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キミの隣で②
しおりを挟む車が大通りから交通量の少ない脇道へと逸れる。
その瞬間から、百花の肩の力が抜けた。
「ねぇ、春休み、勉強しなくていーの?」
少しは話せる余裕が出てきた百花が話題を振ってきた。
「んー?どうして?」
「だって、毎日シフト入ってんじゃん。学生の本分はバイトより勉強でしょ?」
返事をする代わりに、大きく伸びをした。
「折角進級出来たのに、卒業出来なかったら馬鹿みたいじゃん」
「まだ新学期始まってないし」
「ま、ハルの事だから、上手くやるだろうけど」
笑いながらハンドルを切る百花。
車は、俺ん家の方へと向かっている。
折角会えたのに、このまま送られて終わりじゃ寂しい。
ずっと家に着かなければいいのに………なんて、窓の外を流れる景色を眺めながら思う。
「歳上ぶっちゃって」
「実際歳上だし?」
窓から視線を外し、得意気な横顔を睨み付ける。
「……たった1ヶ月の違いじゃん」
「1ヶ月の違いでも、歳上は歳上だもん」
3月生まれの百花と、4月生まれの俺は一つ学年が違う。
だから、この春3年に進級する俺を置いて、百花は一足先に高校を卒業。
進学するかと思ったのに、親の負担になりたくないから……と就職した彼女は、4月から小さな会社で事務員として働く事になっている。
毎日二人で通った道を二人で歩む事が出来なくなった。
手を繋いで歩いた通学路を一人で歩かなければならない事が今から憂鬱で仕方がない。
たった1ヶ月の違いなのに、その差はあまりに大きくて、もう一月早く生まれたかった……と切に思う。
ふと視線の先に、咲き誇る淡いピンクの花を見付けた。
「ねぇ、モモ」
「んー?」
連日の陽気でか、ほぼ満開のそれを指差しながら言う。
「花見に行こうよ」
「えっ……今から?」
「うん、今から。丁度見頃じゃん」
俺の突然の提案は、百花を驚かせるには十分だった。
「もうハルの家に着くけど?」
驚く……というより、ちょっと呆れ気味の百花を「いいじゃん」とやり込める。
「城下町公園のとこ、出店いっぱい出てるみたいだよ?うんまいタコ焼き食いたい」
「………進行方向と真逆だけど?」
「Uターンすれば良いだけじゃん」
「私、明日初出勤なんだけど…」
「ちょっとだけ。遅くならないようにするから」
渋る百花に駄目押しとばかりに「お願い!」と両手を会わせる。
「もう少し、モモと居たい」
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