腐っても女子、ですから

江上蒼羽

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この関係性は如何に?③

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食事の終盤、コンビニで買ったデザートを二人で食べる。


「これ新作?」

「うん、美味しそうだったから」


一緒に居る機会が増えてから、彼が大のシュークリーム好きという事を知った。

生地はパイ生地より、ふんわり派。

中のクリームは、カスタードとホイップのダブルがお好み。

チョコクリームは彼曰く邪道なんだとか。


「うまっ!バニラビーンズ入ってる」

「美味しいね」


追記、バニラビーンズ入りのカスタードクリームだと尚喜ぶ。

見た目の印象からは想像し難い嗜好に、最初は驚いた。

けど、口の端にクリームを付けながら夢中で食べる姿は子供みたいで何だか微笑ましい。

現実の男なんて汚いだけだという私の概念を、彼はあっさり覆してみせた。

上手く説明出来ないけど、彼の纏う空気が好きだし、心地好い。

今は彼との時間が、BL以外の新たな癒しになりつつある。


「そういやさ、昨日おっしーと会ったんだよ」

「へぇ」


シュークリームの包装を細く折り畳み、小さく纏める。


「近々森ちゃんと一緒に住む部屋探しに行こうかなって言ってた」


「へぇ…」と軽く流し掛けた所で、すぐに「えぇっ?!」と、大声を挙げる。


「ウソ?!森川と忍足さん、一緒に住むの?」


森川と忍足さんが正式に付き合い出して、早半年。

ラブラブっぷりは相変わらずで、倦怠期は何処吹く風という感じ。


「いや、まだおっしーが勝手に計画立ててるだけ。その内森ちゃんに同棲持ち掛けるつもりらしいけど」

「へ、へぇ……」

「あ、これ、まだ森ちゃんには内緒ね?」


やや厚めの唇に押し当てられた長い指を眺めながら、コクコク頷く。


「このまま結婚しちゃう勢いだよね~」

「うん………そっか、森川、やったじゃん…」


一時期は仕事もプライベートもボロボロだった相方は、順調に幸せを掴みにいっている。

森川の相方として嬉しいし、とても誇らしい。

けど、私は………?という疑問符が頭に浮かんで消えない。

だって、私と芹沢さんは、まだ……





『俺を心の拠り所にしてみない?』

『…………は?えっ?えっ?』

『間宮ちゃんと付き合いたいなって思って』

『…………は、はいぃ?!』


あの日から、もう三ヶ月は経った。

それなのに私と彼は何もないまま。

エッチはおろか、キスもまだ。

それどころか、手を繋ぐ事もしていない。

ただ、こんな風に時間があれば会って喋ったり、食事を共にしたり……

それだけ。



芹沢さんは必要以上に私に触れて来ない。

私達の関係は、三ヶ月前と何ら変わらない。

友達の延長線上をずっと歩いているだけ。



“これって付き合ってるって言えるの?”



そんな疑問を感じながらも口には出せずにいる。

欲しがってる欲求不満な女と思われたらシャクだし、やっぱり女としては彼の方から求められたい。

単に私に女としての魅力が足りないのかと思ってみたけれど、それならそれで何故付き合おうと言ってきたのかが分からなくなる。

それとも、このスタイルが彼にとってのお付き合いという形なのかな………?

そういえば、好きだと言われた事もない。

見えない彼の本音。

不満に思う事はなくても不安には思ってる。

いつまでこの関係のままなのかな?って。



「何時に仕事?」

「10時から。9時にはタクシー呼ぶ」

「そっか、時間になったら起こすから少し寝といたら?」


部屋のデジタル時計を見て「んー…いいや」と首を振る。


「この前そう言って、誰かさんたら一緒に寝ちゃってたじゃん。あの日川瀬さんにこっぴどく叱られて大変だったんで、お気持ちだけ頂いときます」

「あっはは……そうでした。DVDでも観る?」

「うん」


気取らなくていいこの関係は楽。

楽だけど、ずるずると続けていくような関係じゃないような気がする。






「じゃ、気を付けて」


仕事に行く時間になり、呼び出したタクシーに乗り込む。


「仕事終わったらゆっくり休んで」

「ん、ありがと」


ワザワザ見送りに出てくれた彼に名残惜しさを悟られないよう、笑顔で手を振った。



私と芹沢さんの友達以上だけど恋人とは呼び難いこの関係。

この関係に名を付けるなら“恋人ごっこ”が一番しっくりくる。

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