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まんぼうライダーは不滅です⑤
しおりを挟む眠気が遠退いたらしい芹沢さんに「実はね…」と切り出す。
絶対驚くだろうな、と予測しながら。
「森川、オメデタだって」
芹沢さんは「ふぅん……」と流しかけて、すぐに「えぇっ?!」と大きな声を出した。
「マジ?」
「うん、マジマジ。具合悪かったの、それが原因みたいよ?」
「うへー…」
暗がりの中でも芹沢さんが目をまん丸くさせているのがよく分かる。
「でね、それを知った忍足さんが物凄い勢いで駆け付けたの」
「そりゃそうなるわなー」
「大きなバラの花束抱えて森川にプロポーズ!私とマネージャー居る前で」
「やるな、おっしー」
「キザだよねー」と笑う私に反して、芹沢さんは「そう?」との反応。
「男らしいじゃん。森ちゃん喜んだんじゃない?」
「うん、目にいっぱい涙溜めて喜んでたけど………私だったら、花束は要らないかな」
「へぇ……どして?女性は花が好きなもんでしょ?」
大抵の女性は花を貰えば喜ぶものなんだろうけれど、私にはその価値がよく分からない。
「全然。花束なんかより、18禁のBLコミック20冊の方が断然嬉しいもん」
忽ち、芹沢さんの顔が引きつる。
「………うわぁ…価値観が一般的なそれと違う訳ね…」
「花より団子ならぬ、花よりBL」
意味もなく得意気に言った私に芹沢さんは苦笑い。
「あっはは………んで、それを俺に用意しろと…?」
芹沢さんの返しに、私は目をパチクリさせる。
「え……用意してくれる気あるの?」
それって、つまりは私との将来を真面目に考えてくれているという事で。
流石に結婚する気なんかないだろうなって思っていただけに驚きが隠せなかった。
「用意してくれる気あるのって……あるに決まってるじゃん。何の為にこうして一緒に居んの?」
「いや、結婚まではないと思ってたから…」
「言っとくけど、俺、そんな軽い男じゃねーよ?」
芹沢さんが軽薄な人じゃない事位、よく知ってる。
でも、心のどこかで、この人ともいつかはお別れしちゃうのかなって思いはあったから信じられなくて。
「………いつでも受け取れるように両手空にして待ってる」
甘えるように彼の胸に顔を埋めると、芹沢さんはそれに応えるように私の背に腕を回した。
「マジでBL本なの?しかも18禁…」
「………うん、30冊ね。小説でも可」
「おいおい、増えてんじゃん!」
結局、この日はぶつかり稽古をしないで眠りについた。
お互いに疲れていたのもあったけど、それ以上の理由があったから。
狭いシングルベッドの上で身を寄せ合い、お互いの温もりと存在を確かめ、実感する。
体を重ねる行為なんてしなくても平気な位、心が温かいもので満たされた。
好きな人と心が一つになれた喜びを噛み締めながら眠りに落ちていく幸せ。
どんなに濃いBLコミックを読むよりも私の心を安定させてくれた。
生きてて良かったなぁ……なんて大袈裟かもしれないけど、心の底から思える。
芹沢さんは、未だにスターになれていない。
川瀬さんには“売れない俳優”なんて見下されているけれども、私の中では彼は大スターだ。
きっと、これからもずっと。
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