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好きか嫌いか問われたら…③
しおりを挟む芹沢さんが「だから、間宮ちゃん…」と頭を抱えた。
雰囲気的に「そういう気分じゃない」と言うつもりなのが手に取るように分かる。
だから、同じフレーズを繰り返させないと言わんばかりに「じゃあ」と彼を睨み上げた。
「人を拒絶して落ち込んで引き込もってて何かが変わるの?」
自分の殻に閉じ籠る気満々な芹沢さんに有無を言わすつもりはない。
「酒に溺れて布団被って不貞腐れて……そんな事してたって、取られた役は戻んないよ?」
「っ、」
僅かに彼が身じろいだ。
「だったら気持ちにリセットかけて、次はもっと良い役を取れるように体勢整えとこうよ。心を安定させとこうよ」
最後に一気に畳み掛ける。
「それが今やるべき事じゃない?貝みたいに閉じ籠って気が晴れるんなら、気が済むまでしてなよ。何の解決にもならないけどね」
早口で捲し立てたからうまく息継ぎ出来なくて軽く息が乱れた。
芹沢さんは呆然としている。
私の焚き付けが効果をなしたのか分からないけれど、少しでも彼を前向きにさせる原動力になって欲しい。
「………間宮ちゃん…」
恐る恐るといった具合に芹沢さんが声を発する。
私は息を飲んで、じっと窺う。
「………パンツ…」
「ん?」
「パンツ見えてる。水色の」
「っ?!」
芹沢さんに体勢整えろと言っておきながら、自分の体勢を全く気にしていなかった。
可愛らしく膝上丈スカートでお洒落してきていた所のしゃがみ体勢……
豪快に下着をお披露目していたらしい事に気が付いた私は「きゃあぁっ!!」と、派手に悲鳴を挙げた。
若干渋々ながらも、芹沢さんは出掛ける事を承諾してくれた。
「………で?どこ行くの?」
マンションを出て、足取り軽く歩く私に芹沢さんが言う。
「てか間宮ちゃん、良いの?こんな堂々としてて」
それもその筈、いつもは目深にしてる帽子を被らず、外出時必須のだて眼鏡もナシ。
モロにまんぼうライダー間宮全開で堂々と歩く姿に芹沢さんは戸惑っているらしい。
「別に?コソコソする必要ないし」
「でも………チラチラ見られてる」
周囲の視線に居心地の悪さを感じているのか、芹沢さんはソワソワと落ち着かない。
「お昼まだだし、食べようよ」
「あ、あぁ……うん…」
通りすがる人は、必ず私と芹沢さんの顔を二度見して行く
決まって「あれ、まんぼうの間宮じゃない?」との台詞付きで。
「………俺、一歩下がろうか?」
そう言って、歩む速度を落とす芹沢さん。
それに「何で?」と返せば「気が引けて」との言葉が返ってくる。
「そういうの意味分かんない」
芸能人同士が堂々と顔を晒して街中を闊歩するのに抵抗を感じている様子の芹沢さんに構わず、彼に向かって手を伸ばす。
そしてそのまま、ここぞとばかりに腕を絡ませた。
「ま、間宮ちゃん?」
戸惑いの色を更に濃くする彼を上目遣いに見た。
「良いでしょ?デート、なんだから」
「…………」
「何食べよっか?」
「……出来れば、軽い二日酔いと胸焼けに優しい物を…」
「じゃあ、がっつりステーキで」
「うぇ………殺す気?」
ジョークを飛ばしながら向かったのは、メニュー豊富なファミレス。
注目を浴びながら堂々と入店する。
「二日酔いには、グレープフルーツとトマトが良いらしいよ。取り敢えず、ジュースとサラダ注文しよっか?」
「ん、うん………てか、ど真ん中の席じゃん……ヤバくない?深夜ならまだしも、真っ昼間で人目多いのに…」
忙しなく左右に視線を彷徨わせる芹沢さんを無視して、メニューを覗く。
「あと、この中華粥っての良さそう。それともうどんにする?」
「あ、いや………あぁ、うん…」
「え?どっち?」
「じゃあ、中華粥ってので」
自分用には、ドリアとオレンジジュースをさくっと注文。
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