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キミの隣で③
しおりを挟む大袈裟に溜め息を吐いてみせた百花は「仕方がないなぁ」と笑う。
「ハルの可愛いワガママは、拒否権ナシだよね」
偶々通り掛かったコンビニの駐車場でUターンしてから元の道を辿る。
「タコ焼きもいいけど、焼きそばもマストだよね」
「だね、美味しい店に当たるといいな」
「あっはは、出店も当たりハズレあるもんね」
「そうそう、不味いとこに当たったら最悪」
進行方向を真っ直ぐに見据えている百花。
楽しそうな彼女の笑顔が、今は片側半分しか見えないのが悔しい。
「急にお腹空いてきちゃった」
一旦停止は、停止線手前にキッチリと。
ちょっと鈍くさい部分のある百花の運転は、最初こそ危なっかしかったけど、今ではそこそこ安心して助手席に座れる。
「………ねぇ、モモ」
少し倒したシートから彼女の横顔を眺めながら声を掛けてみる。
「ん?何?」
これから大きな通りに差し掛かる百花は、緊張した面持ちでハンドルをギュッと握っている。
そんな彼女が可愛くて、吹き出しそうになるのを必死に我慢。
「職場に仕事の出来る格好良い上司が居ても、ドキドキしたりしないでよ?」
俺の言葉に百花が吹き出す。
「えー?何それー」
緊張で強張った表情が和らぐ。
「何それじゃなくて、真面目な話」
「えぇー?」
「ちょっとワルっぽい先輩に壁ドンされてもときめいたりしないでよ?」
「はぁー?」
百花が可笑しそうにケラケラ笑う。
「笑い事じゃないって。仕事で困っているとこを超絶イケメンの同期にさりげなく助けられてもキュンキュンしないでよ?」
「あはは!そんなのないない!」
「ない保証ないじゃん」
「漫画の世界じゃあるまいし~」
自分には関係ない事のように笑い飛ばす百花に対して、俺はちっとも笑えない。
「男のネクタイ緩める仕草とか、髪掻き上げる仕草見て密かに悶えたりしないでよ?」
「え、それは分かんないなぁ」
「はぁ?ふざけんな」
すっとぼける百花を思いっきり睨み付けてみても、彼女は真っ直ぐ前を見てるだけで気付かない。
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