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塩分も甘さも控えめ位が丁度良い①
しおりを挟むフリータイムをたっぷり堪能した後は、喉が悲鳴を挙げている。
「うぅ~声が変~」
「俺も~間宮ちゃん、後半声嗄れてたもんね」
「芹沢さんこそ、声裏返ってたじゃん」
この調子だと、明日の生放送に差し支えそうだ。
脳内で鬼みたいにおっかない顔した川瀬さんが「自己管理しっかりしなさいって言ってるでしょ!」なんて怒鳴ってる。
「のど飴舐めとかないとなぁ」
「だね。思いっ切りハメ外し過ぎたね」
「うん、でもメッチャ楽しかった」
芹沢さんのリフレッシュのつもりが、ちゃっかり私が楽しんでしまっていたという……
目的がいつの間にか摩り替わってしまったけれど、芹沢さんの笑顔が戻った事が一番の収穫だ。
テイクアウトしたハンバーガー片手に、彼の部屋に戻った。
「何か、暫く食べない内に、テリヤキがしょっぱくなった気がする」
ボヤく私に芹沢さんが「そう?」と首を傾げる。
「うん、アップルパイは相変わらずシナモン効いてて美味しいけど」
「んー…俺はアップルパイ、前より甘くなった気がするけどな」
「そうかな?」
顔を見合わせ、二人して「ぷっ」と吹き出す。
「俺達、評論家気取りって感じ」
「言えてる。テリヤキソースの洪水やぁ~みたいな?」
「上手い上手い!似てるよ」
何にせよ、塩分も糖分も摂り過ぎは体に良くない。
食事を終えて、テーブルに頬杖をつきながら楽しい一日だったなぁ……と反芻していると、芹沢さんが徐に口を開く。
「間宮ちゃん、今日はありがとね」
それに「ん?何が?」と返せば、彼は照れたようにはにかみ、続ける。
「間宮ちゃんが居てくれて良かった」
その言葉に、何となく姿勢を正す私。
「いや、無理矢理連れ出しちゃってゴメンね。元気になって貰う方法があれ以外思い付かなかったから」
と、今度は芹沢さんの背筋が伸びた。
「間宮ちゃんの存在に………凄く感謝してる」
「芹沢さん…」
はにかみ顔から真剣顔に……と表情に引き締めた彼は「なんつーかさ…」と、首の後ろを掻きながら言う。
「俺を心の拠り所に……とか何とか格好つけたはいいものの、実際は俺の方が間宮ちゃんを拠り所にしちゃってるよね」
すかさず「そんな事ない」と反論してみると、彼は苦笑混じりに「いんや」と首を振る。
「いつだって間宮ちゃんに助けられてばっか。部屋に間宮ちゃんが来るの嬉しいし、電話で声聞くだけでも安心する」
それは私も同じだ。
芹沢さんの部屋に来ると凄く落ち着く。
自分の部屋に居るよりもずっと、断然。
電話で声聞くだけで疲れが癒えるし、気持ちが安定する。
LINEでのお馬鹿なスタンプだけのやり取りだって、私を癒す素材だ。
相方の一番じゃなくなった途端に生まれた胸の大きな空洞を少しずつ、それでも確実に埋めてくれていたのはBLコミックでもDVDでもドラマCDでもなく…
芹沢さんと共有する時間と空気だとはっきり断言出来る。
「下手な安定剤や栄養剤より、間宮ちゃんが効く」
そんな風に言われたの、初めてだ。
元気キャラをウザがられたり、腐女子な私を否定される事ばかり。
一緒に居ると疲れる、ついていけないなんて言われる事はあっても、安心すると言われた事はない。
だから、今どんなリアクションをすべきか、分からないでいる。
「間宮ちゃんは明るく可愛い人気者。でも、その裏で人知れず努力してる頑張り屋でもある」
いきなり始まった分析にキョトンとする私に構わず、芹沢さんは丁寧に言葉を紡いでいく。
「相方思いの優しい子で、他人に対しての気配りもちゃんと出来てる……何より、事務所の看板や人気者として与えられた役割とか……その華奢な体に沢山の重圧を抱えながら頑張ってて凄いよね。尊敬してる」
「そんな事ない」の謙遜の言葉は、芹沢さんの「だから」に遮られた。
「そんな間宮ちゃんに相応しい男に、俺はなりたいわけ」
芹沢さんの口調が段々力強いものになっていく。
「釣り合いは取れなくても、せめて同じ土俵位には立ちたい。ギリギリ際に片足乗っけてるような状態でも良いから、同じ土俵の上に立っていたいんだよね」
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