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夫婦の結論
しおりを挟むいつもより少し遅く帰ってきた旦那。
目の腫れは完全に引いたのに、顔を合わせたくなかった。
背後に気配だけを感じながらも、知らん振りして料理に没頭する。
「……ご飯、まだ出来てないから」
何事もなかったように、明るく言えたらいいのに
背中越しに会話するだけで精一杯。
お通夜のように静かにご飯を食べて。
食器を洗い終えたら、さっさと2階へ逃げる。
後をついてきた旦那。
何やらカサカサ音をさせながら。
昨日と同様に、ふて寝しようと布団を敷く。
布団に潜り込もうとした。
でも、旦那に止められた。
「これ食え」
偉そうに言いながら差し出してきたのは、コンビニスイーツ。
しかも、大好物のチーズケーキだった。
「要らない」
「いいから食えや。意地張ってもいい事ねーよ」
「…………」
渋々、袋を破り、ケーキを一口かじる。
濃厚だけど口当たりが良く、さわやかな酸味もある。
「………おいしい」
「新商品だって」
二人でケーキを味わう。
ケーキがあと二口くらいになった時、旦那が徐に口を開く。
「………昨日は、言い過ぎた…………ごめん」
“ごめん”の部分がやたらと小さかった。
だけど、彼の口からその言葉が出てきたのに驚いた。
いつもは、絶対自分から謝らないから。
「……早く帰れた日は、なるべく手伝うから」
「……うん」
「いつも大変だったね。いつもありがとう」
「……………うん」
気付けば、涙で目の前の景色がぼやけていた。
必死に鼻を啜りながら食べたケーキの最後の一口は、涙の味がした。
ケーキで誤魔化されているような気がするけど
折角、旦那の方からくれた仲直りチャンス。
ここはひねくれずに素直になろうと思う。
「私の方こそごめんなさい」
「うん」
「何かと至らぬ妻ですが、これからも面倒見て下さい」
「うん。酒も買ってきたから、取り敢えず飲む?」
「うん」
「お疲れさん」
「お疲れ様」
テレビを見終わって2階に上がってきた子供達が嬉しそうに言う。
「お父さんとお母さん、仲直りしたのー?」
「したのー?」
思えば、子供達にも心配掛けたと思う。
ごめんね、駄目なお母さんで。
“離婚”
この先、あと何回頭に浮かぶ?
きっと、喧嘩する度に浮かぶだろう。
でも、何だかんだで、結局はこの人と夫婦してるんだろうな………
そんな風に
缶チューハイを飲みながら、ぼんやり思った夜だった。
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よくある、ほんとによくある夫婦の一コマですが、あの苛つきと寂しさ、悲しさは慣れることのないイヤなものですよね。
その頃を思い出して感情移入し、切なくなりました。
素敵なコメント嬉しいです。
拙い作品を読んで頂きまして、ありがとうございました。