売名恋愛

江上蒼羽

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壊れた心と拒絶①

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よくあるドラマの展開では

主人公が失意のドン底にいる時に、偶々居合わせた優しい誰かが、何も言わずにそっと胸を貸してくれたり、心が落ち着くまで傍に居て慰めてくれたりする。

けれども、現実は甘くない。

都合良く誰かに遭遇する事なんかないし、タイミング良く電話が掛かって来る事もない。

第一、心が弱った時に寄り添ってくれる優しい人なんか、私には居ない。



『よく頑張ったね……無理しないで良いよ、気が済むまで泣いて…』



なんて宥めながら頭を撫でてくれる人なんか、どこにも居やしないのだ。

その前に、自分をドラマの主人公に置き換える事すら烏滸がましい。

ドラマの主人公みたいな華やかさすら私にはないのだから……

そんな私を癒してくれるのは、偶々冷蔵庫に居合わせた350mlの発泡酒と、チーズカマボコだけ。


「うぐっ、うぇっ、うっ……」


泣くか飲むか食うかのどれかにすればいいのに、その3つを一度にこなそうとするが為、噎せるし詰まるし口の中はしょっぱいし……で、大変な事になっている。

部屋には、空になった缶とチーカマのビニールが散乱している。

ゴミ箱周りには、丸めたティッシュの山が出来、その頂上には空のティッシュ箱が鎮座している。

更には、衝動的に開けてしまったスナック菓子の袋までも出現し、普段の小綺麗さが嘘のように、軽い汚部屋と化している。


「うっ、ううっ……ぐぅっ………ふん、ズビーッ!!」


明日はオフ。

予定は何もない。

だから、二日酔いでへろへろになろうが、泣き過ぎて目が腫れようが何の支障もない。

思う存分泣いて泣いて、涙と一緒に今日までの出来事を洗いざらい流して、元気を取り戻そうと思う。

明日は、大好きな覆面ライダーのDVDを観て、覆面ライダーのオリジナルサウンドトラックを聴いて傷を癒す予定だ。

まだヒリヒリジンジン疼く心の傷。

この深い傷が完全に治癒する事は、多分ない。

仮に、完璧に近い状態まで治す事が出来たとしても、それには相当な時間が掛かりそうな気がする。

止めどなく流れ出てくる涙は、土砂降りのように勢いが増すばかりで、止む気配は一向に訪れない。

下手すると、虹まで出現しそうだ。

大量の涙の流失で渇いた体を発泡酒で潤し、そこからまた水分を垂れ流す……という悪循環。


「うぅ………ふぐっ、うっ…」


ドッキリを企てたフトシを責め、仕掛人の忍足さんを責め……

更には、見当違いの読みで私を焚き付けた間宮を責める。

勿論、愚かな己もキッチリ責めた。


「うっく、うっ、ひくっ……」


どうして、ドッキリに気付けなかったんだろう…

私はどこまでマヌケなのだろう……と。

最初の時点で、何かを感じ取るべきだった。

おいしい話には裏があると疑って、身構えていれば良かった。

そしたら、忍足さんを好きにはならなかっただろうし、心を瀕死状態まで傷める事もなかった気がする。

きっと、落とし穴に落ちても「うわ~、すっかり騙されました~」と大笑しながらオチを受け入れられただろう。
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