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塩分も甘さも控えめ位が丁度良い⑥
しおりを挟む「はい、これ。仕事入ったんでしょ?」
溜め息を吐きながら携帯の画面を眺めている私に、芹沢さんが服を差し出してきた。
「うん……」
返事をしたものの、受け取る気になれない。
それを不思議に思ったらしい芹沢さんが優しく「志保?」と問い掛けてくる。
「邪魔……入っちゃったね…ごめん」
「良いって。てか、森ちゃんどうしたの?」
芹沢さんが私の手を取り、服を持たせる。
「何か、具合悪くなったみたいで、病院行ってるって。だから代わりに仕事を……」
「マジ?大丈夫なの?森ちゃん」
「さぁ………体は丈夫な子なんだけど……後でLINEしてみる」
「そうしな。取り敢えず、支度した方が良くね?いい加減目のやり場が……」
とか言っときながらしっかり凝視している芹沢さんが何だか可愛い。
「続き……しないの?」
わざと挑発するようににじり寄る。
「いや、急がなくて良いの?何時からか知らないけど…」
「川瀬さんが迎えに来る。まだ少し時間あるよ」
続きをせがむように、芹沢さんに抱き付いた。
肌と肌の触れ合いが心地好い。
「……萎えちゃった?」
「全然。でも……」
「あと15分あるよ?」
芹沢さんの体ごと後ろに倒れると、フローリングの冷たさが肌に伝わる。
見上げた芹沢さんが「15分て」と目を細めてた。
「それで足りると思う?」
「サクッと終わらせれば時間余るんじゃない?」
「テキトーに済ませろって?無理言うな」
芹沢さんの唇が肌に触れた瞬間、全身に電流が流れた。
かと思ったら、すぐに彼は上体を起こす。
「………続きはまた別の機会ね」
「………」
「早く支度しな?」
火照る体に刻まれた紅い印。
仕方なく、それで自分を納得させた。
「気を付けて」
「………うん」
玄関で靴を履く私を見送る芹沢さん。
名残惜しさが腰を重くさせる。
「森川の代打、しっかりやってくる」
「偉い。俺も後でおっしーに探り入れてみるけど……森ちゃん、大した事ないと良いね」
「うん」
握っていた携帯が震えた。
川瀬さんからの着信だ。
着いたと連絡を貰ってから中々出てこない私に焦れて、催促してきているんだと思う。
二人の甘い時間をぶち壊したんだから、少し位待ってくれても良いじゃん……と、心の中で毒づきながら「よいしょっ」と腰を持ち上げた。
「また来て良い?」
ドアノブに手を掛けて振り返る。
芹沢さんはニカッと歯を見せての満面の笑み。
「いつでもおいで。大歓迎」
「じゃあ、この後の仕事終わったら来て良い?さっきの続きしたい」
私の大胆な言葉を受け、芹沢さんは「早速かーい」と大笑い。
「良いよ、待ってる」
「へへ………ありがと」
私は、芹沢さんに関しては肉食女子らしい。
時間がないって分かってはいるけど、離れがたい。
一旦は回したドアノブを戻し、二歩分下がる。
「間に合うの?」
「大丈夫…………多分」
「多分て……」
苦笑する芹沢さんに構わず、彼の背中に腕を回す。
「また怒られるんじゃない?」
「いい。怒られ慣れてる」
あと一分だけ………と、ぎゅうっと抱き付く私を「しょーがねーなー」と言いながら抱き締めてくれる芹沢さんの優しさが嬉しい。
「好きだよ」
「好き」
いつものように揃うタイミング。
それに二人で顔を見合わせてから吹き出して。
「ぶつかり稽古に備えて準備体操しとくかな」
「激しい肉弾戦になりそうな予感……」
「おうよ!覚悟しな」
「わぁ、怖い~」
エネルギーをたっぷりチャージしてから部屋を後にした。
川瀬さんの待つ車に乗り込むと同時に「遅いっ!!」の怒鳴り声。
「いつまで待たせんの?!」
かなりご立腹なご様子に「ひぇ~」と思いながらも「すみませ~ん」と反省しているフリ。
我ながらいい性格してると思う。
「森川から連絡ありました?」
「まだ。LINE送ってみたけど、既読がつかないの」
「そっかぁ…大丈夫かな………?」
携帯を操作すると、私がさっき送ったメッセージにも既読は付いていない事が分かった。
「森川……重症?もしかして…」
相方が心配で堪らない私に、川瀬さんが厳しい口調で言う。
「間宮、あんたはこの後の仕事の事だけ考えてなさい」
若干ムッとしながらも「はぁ~い」と返事は素直。
要領の良さだけが私の取り柄。
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