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まんぼうライダーは不滅です①
しおりを挟む仕事を終える頃には真夜中で、あと数分で日付が変わろうとしていた。
欠伸を噛み殺しながらスタジオを後にすると、渋い顔をした川瀬さんが待ち構えていた。
「漸く森川と連絡がついたわ」
その言葉を聞いて、すぐに携帯を掴んだ。
私が送ったLINEのメッセージに対しての返事は二件。
“大丈夫。心配掛けてごめん”
“間宮に話がある”
この内容からじゃ容態はよく分からない。
大丈夫と言っている位だから、取り敢えずは大事に至っていないみたいだ。
にしても………
「話って………何だ?」
気になるのは話があるの件。
まさか体調不良を考慮して引退したいなんて言い出すんじゃ……と考えた途端、血の気が引いていく。
相方がいなくなれば、まんぼうライダーは消滅する。
まだまだ森川と馬鹿やっていたいから、それだけは何としても避けたい。
せめて、休養程度に留めてくれるように説得しようと意気込んでいると、川瀬さんが「行くわよ」と私を急かす。
「えっ……行くって、どこに?」
「決まってんでしょ。森川の所よ」
川瀬さんの運転する車に揺られ、森川の住むアパートへ向かう。
その間、川瀬さんは多くを語らない。
恐らく詳しい情報を聞いている筈なのに、何も教えてくれない。
「さぁ着いた。起きて待ってるって言うから早く行きましょ」
近場のパーキングに車を停めて、森川の部屋へと急ぐ。
「夜中だから、近所迷惑にならないように声は抑えなさいよ」
「はい?」
「どんなに驚いてもね」
意味の分からない釘を刺されて首を傾げる私を見て意味ありげに笑った川瀬さんは、森川の部屋のインターホンを押す。
少し間が空いてから、恐る恐るといった具合に玄関ドアが開いた。
「え、えぇーっ!!妊娠ーっ?!」
森川の口から告げられた衝撃的事実に驚いた私は、川瀬さんから注意されていたにも拘わらず、大声を挙げてしまった。
「間宮、あんたって子は…」
川瀬さんが苦々しげに私を睨むものだから、咄嗟に両手を口元に当てる。
大声を出した後では、この行為に何の意味もないけれど。
「えっと………二ヶ月目に入ってるみたい…」
顔を赤らめながら言う森川は、お腹の辺りを大事そうに押さえている。
「吐き気は、悪阻ってやつだったのね」
川瀬さんが言うと森川は何も言わずに頷いた。
「………ご迷惑お掛けしました」
「迷惑なんて思ってないわよ。で、吐き気はまだ続いてるの?」
「………はい……でも、原因が分かったから、気持ち楽になったような気が…」
森川と川瀬さんのやり取りをぼんやり傍観していると、不意に森川と視線が絡む。
そこで、ハッと我に返った。
「間宮……心配掛けてごめん」
申し訳なさそうに言う森川だけど、その表情はとても不安げだ。
私が何を言うか気が気でないんだろう。
「ぜ、全然大丈夫。気にしないで。変な病気とかじゃなくて良かったよ」
変に緊張して声が上擦った。
「てか………誰の子?」
分かっていても確認せずにはいられない。
「馬鹿!忍足さんに決まってんでしょ!」
当然、川瀬さんからお叱りを受ける。
「え……じゃあ、何で妊娠したの?」
「そんなの、出来るような事したからでしょうがっ!!」
これまた川瀬さんの怒声が飛んだ。
森川は決まり悪そうに顔を真っ赤にして俯いた。
「まさか、森川がねぇ……」
多分、私は混乱しているんだと思う。
だって、余りにも突然過ぎるから。
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