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波紋と余波④
しおりを挟む余計な気を利かせた川瀬さんを恨んでいる私に、彼が言う。
「すみません、突然…」
それに「いーえ」と、刺々しく返してから、元居た場所に戻る。
貴方と話す気はありませんオーラを放ちながら、再度雑誌に目を向けていると、彼が近くに座る気配を感じた。
「すみません………どうしても、森川さんと話がしたかったので」
「………そうですか」
私は話す事はありませんけど……と、心の中で付け足した。
「中々話す機会を頂けないので、こちらから出向いた次第です」
「………それ、嫌味ですか?」
ツンケンした態度を取るのは、芹沢さんが言った言葉を変に意識している自分を悟られない為。
忍足さんが私を好きだとか絶対嘘に決まっているけれど、それでも少しだけドキドキしている馬鹿な私がいる。
こんなんだから、騙されるのだろうな……と思う。
きっと、人に付け入られるような隙が多過ぎるのだろう。
「恋愛映画の主演、決まったそうで。良かったですね」
毅然とした態度を意識しながら言うと、彼は「お陰様で」と、柔らかい口調で返してくる。
「森川さんのお陰です。感謝してます」
「………私じゃなくて、ドッキリのお陰じゃないんですか?」
嫌味っぽく言うと、彼は小さく吹き出した。
「そうですね……あのドッキリがなければ、今の自分はありません」
「………なら、最初っからそう言えばいいのに」
不貞腐れるような態度を取る私に構わず、彼が少し距離を詰める。
「……映画の原作となった漫画を読んでみたんですよ」
「………は?」
いきなり何を言い出すんだ?と、顔を向ければ、うっかり忍足さんと視線が絡んでしまう。
嬉しそうに目を細めた彼にきまり悪くなり、すぐまた雑誌に視線を落とした。
「それが何か?」
動揺を悟られないよう、必死に平静を装う私に、彼は言う。
「女子の妄想力の凄さに驚きました」
「………何を言いたいんです?」
この時点で、覆面ライダーの記事なんか頭に入って来ていない。
「少女漫画の世界は、男を美化し過ぎです」
「はい?」
頭の中に無数の?を生やしている状態の私は、彼の言わんとしている事がさっぱり分からない。
意図を汲み取れる気配すら感じない。
「俺が演じる、高校の数学教師………完璧過ぎるキャラクターで戸惑いましたよ。頭が良くて、スマートで……女心を熟知している…」
「………」
「まぁ……女子は、こういうのが好きなんだな……ってのはよく分かりましたけど」
反応に困る私に構わず、忍足さんが独り言のように続ける。
「現実の男は完璧じゃない。実際は、打算的でズル賢くて………欲にまみれてる」
言葉の最後に、忍足さんが「……俺みたいにね…」と、自虐的に付け加えた。
彼がどんな言葉を望んでいるのか分からずに、戸惑うだけしか出来ないでいる私は、雑誌に夢中な振りでその場を凌ごうと試みた。
けれども、忍足さんはそれを阻止する。
取り上げられた雑誌は、パタンと閉じられ、彼の手中に収まった。
「ちょっと……何するんですか?」
抗議する私に対して、忍足さんは真顔。
怖いくらいのその表情に、全身が強張り、冷や汗が滲み出る。
「ついでに言うと、嫉妬深く、独占欲が強い」
「………だから、何を言いたいんですか?」
さっきから意味の分からない事を淡々と喋っている忍足さんに、ついには苛立ちを覚え始める。
回りくどい事を言われても、理解が追い付かないばかりか、逆に混乱するだけ。
さっさと核心を突いて貰いたい。
「………お気に入りのオモチャを奪われた子供のように、泣いたり、癇癪を起こしたりはしませんが、気が狂いそうにはなってます」
「………は?」
忍足さんの手が私に向かって伸びてくる。
「芹沢 流希との記事は、どこまでが本当ですか?」
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