売名恋愛

江上蒼羽

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まんぼうライダー⑤

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変身腕輪等のグッズやフィギュアを集める程のどっぷりなオタクではないにしろ、初代からの情報が事細かに記載された大名鑑は持っている。

保存用と鑑賞用の二冊。

部屋にポスターを貼ったりはしないけれど、ポラロイドやカード等は結構収集していたりも。

休日は、専ら撮り溜めたDVD鑑賞。


……こんなだから、中学時代にはクラス中からハブられ、今も友達は一人もいない。

好きな物を好きで、何故気持ち悪がられるんだろう…

同じ年頃の女子と興味を持つ対象が違うだけで、何故敬遠されるのだろう……

いつから、覆面ライダーファンをひた隠して生きてきたんだっけ…?

いつから、私は異端なんだって、羞恥心にまみれて生きるようになったんだっけ……?


「……っ…」


胸が、ぎゅうっ……と締め付けられるように、強く痛んだ。


「……あ、あの…森川さん…」

「………何?」


恐る恐るといった具合に声を掛けてくる間宮さん。

きっと、憐れみに満ちた視線をこちらに向けている事だろう。

もしくは、汚いものを見るような視線かもしれない。

どうせ、間宮さんも他の人と同じように私を見下し、笑うんだ……そう思ったら、目線は自然と下へ向く。


「……森川さん、ちょっとこれ見て?」


仕舞い込んだ携帯を守るように、背を丸める私の視界に、間宮さんの携帯が映り込んできた。


「え………」


見間違いかと思い、目を擦ってからもう一度確認する。


「これって……」


小さな画面の中で、半裸の美男子が美男子と絡み合っている。

アニメ調のイラストながら、艶かしい表情と生々しい構図で、度肝を抜かれた。


「………もしかして、所謂BLというヤツじゃ…」

「…………うん」


私が聞くと、間宮さんは恥ずかしそうに頬を染めながら控えめに頷いた。


「……好きなの?」

「…………うん。実は」


衝撃的だった。

可愛いと評判の間宮さんが、実は腐女子だったなんて……


「ジャンルは違うけど、私も森川さんと同類なんだ」

「………凄く意外」

「あっはは……結構どっぷりなんだよ」


はにかむ間宮さんに「尚更意外」と返しながらも、にわかに信じられないでいる。


「ボーイズラブは、男女の恋愛より儚く美しい気がするの。だからこそ私は大好きなんだけど、誰も理解してくれなくて……」


間宮さんは、小さく溜め息を吐いた。


「それどころか、キモいって言われて………これがきっかけで、中学の時にイジメに遇ったんだ。保健室登校の常連だったの」


笑いながら明るく話す間宮さんだったものの、その笑顔が逆に痛々しく感じた。


「一人ぼっちで誰も助けてくれなくて………死にたいって思った時もあったよ?」

「………そんなに酷いイジメだったんだ…」

「過去の事だけどね」


口調は明るいけれど、語られる内容からして、壮絶な体験をしたんだって分かる。


「二度と同じ目に遇いたくなくて、高校ではBL好きを隠して普通を装っていたけど、これが結構苦しくって……」


どこからどう見ても今時の女子高生なのに。

私みたいなオタク臭なんか一切しない、アイドル並みのルックスだというのに。


「森川さんと私の秘密ね」

「あ、あぁ……うん…」


間宮さんの意外な秘密を知り、妙な親近感が湧いた。

ふと、間宮さんが「あっ!閃いた!」と声を挙げる。


「コンビ名、まんぼうライダーなんてどう?」

「……は?」

「マンボウと覆面ライダーを合わせて、まんぼうライダー!中々いい感じ!」


私の意見も聞かずに「けってーい!」とはしゃぐ間宮さん。


「あぁそう…」


コンビ名なんてどうでもいい私は、溜め息を吐きながら間宮さんのノートを再読した。





学園祭までの間、間宮さんと何度も電話やメールのやり取りをして、綿密に段取りを確認した。

放課後は二人で実際にコントの練習。

ひたすら繰り返して、コントの流れを頭と体に叩き込む。


「衣装はこっちで用意するから。森川さんの服のサイズって………えっと、LL位?」

「…………そのもう一つ上」


間宮さんは、どう見てもSかM辺りだろう。

ウエストは58㎝以下なんだろうし。

体重なんか、きっと私の半分位しかないだろう。

中身は腐女子でも、見た目は可愛いから、一般的には許されると思う。

私なんか、もろオタクだし……

こんな可愛いコと並んでステージに立って良いものなんだろうか……?

何か、色々と落ち込む。
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