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甘い余熱と余韻②
しおりを挟む服を身に付ける私の傍らで、忍足さんが気怠そうに寝転がっている。
目のやり場に困るよなぁ……と、勝手に赤面していると、彼が徐に上体を起こす。
「今後、ビジネスキスは一切禁止って事で良い?」
「え……?」
意味が分からずキョトンとすると、彼が苦笑しながら言う。
「他の男とキスしないでって事。あーゆーの本気で笑えないから」
言い逃げるように「あー恥ずかし」と布団を被る忍足さん。
そんな様子が、何だか可愛く思えた。
「禁止って言われても………仕事なんだし、仕方ないじゃないですか。商売上がったりです」
布団の中から「とにかく、禁止」とくぐもった声が聞こえてきた。
「……それを言ったら、忍足さんこそ他の女優さんとキスシーンあるじゃないですか」
腑に落ちないとばかりに呟くと、忍足さんが布団の中から顔だけ出す。
「俺は、ちゃんと仕事と割り切ってやってるから」
「私だって割り切ってます」
自分は良くて、私は駄目って……
フェアじゃない気がする。
「……案外、我儘なんですね」
「………」
忍足さんの隣に寝そべって、覗き込むと、彼はプイッと顔を背けた。
クール振っている割りには、意外と子供染みた一面もあるらしい。
新たな一面に触れ、新鮮さを感じていると、話を逸らすように忍足さんが「……そうだ」と、声を挙げる。
「あのワンピース着て、またどっか行こうよ」
「あのワンピースって……落とし穴に落ちた時の、ですか?」
「うん、あれ。本当に良く似合ってて可愛かったから…」
「どこ行きたい?」と問われて、暫し悩むも、浮かんできたのは、一番初めのデートのワンシーン。
「……また、覆面ライダーショー観に行きたいって言ったら引きますか?」
忍足さんは、呆れたように「好きだね」と笑ったものの、すぐに「いいよ」と快諾。
「一緒に観に行こう。いつにする?…………あ、でも…」
「はい?」
布団の中から忍足さんの手が伸びて来て、私の髪を優しく撫でる。
「二人で間宮さんにお礼を言いに行くのが先だったね」
「あ、そうですね」
「何なら、間宮さん達とダブルデートってのもありじゃない?」
「え………腐女子の間宮と一緒だと、マニアックなスポット巡りになるかもしれませんよ?」
「あはは……いいね、新鮮で」
そのまま引き寄せられ、唇を重ねる。
柔らかい感触と程好い体温。
擽ったくもあり、幸せで。
甘い余熱に浮かされ、余韻に浸る夜。
24年間生きてきた中で、一番心が満たされた夜だった。
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