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衝撃的オチ⑤
しおりを挟む「もう、本当に私って馬鹿。忍足さんみたいな人が、私なんかをまともに相手する訳ないのに……思い上がりも甚だしいですよね」
考えてみればすぐ分かる事だ。
忍足さんみたいな、イケメン俳優という括りの人が
女性に不自由していなそうな人が、女芸人として馬鹿やってる私なんかに好意を寄せる筈ないのに。
それを、何で勘違いしちゃったんだろう……
騙されてるだけなのに、一人で勝手に舞い上がって、ドキドキ胸を踊らせたり、弾ませたり……
恋に落ちている自分に酔っていただけかもしれない。
「物凄く良い笑いのネタになりましたよ。今後暫くは今回のドッキリネタで食べて行けそうです。ありがとうございました」
喉の奥から、何かが込み上げてきた。
それをぐっと飲み込む。
「忙しい合間を縫ってでも会いたい好きな人が、ほんの一瞬で顔も見たくない程大嫌いになるって事………あるんですもんね」
「……」
ふと、コートの裾から控えめに覗き出た、お気に入りのワンピースが視界に入り込んだ。
落とし穴に落ちた拍子にどこかに引っ掛けたのだろう。
裾の一部がスリットみたく裂けていた。
「あの、森川さん………今度改めて、話す機会を頂けませんか?」
「……」
頬を抓るのをやめ、代わりに今度はワンピースの裾を摘まみ上げる。
「お忙しいのは承知です。でも、何とか時間を作ってーーー…」
「このワンピース……」
忍足さんの言葉を遮るように口にした言葉に、彼が「……え?」と聞き返して来る。
「………可愛くてお気に入りだったのに……結構高かったのにな……破けちゃった…」
「え、そんな……俺、弁償しますよ」
忍足さんの申し出を無視して「残念だな……」と呟く。
「落ちた衝撃でお団子もグチャグチャ………あーもう、最悪…」
殆ど涙声になりつつあるのに、これでもかってくらい明るく言う。
「良かったですね、きっとこのドッキリは芸能界を揺るがす大きな話題になりますよ。そしたら、またお仕事増えますね」
「いや、その前に森川さん……ワンピースをーーー…」
忍足さんが言い切る前に、勇気を出して体を反転させた。
照明の乏しさが、私の表情を誤魔化してくれるんじゃないかと信じて。
眉間に皺、顎に梅干しを拵えながら、私を陥れた仕返しとばかりに、悪意をふんだんに込めて言ってやる。
「私………すっごく、良い踏み台になったでしょ?さぞかし踏み心地良かったでしょ?」
予想外に忍足さんが私のすぐ傍に居た事に驚いたけれど、ここでブレちゃいけない。
これが最後だって分かってるから、言いたい事を思う存分ぶつけてやりたい。
「恋愛経験はないのに、ビジネスキスの回数だけは無駄に増えてく一方で……次こそは、ちゃんとしたキスを経験したいです」
「っ、…」
何を思ったのか、忍足さんが私の腕を掴んだ。
「森川さん、あれは……」
もう何も言わせないとばかりに、私は「あ、因みに……」と割り込む。
「私、忍足さんみたいな人、正直、タイプじゃないです。どっちかと言えば、芹沢さんの方が好みですから」
誰がどう聞いても、ただの負け惜しみにしか聞こえないだろうけれど、はっきり言い切ってやった。
それから、痛い程腕に食い込む彼の手を強く振り解く。
「忍足さん、素晴らしい演技でした。今後のご活躍を楽しみにしてます」
「待って森川さん、話をーーー…」
詐欺師の言葉に聞き耳なんか持ちたくない。
もう騙されたくない、傷付きたくないと嘆く心が、既に強固なシールドを築き始めている。
「もう話す事は何もありません!お疲れ様でしたっ!!」
最後の最後で堪えていた涙を塞き止め切れず、大粒の滴をボタボタ落として、私は逃げるようにその場を去った。
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