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平坦な日常にスパイスを⑨
しおりを挟む「屋台パレードって何するんですか?」
私が聞くと、高瀬さんが丁寧に説明してくれた(ちょっと得意気に)
高瀬さんが住む地域には、古くから細かく分けられ、名付けられた町内が20あるそうだ。
各町内には、青年会という組織があり、屋台と呼ばれる大きな山車を所有している。
屋台パレードとは、その屋台を地元の青年会の方々が各町内から花火会場近くまで引っ張り出して来て、とにかくワッショイワッショイ騒ぐらしい。
全町内の屋台が集結すると、凄い迫力なんだそう。
「そういえば、去年花火観に行った時、通りが賑やかだった覚えがある……ね、凛ちゃん」
「うん」
まぁ、あんまり………というか、全然興味ないけど。
「だから高瀬、祭り期間に有給取ってたんだ」
「そう、お饌米奉納までの祭り期間中屋台引いて祝儀集めしないといけないから」
「暑いのに大変だね」
私はずっと携帯を持ったまま。
早く隣の王子様のデータを登録したいのに、話が進まずイライラ。
「てか、どのみち漣も花火会場のすぐ傍にいるんだろ」
「ん、まぁ…」
「なら、漣の屋台のとこ集合して花火観るのにしよっか?」
カズさんの提案に「そうしましょう!」と大きく頷く。
私としては、何としてもカズさんと花火大会に行く約束を取り付けたい。
「時間や集合場所の細かい連絡取りたいし、今後このメンバーで飲みに行く事もあるだろうからLINEのグループは作っとこうよ。はい、皆携帯出して」
カズさんの仕切りで携帯をふるふる。
LINEのお友達登録に新しい名が追加され、思わずにんまり。
店での飲み代は、相席料としてカズさんと高瀬さんが少し多めに払ってくれた。
結構飲み食いしちゃったけど、実質負担は1/3程度で済み、ラッキー。
何より、イケメンと楽しい一時を過ごせた事は幸せだ。
目の保養になり、耳の保養にもなり、女性ホルモン活性化にも繋がった。
心もたっぷりしっとり潤った。
「楠木達は帰りどうすんの?電車?タクシー?」
「あ、輝子の家がすぐ近くなの。今日は泊めて貰うんだ。高瀬達は代行?」
「いや、ここから少し距離あるけど、カズのマンションまで歩いてく予定。そこで雑魚寝かな」
ホロ酔いで足元が微妙にふらつく。
凛ちゃんもいつもより飲む量が多かった所為か、珍しく足元が覚束ない感じ。
「カズさん、マンション住まいなんですか?一人暮らし?」
「そっ、新築高級マンションに一人暮らし」
カズさんに質問したのに、何故か高瀬さんが答える。
「カズのじいちゃんが経営、管理してるマンションの一室を孫だからってただで住まわせて貰ってんの。じいちゃんの脛かじり」
「うるせーよ」
つまりは、カズさん家は一般家庭よりは裕福だという事。
これまた良い事を聞いた。
イケメンで、話してみた感じ性格も良い、尚且つお金持ち……
ヒロインの相手役の設定そのもの。
これは、相手にとって不足なし。
更に捕獲意欲が駆り立てられた。
「今日はありがとう。楽しかった」
「こちらこそ楽しかったです。花火も楽しみにしてます」
「うん、またLINEでね」
私と凛ちゃん、カズさんと高瀬さんに別れて反対方向へと足先を向ける。
「楠木、輝子ちゃん、気を付けて帰んなね」
「うん、高瀬達も」
高瀬さんの言葉が嬉しかったのか、凛ちゃんが笑顔で手を振る。
背を向けて歩き出した高瀬さんの背中を名残惜しそうに眺めている凛ちゃんの横顔は、正に恋する乙女。
普段の冷めたキャラが嘘みたいにしおらしく、可愛らしい。
だけど、何で彼なんだろう……?何も彼じゃなくても……って疑問が尽きない。
我が家まで向かう道中、どうしても我慢出来ずに「ねぇ、凛ちゃん」と切り出した。
「凛ちゃんは高瀬さんのどこが良いの?」
途端に、凛ちゃんが凄まじい勢いで振り向く。
「なっ、なな……何言っちゃってんの?!別に私は高瀬なんか……」
いつもは冷静沈着を装っている彼女が明らかに動揺している。
「何って……見てればすぐ分かるよ。凛ちゃん、高瀬さんの事好きなんでしょ?」
「分かるってどんな風に?!」
どんな風に……と言われても、上手い言葉が見付からない。
「うーん……何て言うか、高瀬さんを見詰める目とか、声のトーンとか………かなり乙女度MAXって感じ」
「…………」
凛ちゃんは何も言わずに俯いた。
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