまお客さんが多い日で、三人、四人と続けて店を覗く人が現れた。
鈴恵はバイトに慣れてきたようで、落ち着いた様子で接客している。一冊、二冊と本を買っていくお客さんに笑顔で対応していた。
しかし、次にカウンターに来たお客さんは今までとは違っていた。
どこかの業者か文学を研究する人かわからないが、ハンチングの帽子をかぶった男は文庫本や大型本を合わせて十数冊をカウンターに置いた。古書店に来る人は本を一気に買う人が多い。安いからという理由と、もしかしたらここを逃せば二度と手に入らないかもしれないと思うからである。そのため、四冊、五冊ならまだしも、多い時には二十冊、三十冊の本を一気に買うこともあった。
帆文自身も経験があったが、これをされるときつかった。一気に大量の本を処理しなくてはならない上、必要以上に待たせてはいけないと思ってしまうことから慌てるのである。しかし、慌ててしまったら、ミスをする確率が上がる。帆文もこれでミスをしたことがあった。売った本はずの本を一冊記録し忘れたのである。その時は店長が助けてくれてなんとかなったが、帆文にとっては苦い経験になった。
帆文は鈴恵をさりげなくフォローするために、そっとカウンターに近寄る。
しかし、鈴恵は落ち着いて対処していた。一冊一冊丁寧に確認しながらノートに記録し、値段をレジスターに打ち込んでいく。バイトを初めてまだ二週間足らずだが、鈴恵はもう十分仕事ができるようになっていた。おそらく彼女は元々そういう人間なのだろう。常に考えて動くからこそ、飲み込みや理解が早いタイプ。
それなのに彼女は初めてここに来た時、ひどく自信がなかった。おどおどビクビクして、まるで消えてしまいそうな儚い様子だった。彼女に何があったのかわからない。ただ、帆文はどうして中学生である彼女が働いているのか、どうしてあんなに儚げな様子だったのか気になった。
お客さんがいなくなると、帆文は鈴恵に声を掛ける。
「お疲れさん」
「あっ、はい。お疲れ様です」
ほっと一息ついていた鈴恵は、はっと顔を上げて帆文を見た。
「あれだけたくさんの本をさばけるなんてすごいよ」
「そんなことないですよ。店長さんはもっと早く対応してましたから」
鈴恵はそういうと、少し寂しそうに笑った。
帆文はその顔を見て、おそらく自分がまだちゃんと動けていないと思っている事を察する。同時に、鈴恵の印象を、飲み込みが早く常に考えて動くタイプから、飲み込みが早く常に考えて動くが自分を追い詰めるタイプへと訂正する。
「でも、二週間であれだけできるようになるのはすごいって」
帆文が笑顔で賞賛すると、鈴恵は小さく笑った。
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」
そして、ぽつりと呟く。
「いら・・・・・・子は・・・・・・られるだけですから」
「え?」
よく聞き取れなくて帆文は聞き返す。しかし、鈴恵はにこっと笑うだけだった。
「どうかしました?」
「いや、今何か言わなかった?」
「?」
鈴恵は首をかしげる。
それでこの話題は終わった。僅かに帆文の心にしこりを残すが、気のせいだと割り切った。
それからはいつもどおりののんびりとした時間が店内に流れる。
鈴恵はカウンターで文庫本を一冊手に取ると読み始める。
帆文も書架整理が終わると、カウンターにあるイスに座って本を一冊手にとって読み始めた。
二人で並んで本を読む。
帆文が手に取ったのは、恋愛小説だった。高校生の恋の物語である。男の子が好きになった女の子は不治の病に冒されていたというベタな展開の恋物語だった。
ケイのことがあったので気になって初めて読むが、共感も何もできないのでいまいち頭の中に入ってこない。
帆文は気分を変えるために時計を見る。時計の針は午後六時前を刺していた。そして、ちらりと鈴恵を見る。
鈴恵は本の世界に入り込んでいるようだった。
その瞳は一心不乱に活字を追っている。
肩まで伸びたさらさらの黒髪。
黒色のフレームの眼鏡の奥の伏し目がちで、やや垂れた瞳。
そして、白いエプロンをつけた小柄な体型。
帆文は鈴恵の姿を見てふと思った。
初めて会った時と今の姿はどこか違う。小綺麗になったというか、生き生きしているというか。はっきりとはわからないが、どこか違って見えた。
「時岸さん?」
鈴恵は声で帆文ははっと気づいた。
「どうかしました?」
鈴恵は不思議そうに帆文を見ている。
「あっ、いや」
帆文は慌てて首を振った。つい見とれてしまったなんて言えるはずもなかった。
「何を読んでるのかなと思って?」
とっさの言い訳にしては上手く言えたなと帆文は自画自賛する。
「これですか?」
鈴恵は文庫本を軽く持ち上げると、タイトルを帆文に見せた。
「『独りぼっちの宇宙人』?」
帆文はタイトルを読み上げる。初めて聞くタイトルだった。
「どういう本なの?」
「まださわりしか読んでないんですけど、地球にやってきた宇宙人が、自分の居場所を見つけていくお話みたいです。最初、宇宙人は独りぼっちなんですけど、宇宙人には特別な力があって、それを使って仲間を増やしていくんです」
「特別な力?」
「生物を作れる力です。だから、宇宙人は人間のようなものを作っていました」
「人間のようなもの? なんか怖いな」
「そうですか? でも、そうやって仲間を増やして自分の居場所を作っていくんです」
「不思議な話だな。もしかしてSF?」
「うーん、どうでしょう。どちらかというとファンタジーみたいですけど」
「そっか。ファンタジーが好きっていってたもんね」
「はい。時岸さんは何を読んでたんですか?」
帆文はそう言われてなんとはなしに本を軽く持ち上げた。しかし、はっと気づく。
「えっと、『君に恋してる』」
鈴恵はタイトルを読み上げると、頬を赤らめた。帆文はしまったと思い後悔すると、慌てて口を開く。
「いや、違うから。こういうのいつも読んでるんじゃなくて。今回たまたまなだけだから」
「いえ、そのっ、いいと思います。男の人でもそういうの好きな人っていますし」
鈴恵は赤い顔で俯く。大きく誤解されていた。帆文は必死に弁解する。
「違うから。こういうの好きじゃないから」
「私は別に気になりません。むしろ、ありです。ありだと思います」
鈴恵は拳に力をこめ、両手を胸の前でぶんぶん振って力説する。何がありなのか帆文にはわからなかった。
「何言ってるの? 違うから」
「そんな必死にならなくても大丈夫です。わかってますから」
鈴恵はにこっと帆文に微笑みかけた。絶対にわかっていなかった。
「だから、違うって」
帆文は必死に首を振る。
「今日友だちが後輩に告られたことを知って、付き合うってどういうことかわからないっていっていたから、なんとなくこういうのを読んだの」
そう言うと、鈴恵ははっとして帆文の方を見た。
「そうなんですか」
「うん。やっとわかってくれた?」
鈴恵はこくりと頷く。その姿はどこかしょんぼりして見えた。
「よかった」
帆文はほっと頷くと、立ち上がって手に持った本を本棚にしまう。同時に、この本は二度と手に取らないようにしようと帆文は誓った。
「時岸さんの友だちってどんな方なんですか?」
「え? どうして?」
「あっ、いえ。なんとなくです」
鈴恵はそう言うと、はにかみながら俯く。
「まあ、いいけど。えっと、ケイっていうお調子者でいつもへらへらしてるんだけど、サッカーやっているときはかっこいいやつと、ニシアキっていうマイペースだけど友達思いでドラムがうまいやつかな。一番仲がいいのはこの二人」
一番と言いながら二人上げていることに帆文は気づいたが、まあいいやと納得する。別に間違ったことは言っていない。帆文にとっては二人とも一番仲のよい友だちだった。
「なんだかいいですね」
鈴恵ははにかむような笑顔を浮かべた。
「そうかな」
帆文は少し照れくさい気持ちになり、そっけなく答えた。
「ええ」
鈴恵は小さく頷いた。帆文は恥ずかしくなって頬をかく。そして、ふと思いついたように声を上げた。
「そうだ。草川さんって誰かと付き合ったことある?」
「え?」
鈴恵は驚いたように声をあげると、真顔で帆文を見た。そして、ふるふると首をふる。
「ないですけど」
「そっか」
「どうしてです?」
「さっき言ったように、俺の友達が付き合うってどういうことかわからないって言っていたから。少し気になって」
「時岸さんは誰かと付き合ったことはあるんですか?」
「あったら、こんな質問していないよ」
「ああ。それもそうですね」
「まあ、気にしないで。なんとなく聞いただけだから」
「はい。でも、多分ですけど」
そこで鈴恵は一瞬考えるように、視線を宙にさ迷わせた。そして、うんと頷くと、口を開く。
「付き合うってお互いのことを知ることなのかなって思います」
「え?」
「なんとなくですけど」
「ああ。でも、確かに」
帆文は納得したように頷く。
「ありがとう。草川さん」
帆文がお礼を言うと、鈴恵ははにかんだ。
「どういたしまして」
そして、帆文はふと時計を見た。
「そういえば、店長遅いな」
「ああ、戻るのは七時くらいになるっておっしゃってました」
「そっか」
二人の間に沈黙が流れる。帆文はなんだか沈黙が気まずかった。鈴恵は特になにも気にしてない様子で、帆文を眺めている。
「本の続きでも読みますか?」
「はい」
鈴恵は頷くと持っていた『独りぼっちの宇宙人』を読み始める。そして、ふと顔をあげた。
「時岸さんは読まないんですか? 『君に恋してる』」
「絶対に読まない」
帆文はきっぱりと言い放った。
七時前に店長は帰ってきた。
「ふー、疲れた」
そう言うと店長は居間にばたりと倒れ込む。店長に続いて、鈴恵と帆文も居間にあがった。もし、店に誰か来たらわかるように居間への扉だけは開けておく。
「お疲れ様です」
鈴恵が声をかけると店長は倒れこんだまま顔をあげた。
「鈴ちゃんは優しいわね」
「そんなことないです」
鈴恵は照れたようにはにかんだ。
「そんなに疲れてるってことは、来週のイベント大変なんですか?」
「そうね。それなりの規模だから本も二百冊くらい持っていきたいの。だから、選書やら設営の準備やらで結構大変そうよ」
「来週は、三人でやるんですか?」
「ええ。鈴ちゃんもお願いね」
「はい」
「さて、それじゃあ、二人はもうあがりね」
店長はそう言うと、のそのそと立ちあがり、奥部屋に行くと白い封筒を二つ持って戻ってきた。
「はい。お疲れ様」
店長はまず帆文に封筒を渡す。個人口座のない中学生にとって、給料は手渡しだった。
「ありがとうございます」
帆文は嬉しそうに給料袋を両手で受けとった。
「それから、鈴ちゃんもお疲れ様。初給料ね」
「はい。ありがとうございます」
鈴恵は緊張した表情で、両手を差し出すとそのまま給料袋を受けとった。
「ちゃんと中身を確認してね」
店長の言葉で帆文は後ろを向くと、明細と金額を確認する。一方、鈴恵はとまどっていた。そんな鈴恵に帆文はそっと声をかける。
「目の前で確認するのはなんだか嫌らしいと思うから、俺は後ろを向いて確認しているんだ。明細にはちゃんと働いた時間分が書かれているか、お金はちゃんと入っているかって。こういう確認は必ず自分でするものだって店長が前に言ってたんだ」
「そうなんですか」
鈴恵は驚いたように言うと、帆文にならって後ろを向いた。そして、中身を確認する。
「はい。合ってました」
確認を終えると鈴恵は笑顔を浮かべた。
「まあ、それは言わなくてもいいよ」
帆文は困ったような笑みを浮かべる。
「う。すいません」
鈴恵はぺこりと頭を下げた。
「いや、いいから」
帆文は手をひらひら振る。鈴恵はこくりと頷いた。
「それじゃあ、遅くなる前に気をつけて帰りなさい。せっかく頑張って稼いだ給料なんだから落としたら駄目よ」
「はい」
帆文と鈴恵は二人とも頷くと、二人で並んで店を出た。そして、帆文と鈴恵は自転車に乗って帰路についた。
二回目の二人乗りは、前よりは緊張しなかった。
自転車をこぎだしてからしばらくすると、帆文のはふと前回一緒に帰った時に言っていた「お金がほしいからバイトを始めた」という鈴恵の言葉を思いだした。その理由として、何のためにお金がほしいのか気になった帆文は鈴恵に尋ねる。
「そういえば、前にお金が必要だと言っていたけど、草川さんは給料を何に使うの?」
帆文の背後にいる鈴恵は一瞬はっと息を飲んだ。そして、沈黙が流れる。帆文の肩をつかむ鈴恵の手に力がこめられる。帆文は何か言おうとしたが、聞いた手前どう言うべきかわからない。だから、結局、待つことしかできなかった。
しばらくの間、帆文が自転車をこぐ音だけが響いた。しかし、ついに沈黙に耐え切れなくなって帆文が口を開く。
「言いにくかったら言わなくていいよ」
「すみません」
帆文は背後で鈴恵が頭を下げるのがわかった。
「いいって。気にしないで。俺も給料の使い道なんてあまり人に言えないからさ」
「・・・・・・それって聞いてもいいんですか?」
「今、あまり人に言えないって言ったよね」
「すっ、すみません」
「いいよ。まあ、でも、別に隠すほどのことじゃないからいいか」
「え?」
「俺は生活のためにバイトしてる」
「え? ・・・・・・生活?」
鈴恵は驚いたように声を上げる。
「ああ。でも、別に貧しいわけじゃない」
「じゃあ、どうして生活のためにバイトなんかしてるんです?」
「・・・・・・早く大人になるため」
帆文はぽつりとつぶやく。しかし、言ってから帆文はしまったといわんばかりに、苦虫をつぶしたような表情を浮かべた。
「え?」
鈴恵は疑問の声を上げる。しかし、そこで小さな橋が架かっている十字路に着いた。この前、鈴恵を下ろした場所だった。
「着いたね」
帆文の言葉を聞いて、鈴恵は自転車から降りた。そして、帆文の前に移動する。
「どうして、時岸さんは早く大人になりたいんですか?」
まっすぐに鈴恵は帆文を見つめた。帆文はそんな鈴恵の視線からすっと目をそらすと、ぶっきらぼうに言う。
「別にいいだろ。草川さんには関係ないことだ」
鈴恵ははっと驚いたように表情を歪めると目を細めた。その目尻には微かに涙が浮かぶ。今にも泣き出しそうになりながら、それでも彼女はぐっとこらえていた。そして、無理矢理笑顔を作った。
「そうですね」
震える声で言うと鈴恵はぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございました。お疲れ様です」
「ああ。お疲れ様」
帆文はそんな鈴恵から目をそらしながら、そっけなく言うと自転車をこぎ始める。そして、しばらくこぐとちらりと背後を見た。鈴恵は相変わらず、見送るように帆文のほうを見ていた。その姿を振り切るように帆文は自転車をこぐ速度を上げる。
帆文はいらだっていた。
なんであんなことを言ったのか自分でもわからなかった。
『別にいいだろ。草川さんには関係ないことだ』
子どもじみた八つ当たりでしかない言葉は、帆文の心にしこりを残していた。しかし、もっと根本的な問題あった。
『・・・・・・早く大人になるため』
なんであんなことを言ったのか自分でもわからなかった。
それは帆文にとって誰にも言ったことのない願いだった。
心の奥底にしまってある大切な、大切な願いだった。
それをどうして鈴恵に言ったのか。自分でもわからなかった。
「くそっ」
帆文はいら立ちをぶつけるように悪態をつく。しかし、心が晴れることはなかった。
帆文は苛立ったまま自宅に戻る。玄関に入ると、寛人が迎えてくれた。
「おかえり」
「ああ」
帆文はぶっきらぼうにいうと、寛人に向けて給料袋を差し出した。
「これ今月の分だから」
寛人は目を細めた。
「何度も言うけど、受け取れない」
「なんで?」
「文が精いっぱい働いて稼いだお金だからだ」
「じゃあ、今まであんたが稼いだお金はどうした? 全部自分のために使ってきたのかよ。違うだろ。俺のために使ってただろ。迷惑なんだよ。そういうの」
寛人は何も言わなかった。ただ、悲しそうに表情を歪めながら帆文をじっと見つめていた。
「とにかく、金は受け取ってくれ」
帆文はそういうとダイニングへ向かう。ダイニングには夕食が用意されていた。その机の上に、給料袋を置くと、ダイニングを出ようとする。しかし、そこで寛人と鉢合わせた。当然のことだった。
「ご飯は?」
寛人は穏やかな口調で言った。
「いらない」
対照的に帆文はぶっきらぼうに言った。そして、自室へ向かう。そんな帆文の背後に声がかけられる。
「冷蔵庫に入れておくから、食べたくなったらいつでも食べて」
帆文は何も答えなかった。
自室に戻ると、そのままベッドに倒れこんだ。
帆文はいらだっていた。
寛人に給料袋を渡したことも。
早く大人になりたいという願いも。
中学生なのにバイトをしていることも。
それら全てがガキ臭くて、幼い、子どものわがままでしかないことを理解しているからこそ、帆文は苛立っていた。
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