8 / 137
格差①
しおりを挟む誰かが学園祭での私と間宮のコント動画をネットに上げたらしい。
偶々それを目にした事務所の社長が養成所に入所しないかと話を持ち掛けてきた。
私と間宮は二つ返事でそれを受け入れた。
一年間の下積みの後、程無くして事務所の全面バックアップのもと、期待の新人として鮮烈デビュー。
間宮の可憐な見た目と、私のマンボウとトドを掛け合わせたような外見の格差が話題を呼び、注目を浴びた。
漫才の中身よりも外見格差の方が話題になり、私としては複雑ではあったけれど。
知名度が一気に上昇し、仕事がバンバン舞い込んで来た。
バラエティー番組に、旅番組、CM等々。
間宮は、学校の成績こそ今一つだったものの、頭の回転は早く、トークも巧み。
そのお陰で、トーク番組に頻繁に呼ばれるようになった。
初めこそガチガチに緊張していたけれど、場数をこなす度に緊張は解れ、芸人として様になってきた。
風格も出てきたような気も。
与えられる仕事は何でもやった。
過酷なロケで、苦手な絶叫マシーンに何度も乗らされたり、アマゾンの秘境を探索したり……
アフリカの何ちゃら族の村を訪れて芋虫を頬張ったりもした。
時には、粉まみれになったりもしたし、モザイクが掛かるような際どい衣装に身を包んだりもした。
番組プロデューサーからの要求は可能な限り全て飲み、視聴者からの期待に応えようと必死に仕事をこなした。
全ては、皆の笑顔の為に。
芸人らしく体を張って、張って、張りまくる私は、完全な汚れキャラで。
当然、可愛い相方の間宮とは比較の対象になる。
他の芸人からデブスを弄られ、おいしいと思いながらも、心では密かに泣いて。
でも、次第にその感覚は麻痺していった。
女性である事を完全に忘れ、仕事に没頭する姿は、最早、女性以上男性未満の新種の性別。
そんな私が出る番組のオンエアを見た母からは「もうやめてくれ、見ていられない」と何度も泣かれた。
まともな休みがなく、睡眠時間の確保も難しい程の忙しい毎日。
それでも、私は充実していた。
デビューして、一年目、二年目と、順調に実績を積み重ね、世間一般に名が知られるようになると、簡単に街を歩けなくもなる。
「ねねっ、あれって、まんぼうの森川じゃない?」
「うっそ、マジで?」
「うわっ、テレビで見るよりデカイ」
道行く人に指を差され、マスクの下でほくそ笑む。
あぁ、私って有名人なんだ……と。
優越感に浸りながら、眼鏡をプラスして、わざとらしく変装をしてみる。
「握手して下さ~い」
「一緒に写真撮って下さい!」
忽ち周りを囲まれ、行く手を阻まれる。
握手や記念撮影に快く応じれば、喜ばれ、好感度も上がる。
時には、感極まって泣かれてしまう事もあった。
嬉しそうな姿に自分も嬉しくて。
私は完全に、人気者な自分に酔っていたんだと思う。
現実を突き付けられたのは、デビューから三年目の事だった。
キッカケは、とあるビューティー特番への出演。
視聴者が好む、健康とダイエットを番組テーマに据え置き、視聴率を狙った特番だった。
その番組の中で、私はダイエットをするよう命じられたのだ。
【人気の女芸人、奇跡のダイエット】
大袈裟なサブタイトルを付けられ、医療機関、美容サロン全面協力の元、決死のダイエットをする事に。
番組の中でダイエットの経過とビフォーアフターを報告する為に、常時カメラが回され、間食を制限された。
プライバシーが一切なく、ストレスは少なからずあったにはあったけれど
食事の管理は栄養士がやってくれるし、運動面はジムのインストラクターがついてるし、番組のお金でエステに行き放題だったし……
そんなに苦ではなかった。
半年で体重を半分に出来なければ芸人引退、ダイエットに掛かった金額全額負担という、公約さえなければ。
0
あなたにおすすめの小説
マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】
remo
恋愛
あなたにとっては遊びでも、私にとっては、…奇跡の夜だった。
地味で平凡で取り柄のない私に起きた一夜のキセキ。
水村ゆい、23歳、シングルマザー。
誰にも言えないけど、愛息子の父親は、
今人気絶頂バンドのボーカルなんです。
初めての恋。奇跡の恋。離れ離れの恋。不倫の恋。一途な恋。最後の恋。
待っている…
人生で、一度だけの恋。
【完結】ありがとうございました‼︎
恋い焦がれて
さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。
最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。
必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。
だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。
そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。
さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。
※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です
※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません)
※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。
https://twitter.com/SATORYO_HOME
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる