腐っても女子、ですから

江上蒼羽

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それから……②

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ガムテープを剥がして箱を開封した芹沢さんは、中身を確認すると「ほい」と私に差し出してくる。


「いやー流石に書店で買うのは恥ずいから、ネットに頼っちゃったよ」

「……え?」


差し出された箱を恐る恐る覗き見る。


「これって……」


箱にぎっしりと詰め込まれた書籍類。



【R18 狂乱の宴】

【R18 イケない関係】

【R18 綻びる蕾】

【メンズラブ傑作選】


………etc


背表紙の刻まれたタイトルに、思わず生唾をゴクリ。

試しに一冊手に取ってみれば、麗しい表紙に顔面は崩壊する。

男同士の濃厚な絡みが描かれた表紙に導かれ、ついつい本を開きたくなったけれども必死に我慢。


「せ、芹沢さん………こここ、これって…」


まずは、芹沢さんへの確認が先だ。


「BLコミック………しかもこんなに沢山……どうしたの?これ」


箱の中いっぱいのBLコミックに興奮で鼻血が噴射しそう。

しかしながら芹沢さんは、私の反応に不思議そうに首を傾げる。


「自分が欲しいっつったんじゃん?」

「え………えぇ?」

「きっちり30冊あると思うから確認しなよ」


彼の言葉に一瞬キョトンとしたものの、すぐにいつかの会話を思い出した。


「花束じゃ嫌っつってたじゃん。ちゃんと受け取んな?言っとくけど、返品不可だからね」

「あ、あわわわわ…」


プロポーズのオプションは、花束よりもBLコミックの方が断然嬉しい的な。

確かにそう言ったのは私だけれども。


「な、何でまた……」


俄に信じられずに戸惑う私に、芹沢さんは「何でってさー…」と苦笑する。


「この所、めっきり忙しいじゃん?お互いに。あんまり会えないのも寂しいし、ウチに通うのもめんどいっしょ?」

「いや、めんどくはないよ。好きで通ってるだけだし」


芹沢さんの家に押し掛ける件については、私が勝手に通っているだけだ。

決して、苦に思っていない。

逆に楽しい位だ。


「でも、交通費や時間だってかかる訳だしさ。そんなら一緒に住んじゃえば良いよなって思ったんだよね」

「え?一緒に?」


唐突な提案に目を丸くさせると、芹沢さんが更に私の目をまん丸くさせるような事を言う。


「そう。で、どうせ一緒に住むんなら、同棲でズルズルするより、このタイミングで結婚って形にした方が良いような気がしたもんで」


芹沢さんがニカッと愛嬌たっぷりに笑ってみせる。


「つー事で、どう?俺と夫婦めおとになりませんか?」

「っ、」


言葉が詰まったのは、ほんの一瞬。

でも、すぐに状況にそぐわない笑い声が飛び出してくる。


「あははははっ!」

「ちょっ………何故に笑う?」


自分でも良く分からない。

しかも、全然笑う場面じゃないし。


「や、何かビックリしちゃって………あははっ」

「だからって………何か違うくね?」


この状況なら、照れたようにはにかんだり、頬を染めたりするのが普通の反応だと思うんだけど……

私の場合、何故だか笑いが止まらなかった。


「あはははは」

「………おいおい…」


呆れ顔の芹沢さんを前に、ひたすら笑い転げていると、目から生温い液体が流れ出たのに気付く。


「あ、はは……」


ポロポロっと、次から次へと溢れてくる。


「えぇ?今度は泣いちゃう?」


慌てた様子の芹沢さんがティッシュ箱を差し出してくる。


「笑ったり、泣いたり………忙しいねぇ……もうちょい普通の反応で頼むわ」

「そうしたいのは山々なんだけど…」


笑いの次は、涙が止まらなくなった。


「じゃあ、これなんか出したらもっと泣いちゃう感じ?」

「え…」


何やらゴソゴソとパンツのポケット漁る芹沢さん。


「サイズ間違ってない事を祈って、嵌めさして?」


出てきたのは、これまた驚きの代物。
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