腐っても女子、ですから

江上蒼羽

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それから……①

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それから少し月日が流れ……


「えぇーっ!!今日帰って来れないの?!」

『ごめん………子役がぐずってて撮影進まなくて…』

「折角、時間空いたのにー」


むくれる私に電話越しに『ごめん』と謝る芹沢さん。

仕方ないとは分かっていながらも、寂しさは拭えない。

ここの所、芹沢さんは忙しい。

芹沢さんからドラマの配役を奪った大御所俳優の息子は、撮影初日からNGを連発し、出演者やスタッフ達から総スカンを喰らったらしく……

居たたまれなくなったのか、直ぐに役を降板。

監督直々に芹沢さんに頭を下げに来て、彼の降板を撤回した。

それと同時期に、私と芹沢さんのデート報道が出た。

【白昼堂々手繋ぎデート】との見出しで紙面を派手に彩った訳で。

相方の時の例があったからか、また売名か?!ドッキリか?!なんて煽られたりもして。

下手したら、森川の時の報道より大きく扱われたかもしれない。

そのお陰で、彼の知名度と注目度が急上昇。

チョイ役だった筈が、急遽脚本を書き替えられ、主人公を取り巻く主要キャラクターとして大幅に出演シーンが増えた。

ドラマの初回が放送された日の視聴率はかなり高く、最終回まで高い数字をキープ出来るのでは……と、今から見込まれている。

忽ち有名人になった芹沢さんに、あちこちからオファーが殺到している。

ドラマは勿論、CMにバラエティー等多方面から。

報道の影響がこんなに大きいなんてビックリだ。

芹沢さんは、今の人気と注目度に戸惑いを感じつつもそれを一過性のものにしたくないと必死に努力している。

元々のキャラクターからして、スタッフや共演者達の受けも良い。

多分、息の長い俳優になるんじゃないかと私は思ってる。

密かに、忍足さんなんか、あっという間に抜いちゃうんじゃない?なんて思っていたりも。

寧ろ、そうなって欲しいと願っていたりする。



芹沢さんが忙しさで嬉しい悲鳴を挙げている反面、私の寂しさは募る一方で。

会えない日が続いて、無人の彼の部屋で一人待つ事もザラ。

次はいつ会えるんだろう……と溜め息を吐く事も増えた。

スレ違いが増えるにつれ、関係が駄目になったらどうしようと不安も膨らむ。





そんなある日。

いつものように芹沢さんの部屋で寛いでいると、インターホンが鳴った。

恐る恐るドアスコープを覗くと、有名所の運送会社の制服を着た男性が箱を持って立っていた。


「………宅配かぁ……どうしよ…」


悩んだものの、再配達の手間を申し訳なく感じて、芹沢さんの代わりに受け取る事に。

だて眼鏡で簡単に変装してからドアを開ける。


「ご苦労様でーす」

「受け取りのサインお願いします」


荷物を受け取ると、ズシッと腕に負荷が掛かった。


「重っ……」


配達員を見送った後、伝票を確認する。

差出人は某巨大通販サイトで、品名の箇所には【書籍】の文字が記入されていた。


「ふぅん……本なんか読むんだ」


然して気にも留めずに、箱を部屋まで運ぶ。

と、丁度良く、部屋の主である芹沢さんが帰宅。


「ただいま」

「おつです。何か荷物届いてるよ」


脱いだ上着をテキトーに放った芹沢さんは「あ、やっぱり?」と笑う。


「さっき宅配の兄ちゃんとすれ違ったら」

「そっか。何か書籍って書いてあるけど、どんだけ入ってんの?やたらと重いよ?」


箱の大きさと重さからして、結構な数が入っているっぽい。
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