27 / 100
にゃんてこった!!⑤
しおりを挟む信号待ちで停車した時を狙うものの、こういう時に限って信号に引っ掛からずスムーズに進む。
「テキトーな所で降ろして下さい」
高瀬さんにお願いしてみたけれど、彼がブレーキを踏む気配はない。
「まぁ、落ち着きなよ」
「落ち着けません!私は帰りたいんです!」
鼻息荒く訴える私に対して、高瀬さんは冷静で。
「折角可愛い格好で出て来たのに、すぐ帰るのは勿体ないよ」
「カズさんの為に気合い入れたのに、本人が居ないんじゃ意味ないです」
凛ちゃんにLINEしようと携帯を取り出す。
高瀬さんと会えると思って胸をときめかせているであろう凛ちゃんにの事を思えば不憫でならない。
私だって可哀想だ。
「楠木に連絡取るの?」
「当然ですよ」
アプリを立ち上げ、素早く画面をタップする。
「凛ちゃん激怒もんですよ、これ」
「だろうね」
送信完了。
既読はまだつかない。
「俺、ずっと行きたかった所があるんだよね」
徐に言い出す高瀬さんに、思わず「えぇ?」と眉を寄せる。
「男一人じゃ……いや、二人でも中々入りづらいんだよね」
「ならこの次、凛ちゃんと行って下さいよ」
冷たく返してみたけど、高瀬さんの行きたいという男が入りづらい場所に少し興味があった。
「嫌なのは百も承知だけど、少しで良いから付き合ってよ」
高瀬さんがあまりに申し訳なさそうに言うもんだから、仕方なく……
「…………まぁ、少しだけなら」
前回の時の携帯とたこ焼きのお礼を兼ねて、気が進まないけど、ちょびっとだけ付き合う事にした。
車が停まった先は、やたらファンシーなお店の駐車場だった。
【にゃんこハウス】
車から降り、可愛い肉球のマーク入りの看板を見上げていると、高瀬さんがはにかみながら言う。
「店がオープンした時から、いつかは来たいと思っていたんだよね」
「は、はぁ………」
こじんまりとした店構えの店舗は、ほぼ全面ガラス張りになっていて、中の様子が良く見える。
店の中には、キャットタワーとソファーがあり、数匹の猫が悠然と寛いでいる。
「猫カフェ………ですか…」
「ん、うん……なんだよね」
まさか凛ちゃんの想い人と、猫カフェを訪れる事になろうとは……
にゃんてこったー!!と叫びたい衝動に駆られる。
「店に入る前に確認するけど、猫アレルギーはないよね?」
「ないです」
高瀬さんと………というのは不本意ながらも、実は猫好きな私は猫カフェに一度訪れてみたかった。
早く可愛くてモフンモフンな猫達と戯れたくてウズウズする。
「いらっしゃいませ~!」
ガラスの引き戸を開けて店内に足を踏み入れると、人の良さそうな店主が猫を抱えて出迎えてくれた。
「お二人様ですね。当店に来店された事はありますか?」
「いえ、初めてです」
「では、当店のシステムをご説明致します」
店主の説明を聞きながらも、高瀬さんの視線は既に猫に向けられている。
高瀬さんはアイスカフェオレ、私はアイスティーを其々注文し、案内された二人掛けのソファーに腰を下ろす。
悠々自適に振る舞う猫達は全部で10匹。
店内の張り紙に猫の紹介が記載されているのを読む限り、一匹だけマンチカンで、あとは保護猫の為雑種ばかり。
それでも、長毛の猫が居たり、しましま柄だったり……と大から小まで色んなタイプの猫が居て見るに楽しい。
「可愛~い」
「うん、だね」
まずは、一匹一匹猫を目で追う。
尻尾が長い奴が居れば、短い奴も居る。
人相………じゃなくて、ニャン相の悪い奴も居れば、愛くるしい顔立ちの奴も居る。
どの子も其々特徴があって可愛い。
自分の表情がどんどん緩んでいくのを感じる。
あのキジトラの子、目が真ん丸で特に可愛いなぁ……なんて眺めていると、高瀬さんがオモチャBOXから、先端にホワホワした毛玉が付いた棒を取り出した。
そして、私が目をつけていたキジトラ模様の猫の前に棒をちらつかせる。
香箱座りをしているキジトラは、棒を一瞥して知らん振り。
「それ……あんまり好きじゃないんじゃないですか?」
「ん?んー……多分食い付く」
興味なさげに窓の外を眺めているキジトラには、高瀬さんを見下しているんじゃないかって位、無関心。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
79
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる