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波紋と余波③
しおりを挟む『仲間が本気で好きになったコにーー…』
芹沢さんの言葉を素直に受け取れば、誰かが私を好いているという事になる。
仲間って誰だ?と考えて、すぐに脳裏に浮かんだのは、あの彼の顔。
まぁ、芹沢さんと私の共通の知り合いといえば彼しかいないのだけれど…
普通に有り得ないだろ……と、あっさり棄却。
忍足さんが私を好きになるなんて、絶対ない。
見た目が良いわけでもなく、性格が良いわけでもなく……
こんな何の取り柄もないどころか、覆面ライダーオタクを併せ持つような私を好きになってくれる筈なんかある訳がない。
どうせ、面会を拒み続けて、彼に言い訳を披露させる機会を与えない私に痺れを切らし、芹沢さんを使ってその気にさせようって魂胆なのだろう。
甘い言葉で喜ばせて、私を操作しようなんて、私は随分と馬鹿にされたものだ。
「………もう騙されるもんか」
一人呟き、下唇を噛んだ。
翌日、ドッキリで大変お世話になった、ホンコンシューズの番組に急遽出演が決まった。
しかもピンで。
何でも緊急企画だという。
何となく、忍足さんとの出来事を穿り返され、芹沢さんとの記事を弄られるのが目に見えている。
以前、女性問題で世間を賑わせた男性芸人が緊急企画と題された回でめったくそに弄られている様が放送されていた。
恐らく私は、その二番煎じになるのだろう。
「………はぁ」
憂鬱で溜め息が止まらない。
用意された衣装に身を包み、ヘアメイクを施される。
いつものように、頭の天辺で真ん丸のお団子が作られれば、まんぼうライダー森川の完成。
収録待ちの間、狭い楽屋で川瀬さんとは二人っきり。
相方間宮のスケジュール確認や、事務所への報告や、仕事先へのアポ……等々。
携帯片手に忙しく立ち回る川瀬さんとは対照的に暇してる私。
特にやる事もないので、暇潰しと気晴らしを兼ねて、覆面ライダー特集が掲載された雑誌を開く。
と、その時、コンコン……と、楽屋のドアをノックする音が…
「……失礼します」
入ってきた人物を見て、息が詰まった。
「こんにちは、お久し振りです」
柔らかい笑みを浮かべて会釈するのは、私の天敵、忍足 慧史。
数ヵ月前までの知名度の低さが嘘みたく、彼は今や人気俳優の一人として芸能界に君臨している。
心なしか纏うオーラが以前と違うような気がするし、しばらく会わない内に格好良さに磨きがかかったような気もする。
認めるのは癪だけれど。
「あら、忍足さん、お久し振りですね」
突然の敵の訪問に呆けている私に代わり、川瀬さんが応対する。
「忍足さんもこの局でお仕事なんですか?」
「えぇ、先程一仕事終えた所なんです。森川さんがいらしてると小耳に挟んだもので、ご挨拶に参りました」
不意に彼と目が合い、直ぐ様逸らす。
別に挨拶とかいらないのに……と、心の中で毒づきながら、雑誌のページを捲る。
「お忙しいのに、わざわざありがとうございます」
「いえ…」
私には一切関係ない、と言いたげに雑誌に没頭していると、川瀬さんが「森川」と呼ぶ。
それに「何ですか?」と顔を上げれば、すぐ近くにいた筈の川瀬さんがドア付近に移動していた。
「私、飲み物買いに行ってくるわ」
「え………」
すかさず私も立ち上がる。
「それなら私も一緒にーー…」
「行きます」と言う前に、川瀬さんが呆れ口調で遮る。
「なーに言ってるの。あんたは、忍足さんの相手をしてなさい」
「………はい?」
無情にも冷たくドアは閉められた。
途端に、一気に静まり返る室内。
しかも、きまりの悪さ付き。
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