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まんぼうライダー④
しおりを挟む「森川さんの番号教えて」
パステルピンクの手帳型カバーに納められた携帯には、キラキラ輝くハートのチャームが付けられていた。
振り子のように揺れるハートを見詰めながら「……何で?」と問うと、彼女は眉を下げながら言う。
「段取りの打ち合わせとか色々。こまめに連絡を取り合いたいから教えて?学園祭まであまり時間もないし……」
「あぁ……そういう事なら…」
私も携帯を取り出す。
女子高生らしからぬ、シルバーの折り畳み式携帯。
かなり古い機種であり、ガラケー。
我ながらおじさん臭いとは思うけれど、親から買い与えられたのが、これだったのだから仕方がない。
仕方がないとはいえ、多少の抵抗があり人前ではあまり操作したくないソレを開く。
ダサーイとか言われたら嫌だな……とか思いながら、マイデータを呼び出した。
ところが、間宮さんが食い付いたのは、古のポンコツ携帯ではなく、それに括り付けていたストラップの方だった。
「わっ……何?そのストラップ。見せて、見せて」
長い紐の先で揺れるマンボウのチャームを物珍しげに眺め「かわいいー!」とはしゃぐ間宮さん。
「どこで買ったの?」
「さぁ……お土産で貰ったものだから…」
マンボウのストラップは、父の社員旅行のお土産。
何故、マンボウをチョイスしたのかは不明ではあるものの、間抜け面が可愛くて、何気に気に入っていたりする。
「何か、このマンボウ、森川さんに似てるよねー」
「………は?」
カチンと来た。
どういう意味だと言いたげに間宮さんを睨むと、彼女は悪びれる事なく言う。
「何てゆーか、ぬぼーっとした感じが森川さんっぽいってゆーか……」
「………悪かったね」
天然という言葉では済まされない程、無神経な言葉に、口元がヒクついた。
それに気付いたらしい間宮さんは「あ……っと、ごめん。フルフル……は出来ないよね?」と、話を逸らした。
「フルフル?何それ……」
「古いガラケーじゃLINE無理だね。取り敢えず番号だけ聞いとこうかな」
「………」
ムカつく気持ちを落ち着かせながら、互いの情報を交換する。
「登録よろしく~」
「…………うん」
画面に打ち込んだ情報を電話帳に新規登録する。
そのまま待ち受け画面へと表示を戻し、携帯を折り畳もうとしたのだけれど…
「あっ」と、何かに気が付き、声を挙げた間宮さんに、携帯を覗き込まれた。
「森川さん、それって………」
「っ、」
慌てて携帯を閉じ、ポケットに仕舞う。
誰にも見られたくない、知られたくないものを彼女の視界から消し、大きく息を吐いた。
「……見てないよね?もし、見てしまったのなら、見なかった事にしてくれる?」
「……………」
私の待ち受け画面を見た人は、大抵ドン引く。
「うわぁ…」やら「キモッ……」等と口にしては、陰口を叩くようになる。
そして【オタク】というレッテルを貼られた私は、侮蔑の対象となるのだ。
「……森川さんって、覆面ライダー好きなの?」
「…………」
カァッ………と、体温が上昇するのを感じる。
追及しないで欲しいという空気を醸し出しているのに、間宮さんは空気を読む能力が他人より劣っているらしい。
「………誰にも言わないで」
「…………」
覆面ライダー……
主に幼稚園児位の男の子から絶大に支持されている、人気のヒーロー。
腕に嵌めた特別な腕輪を駆使して、覆面を被った正義のヒーローに変身する。
街の人々のピンチの際には、単車に乗って颯爽と現れ、正義の名の元にのさばる悪を成敗する王道のヒーローだ。
私が生まれる前から存在していて、シリーズも多い。
女の子として生まれておきながら、不思議と少女向けのアニメには一切興味を持たず、今に至るまで覆面ライダーだけを追い掛けてきた。
『理想の恋人は、覆面ライダー!』
………みたいな、痛い事は流石に言わないけれど、私の趣味を理解してくれる人が寄り添ってくれたらいいな、とは思う。
まぁ、トドみたいなデブスの私には、彼氏なんて出来た試しがないけれど。
寧ろ、こんな私を好きだと言ってくれる人が現れたら奇跡に近い。
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