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好きか嫌いか問われたら…④
しおりを挟む店員を始めとする多くの視線を集めながらの食事は、あまり食べた気はしなかった。
私よりも彼の方がその思いが強かったみたいだけれど。
「グレープフルーツとトマト………効いてきた?」
「いや、まだ。食べたばっかだし」
「そっか。あ、あとね、ハチミツも良いらしいよ?お味噌汁なんかも」
「へぇ、間宮ちゃん、物知り」
「えっへへ、前に医療番組に出た時に得た情報」
得意気に笑って、また彼の腕にしがみつく。
人目を気にしている様子の芹沢さんは、私の行動に対して困ったように眉を下げる。
でも、決して振り解こうとはしない。
だから私は知らんぷりして、絡める腕に力を込めた。
街中をある程度ブラブラしてから、カラオケしに施設に入った。
鬱憤を晴らすにはもってこいだし、頻りに人目を気にする芹沢さんに配慮しての選択だった。
平日で空いていたから、フリータイムに設定。
フリータイムとセットのドリンクバーにほんのりテンションが上がる。
「持ち込みOKなら、お菓子買い込んでくれば良かったぁ」
嘆く私に芹沢さんがそっとデンモクを渡してくる。
「俺聴いてるから歌って、間宮ちゃん」
確かに私は芹沢さんに「付き合って」と一方的に言った。
でも、だからといって、受け身のままというか……
あくまで俺は付き合ってあげてるよ的な姿勢が面白くない。
「最初は私が歌うけど、芹沢さんも歌ってよね」
笑顔の中に圧力を目一杯込めて言ってから、タッチペンで選曲、送信。
最初の一曲目は、私の十八番のアニソン。
ネット上で露骨に腐女子受けを狙ってると評されていた某水泳アニメ第一期のエンディングソング。
当然、気分を盛り上げる為にアニメ映像の方をチョイスした。
私の大好物なアニメだった為、暇さえあれば繰り返し繰り返し観ていた。
水泳アニメとあって、肌色率が素晴らしく、かなり目の保養させて頂いたし。
見目麗しい高校生の男子達のじゃれ合う姿はヨダレと鼻水の分泌も良くしてくれた。
歌は何十回と聴いているから、歌詞を見ずとも余裕で歌える。
一字一句、音程も完璧に。
一曲目を歌い切り、ウォーミングアップ完了。
ドリンクで喉を潤し、二曲目へと挑む。
二曲目も、得意のアニソン。
今度のは、これまた大好きなアニメ、銅魂の第二期のオープニング。
主人公の銅さんは私の心の恋人の一人だ。
そんな彼を思い浮かべながら熱唱すると、爽快感と共に日頃のストレスが消えていく。
喉の調子を見ながら、三曲目を選曲する。
「三曲目は………卓プリのキャラソンいっとこうかな~」
「あの………間宮ちゃん…?」
ルンルンとタッチペンでデンモクを操作している私に、芹沢さんが恐る恐るといった感じで話し掛けてくる。
「選曲がマニアックでついていけないんだけど……」
デンモクから視線を離して彼を見れば、微妙な顔をして笑っている。
「もうちょい可愛らしいっていうか、今時の女の子が歌うような歌を選曲するかと思ってたんだけど……」
「今時の女の子……」
「例えば、坂系列のアイドルとかの歌とか…」
年齢的にギリギリ今時の女の子の私だけれど、正直あまり興味のないジャンルだ。
「私、その人達の曲、サビしか知らないもん」
口を尖らせて開き直る私を芹沢さんが「マジか」と笑う。
「意外と間宮ちゃんの歌声が野太くてビックリした。普段の声が可愛いから余計に」
「悪かったね。それよか、芹沢さんも何か歌ってよ。折角のフリータイムなんだから」
デンモクとマイクを押し付けると、彼は「参ったな~」と困ったように笑う。
「言っとくけど、俺、歌あんま上手くないよ」
「………案外そういう保険かける人程、嫌味に上手かったりするんだよね」
「いや、マジで」
とか何とか言ってたけれど。
黒っぽくて、よく半裸になりたがる某ダンス集団の曲を選曲した芹沢さん。
出だしから、ゾクッと身震いがした。
「………ムカつく…」
上手くないなんて、どの口が言ってるんだか……って言いたい。
私の読み通り、芹沢さんの歌は嫌味な程上手かった。
普段の声からは想像もつかない甘い歌声でバラード曲をしっとりと歌い上げる。
音程は正確で、憎らしい事に時折ビブラートなんか効かせた位にして。
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