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壊れた心と拒絶②
しおりを挟む今回の件で、改めて芸能界は残酷な世界だと認識した。
視聴率を取る為なら、人を平気で陥れる。
話題を集める為に、平気で人の心を踏みにじる。
特に、芸人に対してそれが顕著だ。
どんなに過酷な事をさせても、どんなに酷い仕打ちを受けさせても、おいしいと思ってるんでしょ?と言わんばかりに弄り倒して。
芸人だからって、鋼の心を持っている訳じゃない。
芸人だって、当たり前に傷付くし、人知れず泣いている。
中には、心を病む人だって居るのだから。
「………ううぅ~…」
泣いても泣いても、心に巣食った負の感情は消えない。
しつこい油汚れみたいに、こびり付いたまま剥がれやしない。
仕事がなくなり、一般人のような生活を送る羽目になっていた売名以前。
境遇をどんなに惨めに思っても、引退の言葉が頭に浮かぶ事はなかったのに……
今は、その二文字が頭にうっすら浮かんでいる。
また輝きたいと切に願っていた私。
フトシの策略のお陰で、現在ピッカピカに輝いているけれど……
これが、私の欲していた輝きなのかは………自分でも良く分からない。
翌朝は、酷い二日酔いと瞼の腫れに苦しめられた。
激しい頭痛と胸焼け。
酸っぱい胃液が喉元辺りまで上がってきている所為か、唾まで酸味がかっていて不快感が半端ない。
瞼が重く腫れ上がっている為に、目を開くのさえ億劫に感じる。
「う、うぅ~……ぎぼぢ悪ぅ…」
大好きな覆面ライダーのDVD鑑賞で傷付いた心を癒すつもりが……
ライダー変身時の掛け声と、ピロピロ鳴る効果音が、二日酔いの頭に過激に響いて、鑑賞を断念。
オリジナルサウンドトラックも同じ理由から諦めた。
こうなれば、覆面ライダー公式ガイドブックを眺めるしか選択肢は残されていないけれど……
それすら面倒に思えて、布団から出られずにいる私の枕元で、スマホが甲高い音を鳴らした。
「い、たたた………誰だよ、こんな時に…」
画面には、ショートメールのアイコンが表示されている。
知り合いや身内との主な連絡方法は、LINEもしくは、メール。
ショートメールをやり取りする間柄の知り合いは、記憶している限りでは誰もいない。
誰だろう?と首を傾げながら、スマホを操作する。
送信元は、電話帳未登録の11桁の番号。
「………っ、」
表示された文字に、思わず顔を顰める。
同時に、休止していた涙腺が稼働し始めた。
【忍足です
昨日は大変申し訳ありませんでした
頂いたチョコ、とてもおいしかったです
ありがとうございました】
どの面下げて…………が、正直な感想だった。
直に、もう一通ショートメールが届く。
【今までのお詫びとチョコのお礼がしたいので、もう一度お会い出来ませんか?
連絡待ってます】
滲み出た涙の所為で、画面の文字が歪む。
ショートメールの最後の一文に、一瞬期待し掛けた自分を情けなく思いながら、スマホを放った。
忍足さんからのLINEには、どんなに時間が掛かっても律儀に返信していた。
既読スルーなんか一度もした事なかったけれど……
今回、初めての既読スルー。
だって、ショートメールを送って来たのが忍足さん本人なのかが分からないから。
もしかしたら、ホンコンシューズのフトシが送ってきたのかもしれないし。
実は、終わったと見せ掛けて、まだドッキリが続いているかもしれない……そう思ったら怖くて……
もう私は、誰もかも、何もかもが信じられなくなった。
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