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この関係性は如何に?①
しおりを挟む恋愛というものは、一応一通り経験してきた。
BLが好きだからこそ、生身の男を知る事が大切な気がして、年頃の女の子らしく、彼氏なんてものを作った事もある。
だからこそ言える。
現実の男なんかクソ喰らえだって。
上部だけで判断して、自分の理想と違えば、あっさり手のひら返してさようなら。
会えば大抵体を要求。
拒めばノリが悪いとかなんとか言っちゃって。
身勝手も甚だしい。
BLの世界の麗しい男子と現実のギャップが激しく、汚い面ばかり見てきた分、自分の中でハードルが上がってしまったのかもしれない。
王子様のような完璧男じゃなくて良い。
かといって、傲慢で品性の欠片もないような男は嫌。
これじゃ恋愛最前線から遠退いてもおかしくはない気がする。
「ん~……疲れたぁ…」
長時間収録でスタジオに拘束されて凝り固まった体を目一杯伸ばした。
「お疲れ。次の仕事まで大分空くけど、一旦帰る?」
マネージャーの川瀬さんの問いを受け、携帯で時刻を確認する。
次の仕事までは移動時間を見越して三時間程間が空く。
「…………帰って寝るには微妙な時間……どうしよっかな」
「帰るなら送るわ。それともカフェかファミレスで時間潰す?丁度夕飯時だし」
そういえばお腹空いたかな……と、胃の辺りを押さえてみた。
空腹を感じていながらも、申し訳ない事に一緒に食事をしたい相手は川瀬さんじゃない。
「すみません、行きたい所があるんで、そこまで送って貰えませんか?」
「え………あぁ…良いけど」
川瀬さんに車を出して貰い、最寄りの交差点前で降りた。
「次の仕事の現場まではタクシーで向かいます」
「分かったわ。くれぐれも遅刻しないように。この前みたいなのは勘弁して頂戴よ」
川瀬さんの小言に「はぁい」と間延びした返事をして、帽子を目深に被った。
夕暮れ時の雑踏の中を早足で進む。
平日だからか、仕事帰りのサラリーマンばかり。
すれ違う人、追い越す人は大抵スーツ。
そっと「お疲れさん」と呟いた。
途中のコンビニで烏龍茶を二本、食後のデザートを二つ選んだ。
暫く歩いて、通り掛かりの牛丼屋で新作牛丼をテイクアウト。
ビニール袋をカサカサ言わせながら向かった先は、自宅でも相方の家でもない。
駅から遠い古い賃貸マンション。
「おっじゃましま~す」
貰った合鍵を使って部屋に入ると、部屋の主は不在。
とはいえ、何度も訪れているから、勝手は知っている。
冷たい物は冷蔵庫に、温かいものはテーブルの上に置いた。
脱ぎ散らかしたままの部屋着に思わず笑いが込み上げてくる。
「ある意味芸術作品じゃん。どんな脱ぎ方したんだろ」
仕方なく散らかっているものを軽く片付け、自分の寛ぐスペースの確保に励む。
取り敢えず帰ってくるまで……と思い、バッグに忍ばせておいた新作のBLコミックを読む事にした。
『や、やめろよ!!』
『やめろって?体はそう言ってねーけどな。逆に俺に犯されたがってるように見えるけど?』
『だ、誰がお前なんかなにっ、やめろ、やめ………ぐっ…………あぁっ!!』
『可愛いな、ハル………そのまま俺だけ見てろ……俺だけを…』
濃厚な絡みのシーンに悶えていた時、玄関の方で音がした。
解錠音、ドアノブが回される音、ドアの開閉音が順に聞こえてきて、すぐに廊下を闊歩する足音が耳に届く。
「おっ、来てたんだ」
ニカッと歯を見せる、この部屋の主、芹沢 流希。
私はパタンと本を閉じる。
「うん、お邪魔してます。いつも通り勝手に寛いでるよ」
「そっか、仕事だったの?」
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