売名恋愛

江上蒼羽

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売名計画浮上①

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バイトを終えて、何気無く携帯を見ると、珍しく着信が1件とLINEメッセージが1通入っていた。

着信の主は、マネージャーの川瀬さんから。

LINEも彼女からだった。

内容を確認すると、バイトが終わり次第連絡を寄越せとの事だった。

久し振りの仕事かな?と、気持ちが高ぶったものの…

すぐに、もしかしたら嫌な話かもしれない……と気分が急降下。

川瀬さんの番号表示を前に固まる。

衰退し、ろくな稼ぎのない人間を事務所はいつまでも抱えておかないだろう。

本職より、副業の方がメインになってるのだから、いい加減契約を解除されても仕方がないと思う。

怖くて発信出来ずにいると、痺れを切らしたように着信が入る。

画面に表示された名前は、川瀬マネージャーの名前。


「…………」


思わず息をのんだ。

そして、一度深呼吸をしてから、恐る恐る通話の表示をタップする。



『もしもしー』


私の気分の沈み具合に反して、マネージャーの声は明るい。


「お疲れ様です……」

『そろそろバイト終わる頃かと思って電話したんだけど、電話に出たって事は、今帰りー?』

「あ、はい……」


何を言われるのだろう……?

胸の辺りがズシンと重い。


『あんたと今後の事で話し合いたいのよ。これからちょっと会える?』


心臓が一際大きく音を立てた。


「今後の………ですか?」


今後の……となると、やはり今の私の頭の中を占める事柄である事は間違いなさそうだ。

そう落ち込みかけた時


『そう。ちょっと良い話があんの。まっ、あんた次第だけどね』


川瀬さんが神に思えた。




川瀬さんに指定された創作和食のお店に到着すると、奥の個室へと案内された。


「あ、森川お疲れー!」

「お疲れ様です」


マフラーと帽子を取り、マスクを外す。

と、ここでテーブルの上にセッティングされた箸が一膳多い事に気付いた。


「………間宮も来るんですか?」

「ううん、間宮は来ないよ。明日早朝ロケ入ってるから」

「…………あ、そうですか…」


どこへ座れば良いのか躊躇う私に、川瀬さんは自分の隣を指定した。


「間宮が来ないなら、じゃあ誰がいらっしゃるんですか?」


売れっ子の間宮と、バイトに明け暮れる自分の差に落ち込みながら聞くと、川瀬さんがニッコリ笑って


「あんたにとって、救世主になるかもしれないお方」


と、一言。


「……救世主、ですか?」


当然、私は首を傾げるしかない。


「ちょっと遅れるみたいだから、先に始めてくれって」


操作していた携帯を仕舞った川瀬さんは、店員を呼びつけ、料理を運ぶよう頼む。

それからアルコールも。


「帰りはタクシー呼んであげるから、あんたも飲みなさいよ?」

「え……あ、はい…」


川瀬さんは、救世主が来ると言ったけれど。

誰が来るのか分からない上、どのように事が運ぶかも予測は不可能で。

ただ、ただ不安でしかない私は、川瀬さんが頼んでくれたビールに口をつけるのを躊躇ってしまう。

こんな状況では、気持ち良く酔えないだろうし。





入店から30分程経過した頃

不意に部屋のドアがノックされた。

救世主とやらが到着したらしい。

一体その正体は何者?と警戒し、身構える私の代わりに、ホロ酔い状態になっている川瀬さんが「どーぞー」と、入室を促した。

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