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好きか嫌いか問われたら…①
しおりを挟むラジオの生放送の終わりと共に、一日が終わった。
喋り過ぎてカラカラになった喉を潤すように、川瀬さんから渡されたミネラルウォーターをがぶ飲みする。
「いい飲みっぷりだね、間宮。今日は、いつもに増してマシンガン炸裂させてたし、そりゃ喉渇くよね」
相方の森川の言葉に「うん、ちょっとテンション上げ過ぎた」と笑って返し、ボトルのキャップを閉めた。
「森川はもっと間宮を見習って、ガンガン喋りなさい。後半空気になってたわよ、アンタ」
「うっ……すみません…」
川瀬さんにダメ出しされ、縮こまる森川。
そんな彼女の右手には、シルバーのリングが嵌められている。
彼とのペアリング、か………と、小さく溜め息を吐く。
別に羨ましい訳じゃないけれど、ついつい目がいってしまうそれは、彼との交際か順調な証であり、幸せの象徴。
何にも嵌められていない自分の右手を見て、また溜め息を吐いた。
……芹沢さんは、どういうつもりなんだろう?
今まで森川からの相談を受け、偉そうに指南してきた手前、彼女に相談するのを躊躇ってしまう。
忍足さんを通じて芹沢さん本人に伝わる可能性もあるから余計に。
「…………どうしたらいいんだろ…」
何気なく呟いた言葉に、森川が「何が?」と反応を示す。
それに「ううん、何でも」と笑って取り繕い、その場を凌いだ。
家に帰ってきてからも、溜め息は止まらず、胸のモヤつきも晴れない。
好きだと言って欲しいとか、ペアリングが欲しいとかじゃなくて、ただ単にはっきりさせて欲しいだけ。
キスしたいとか、エッチしたいとかじゃなくて、私に何を求めているか知りたいだけ。
「………はぁ」
こんな日は、お気に入りのコミックを読んでも元気が出ない。
いつも明るいが取り柄の癖に、一人で居る時は深海のように暗いなんて知ったら、きっと私に関わる人全てが驚くんじゃないかと思う。
というか、こんな風に恋愛事で悩むのって初めてな気がする。
芹沢さんは否定してたけれど、やっぱりゲイでしたってパターンだったら良いのに……と思いかけて
「いや、そりゃ良くないよ」
一人寂しくツッコミを入れた。
久し振りのオフを貰い、丸一日空いた時間。
またいつものように彼の部屋へ出掛け、合鍵でお邪魔する。
「おっじゃましま~す」
しん、と静まり返った部屋。
カーテンは閉められたままで、室内は光が入らず暗い。
「………そういえば、ドラマの撮影……今日からだったっけ…」
以前オーディションで出演を勝ち取った木曜10時枠のドラマ。
その撮影が始まるのは確か今日からだった筈。
脇役だけど最初から最終話まで出番があるんだと彼は嬉しそうに語っていた。
時間が読めないドラマ撮影となれば、今日はずっと居ないのかもなぁ……とガッカリしながらベッドに腰掛けようとした所で
「…………えっ?」
モゾッと布団の中で動く何かに驚き、すぐに立ち上がる。
「…………あー……間宮ちゃん?来たの?」
「あ……」
布団の中から芹沢さんが顔を出した。
「どうしたの?今日休み?」
気怠そうに起き上がる芹沢さんに「うん」と頷き、逆に問う。
「そっちこそどうしたの?ドラマの撮影は?」
「…………うん」
「うん、じゃなくて。行かないとヤバくない?もうお昼近いよ」
時計の針は、11時半を過ぎている。
「午後からなの?にしたって、こんな悠長に………台本読み直したりしなくて大丈夫?」
「…………」
私の問いに、彼は何も答えずに宙を見ている。
「………芹沢さん?」
彼の様子がいつもと違う。
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