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私の毎日
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ーーーやはり3つ持っていって正確だったな、と自室で湯浴み(といってもお湯につけたタオルで身体を拭くだけなのだが)をしながら思った。
案の定アナお姉様は、プディングを2つも平らげてしまったーーーもちろん、私の分だ。
ちなみにこの屋敷は屋根裏部屋付きの2階建てで、継母が一部屋、姉2人が一部屋で2階の広い部屋2つを使っている。もう1つ部屋はあるのだが、本当の両親を悼むため、思い出の品を置く部屋にしている。私は1階の1番奥、北側の寒い部屋だ。
冬の夜は本当に寒い。庭のガチョウさんをお招きして、身を寄せ合って寝たこともある。ふと窓の外を見ると、はらはらと雪が降り始めていた。
「お母様がいた頃は、もっと暖かかった気がするんだけどな……」
レラは、今は遠き幼い頃に思いを馳せた。
ーーーーーーーーーーーー
レラが10歳の頃。
「ーーーーーーそうして人魚姫は、人間の体を手に入れ、人間の王子様といつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
決まり文句と共にパタン、と絵本を閉じたお母様の腰に抱きついた。
「ねえお母様、人魚って本当にいるのかなぁ」
「さぁ……どうでしょうね。私は会ったことがないから解らないけれど、見た事がないからいない、とは言い切れないのよ?」
「ふーん。私も人魚だったらなー。ヒレがあったら、どこまでも泳いでいけるでしょう?そうしたら、海の向こうにいるお父様に会いにいくの!」
母は、きゅっと顔を顰めた。まるで、泣くのを我慢しているかのように。
「……そうね、会いに行けるわね」
お母様は優しく、強く、ぎゅっと私を抱き締めた。
「今日も寒いから、一緒に寝ましょうか」
「やったあ!お母様と一緒だと暖かいわ!」
母の優しい香りに包まれて、私はゆっくりと夢の中へ旅立った。
その日から1ヶ月後、母は冬によくみられる流行り病にかかり、父も急いで仕事から帰ってきた。
「リラ!ーーーあぁ、なんて痩せこけて……もう少し早くに私が帰ってきていたら」
「ゲホッゲホッ……おかえりなさい、貴方。いいえ、私はこうなる運命だったのよ……貴方のせいじゃないわ」
ベッドで苦しそうに横たわる母の傍で椅子に座るレラ。ベッドの縁に腰掛けて母の手を握る父。いまいち状況を受け入れていなさそうなレラに、母は手招きをした。
「いい、レラ?これだけは覚えておいて。ーーーいつも、笑顔を忘れない」
「……笑顔を忘れない?」
「そう。どんなに辛いことがあっても、笑顔でいればきっと、良い方向へ変わっていくわ。だからーーーいつもーーーーー笑顔で、ね」
涙を流しながら、母の声はどんどん小さくなっていく。
「貴方、レラーーーー愛しているわ」
「ええ、私もよ」「ああ、私もだ」
運命とは残酷なもので、3人で抱き合ったその日の出来事が、家族の最後の思い出となった。
母のお墓で手を組み、祈りを捧げた。
あれからもう3年が経ったのだが、自分だけがずっと10歳のままで、周りがどんどん未来へ進んでいくという感覚に襲われる。
立ち上がって母の墓標をじっと眺めていると、父が後ろからやって来た。
「なあ、レラ……相談があるんだ。リラにも報告したいから、出来ればここで話をしたい」
「ええ、いいわよ」
「ありがとう。ーーーーー実は、再婚を考えているんだ」
その言葉を聞いた途端、父の話がそれ以上頭に入って来なかった。
(ああ、お父様も未来へ進んでいるのね……)
笑顔を貼り付け、了承した。
その2ヶ月後、荷台に大量の荷物を載せた馬車で、継母と2人の姉がやって来た。
ーーーーあの光景はきっと一生忘れないだろう。都会から離れたカントリー調の屋敷に、ギラギラと宝石やらレースやらがふんだんにあしらわれた3つの発光体ーーーもとい、3人新しい家族が現れたからだ。
3人とも豊かな金髪で、翠色の綺麗な目をした美人だった。父は私に3人を紹介し、しばらく5人でお茶を楽しんだ。
ーーーーーーーーーーーー
過去編もう少し続きます!
(作者より)
案の定アナお姉様は、プディングを2つも平らげてしまったーーーもちろん、私の分だ。
ちなみにこの屋敷は屋根裏部屋付きの2階建てで、継母が一部屋、姉2人が一部屋で2階の広い部屋2つを使っている。もう1つ部屋はあるのだが、本当の両親を悼むため、思い出の品を置く部屋にしている。私は1階の1番奥、北側の寒い部屋だ。
冬の夜は本当に寒い。庭のガチョウさんをお招きして、身を寄せ合って寝たこともある。ふと窓の外を見ると、はらはらと雪が降り始めていた。
「お母様がいた頃は、もっと暖かかった気がするんだけどな……」
レラは、今は遠き幼い頃に思いを馳せた。
ーーーーーーーーーーーー
レラが10歳の頃。
「ーーーーーーそうして人魚姫は、人間の体を手に入れ、人間の王子様といつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
決まり文句と共にパタン、と絵本を閉じたお母様の腰に抱きついた。
「ねえお母様、人魚って本当にいるのかなぁ」
「さぁ……どうでしょうね。私は会ったことがないから解らないけれど、見た事がないからいない、とは言い切れないのよ?」
「ふーん。私も人魚だったらなー。ヒレがあったら、どこまでも泳いでいけるでしょう?そうしたら、海の向こうにいるお父様に会いにいくの!」
母は、きゅっと顔を顰めた。まるで、泣くのを我慢しているかのように。
「……そうね、会いに行けるわね」
お母様は優しく、強く、ぎゅっと私を抱き締めた。
「今日も寒いから、一緒に寝ましょうか」
「やったあ!お母様と一緒だと暖かいわ!」
母の優しい香りに包まれて、私はゆっくりと夢の中へ旅立った。
その日から1ヶ月後、母は冬によくみられる流行り病にかかり、父も急いで仕事から帰ってきた。
「リラ!ーーーあぁ、なんて痩せこけて……もう少し早くに私が帰ってきていたら」
「ゲホッゲホッ……おかえりなさい、貴方。いいえ、私はこうなる運命だったのよ……貴方のせいじゃないわ」
ベッドで苦しそうに横たわる母の傍で椅子に座るレラ。ベッドの縁に腰掛けて母の手を握る父。いまいち状況を受け入れていなさそうなレラに、母は手招きをした。
「いい、レラ?これだけは覚えておいて。ーーーいつも、笑顔を忘れない」
「……笑顔を忘れない?」
「そう。どんなに辛いことがあっても、笑顔でいればきっと、良い方向へ変わっていくわ。だからーーーいつもーーーーー笑顔で、ね」
涙を流しながら、母の声はどんどん小さくなっていく。
「貴方、レラーーーー愛しているわ」
「ええ、私もよ」「ああ、私もだ」
運命とは残酷なもので、3人で抱き合ったその日の出来事が、家族の最後の思い出となった。
母のお墓で手を組み、祈りを捧げた。
あれからもう3年が経ったのだが、自分だけがずっと10歳のままで、周りがどんどん未来へ進んでいくという感覚に襲われる。
立ち上がって母の墓標をじっと眺めていると、父が後ろからやって来た。
「なあ、レラ……相談があるんだ。リラにも報告したいから、出来ればここで話をしたい」
「ええ、いいわよ」
「ありがとう。ーーーーー実は、再婚を考えているんだ」
その言葉を聞いた途端、父の話がそれ以上頭に入って来なかった。
(ああ、お父様も未来へ進んでいるのね……)
笑顔を貼り付け、了承した。
その2ヶ月後、荷台に大量の荷物を載せた馬車で、継母と2人の姉がやって来た。
ーーーーあの光景はきっと一生忘れないだろう。都会から離れたカントリー調の屋敷に、ギラギラと宝石やらレースやらがふんだんにあしらわれた3つの発光体ーーーもとい、3人新しい家族が現れたからだ。
3人とも豊かな金髪で、翠色の綺麗な目をした美人だった。父は私に3人を紹介し、しばらく5人でお茶を楽しんだ。
ーーーーーーーーーーーー
過去編もう少し続きます!
(作者より)
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