13 / 25
塩分も甘さも控えめ位が丁度良い③
しおりを挟む自分から相手にキスした事なんか、生まれて初めてだ。
したいと思った事も初めて。
36℃前後の温かさをたっぷり感じてから、唇を離す。
瞼を開けば、目を真ん丸く見開いたまま固まっている芹沢さんが居て……
その驚きに満ちた表情から、自分の大胆さをじわじわ思い知る。
「あ、の………間宮ちゃん…?」
声に含まれた戸惑いの声に、一気に恥ずかしくなって、それを誤魔化す為に再度勢いをつけて唇を押し当てようとした。
…………けれど。
「ちょっ………間宮ちゃん、駄目だ」
あろうことか、全力の拒否。
乗り出した体をストンと元に戻され、意気消沈する。
「駄目だよ、そういうのは…」
気まずそうに顔を背けられ、女のプライドはズッタズタ。
怒りの導火線に火が着いた。
「………何で?」
まずは冷静になろうと自分に言い聞かせてみるけれど。
「いや、まだそれは……」
言葉を濁す芹沢さんに、クールダウンどころか、更にイラッ。
「何で?」
「いや、だから………その…」
「……何で?」
幼い子供の“何で?”攻撃の無邪気さゼロバージョンをお見舞いしてやる。
「何で?こんな魅力的な女の子を前にして聖人ぶってんの?」
「いや、違うよ」
「だったら、何で?」
据え膳食わぬは、男の恥………とか何とかいう言葉だってあるのに。
食わぬは男の恥なら、食して貰えぬなら女の恥だ。
「私に触ろうとしないよね?一度も」
完全困り顔の芹沢さんを睨み付けると、彼は「参ったなー…」と、頭を掻きむしる。
「私の事汚いと思ってる?だとしたら、失礼だよ。ちゃーんと毎日お風呂入ってます。その日の汚れはその日の内に落としてまーす」
嫌味をふんだんに込めて言ってやると、芹沢さんが「はぁあ…」と大袈裟な溜め息を吐いた。
その様子を見て、もしかして……と思い付く。
「あー……ひょっとして、チェリー……とか?」
それなら、何とか頷ける。
知らないなら、臆病さから手を出して来ないのにも納得がいく。
「モテる振りして、実は経験がないのねー…」
「………違うって」
「別に隠す事はないよ?恥ずかしがる事も。私、偏見ないし」
意外だなーなんて思いながら、薄く笑っていると「だからっ……」と声を荒げた芹沢さんが迫ってきた。
「っ、」
体を支えきれずに、後ろに倒れる。
そのままフローリングに頭を打ち付けた筈が、何故か衝撃はなく、頭も痛くない。
不思議な現象の理由は、芹沢さんが大きな手で私の後頭部を保護してくれていたから。
「ん……芹っ…」
自分からした触れるだけのキスが幼く感じられる程、深くて熱くて甘い口付けに、頭のネジが飛びそうになる。
気付けば、ねだるように彼の首に腕を回している私。
はしたないと思いながらも、この心地好さを手放すつもりは更々なくて。
このまま時が止まれば良いのに……とさえ、思う。
息が乱れる位の長い口付け。
その余韻に浸る私に芹沢さんが言う。
「………本当はずっとこうしたいと思ってたよ」
間近にある苦しそうな表情は、照明の逆光も相俟って、うんと苦しそうに見えた。
「間宮ちゃんに触りたいし、キスしたい。勿論、その先だって………したい」
声を震わせる彼に、私は「じゃあ、どうして?」と問う。
すると彼は、私から体を離した。
「俺には………まだその資格がない気がして」
「資格……?」
上体を起こしながら聞くと、彼は伏し目がちに言う。
「間宮ちゃんは凄く可愛いし、魅力的だよ。一緒に居ると自分の欲を抑えるの大変だから………でも、俳優としての確かな地位を築けるまでは……って、俺の中で決めてるんだ」
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうぞお好きになさってください
みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる