売名恋愛

江上蒼羽

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格差①

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誰かが学園祭での私と間宮のコント動画をネットに上げたらしい。

偶々それを目にした事務所の社長が養成所に入所しないかと話を持ち掛けてきた。

私と間宮は二つ返事でそれを受け入れた。



一年間の下積みの後、程無くして事務所の全面バックアップのもと、期待の新人として鮮烈デビュー。

間宮の可憐な見た目と、私のマンボウとトドを掛け合わせたような外見の格差が話題を呼び、注目を浴びた。

漫才の中身よりも外見格差の方が話題になり、私としては複雑ではあったけれど。



知名度が一気に上昇し、仕事がバンバン舞い込んで来た。

バラエティー番組に、旅番組、CM等々。

間宮は、学校の成績こそ今一つだったものの、頭の回転は早く、トークも巧み。

そのお陰で、トーク番組に頻繁に呼ばれるようになった。

初めこそガチガチに緊張していたけれど、場数をこなす度に緊張は解れ、芸人として様になってきた。

風格も出てきたような気も。



与えられる仕事は何でもやった。

過酷なロケで、苦手な絶叫マシーンに何度も乗らされたり、アマゾンの秘境を探索したり……

アフリカの何ちゃら族の村を訪れて芋虫を頬張ったりもした。

時には、粉まみれになったりもしたし、モザイクが掛かるような際どい衣装に身を包んだりもした。

番組プロデューサーからの要求は可能な限り全て飲み、視聴者からの期待に応えようと必死に仕事をこなした。

全ては、皆の笑顔の為に。

芸人らしく体を張って、張って、張りまくる私は、完全な汚れキャラで。

当然、可愛い相方の間宮とは比較の対象になる。

他の芸人からデブスを弄られ、おいしいと思いながらも、心では密かに泣いて。

でも、次第にその感覚は麻痺していった。

女性である事を完全に忘れ、仕事に没頭する姿は、最早、女性以上男性未満の新種の性別。

そんな私が出る番組のオンエアを見た母からは「もうやめてくれ、見ていられない」と何度も泣かれた。



まともな休みがなく、睡眠時間の確保も難しい程の忙しい毎日。

それでも、私は充実していた。

デビューして、一年目、二年目と、順調に実績を積み重ね、世間一般に名が知られるようになると、簡単に街を歩けなくもなる。


「ねねっ、あれって、まんぼうの森川じゃない?」

「うっそ、マジで?」

「うわっ、テレビで見るよりデカイ」


道行く人に指を差され、マスクの下でほくそ笑む。

あぁ、私って有名人なんだ……と。

優越感に浸りながら、眼鏡をプラスして、わざとらしく変装をしてみる。


「握手して下さ~い」

「一緒に写真撮って下さい!」


忽ち周りを囲まれ、行く手を阻まれる。

握手や記念撮影に快く応じれば、喜ばれ、好感度も上がる。

時には、感極まって泣かれてしまう事もあった。

嬉しそうな姿に自分も嬉しくて。

私は完全に、人気者な自分に酔っていたんだと思う。



現実を突き付けられたのは、デビューから三年目の事だった。

キッカケは、とあるビューティー特番への出演。

視聴者が好む、健康とダイエットを番組テーマに据え置き、視聴率を狙った特番だった。

その番組の中で、私はダイエットをするよう命じられたのだ。




【人気の女芸人、奇跡のダイエット】




大袈裟なサブタイトルを付けられ、医療機関、美容サロン全面協力の元、決死のダイエットをする事に。

番組の中でダイエットの経過とビフォーアフターを報告する為に、常時カメラが回され、間食を制限された。

プライバシーが一切なく、ストレスは少なからずあったにはあったけれど

食事の管理は栄養士がやってくれるし、運動面はジムのインストラクターがついてるし、番組のお金でエステに行き放題だったし……

そんなに苦ではなかった。

半年で体重を半分に出来なければ芸人引退、ダイエットに掛かった金額全額負担という、公約さえなければ。
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