売名恋愛

江上蒼羽

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おまけエピソード[相方間宮編①]

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久し振りのオフ。

特に予定もなく、家でダラダラしているつもりが、相方の森川からの連絡で外出する事に。


「ごめんね、間宮……付き合わせちゃって…」

「ん?いいよ~全然。久し振りだよね、プライベートに二人で出掛けるの」


目深に被った帽子にだて眼鏡で変装して向かった先はシアター。

何でも、先日公開されたばかりの恋愛映画が観たいらしい。

理由は森川の彼氏が主演を務めているから。


「すっごい混んでるね~」

「うん、席良いとこ取れなかった……」


がっくり項垂れる森川。

周りを見渡せば、若い女性を中心とした大勢の人。

私は、銅魂の実写映画の方が観たかったな……なんて言葉を必死に飲み込む。

実写キャストに不満はありながらも、カップリングを妄想したら楽しいだろうし。


「てか、忍足さん、チケットくれなかったの?それか、試写会に招待するとか」


普通なら、自分の主演映画の公開に先駆けて、彼女にチケットをプレゼントしたりすると思うんだけど…

私の疑問に、森川の顔が曇る。


「うん……何でか知らないけど、慧史くんが観なくていいって言ってて…」

「へぇ~……観なくていいって……何でだろ?」

「さぁ……?」


お互いに顔を見合わせ、首を傾げる。

女子高生や女子大生を中心に大ヒットしている映画。

ましてや、自分の初主演映画とあれば、彼女にも観せたいと思う筈。

なのに、観なくていいって……

どうしてだろう?



その疑問の答えは、映画を観たらすぐに分かった。


『先生……あたし…』


頬を赤く染め、瞳を潤わせるセーラー服の女の子。

忍足さんは、彼女の頭をそっと撫でた後、ゆっくり顔を近付ける。

二人の唇が触れ合った瞬間、隣に座る森川の肩が震えたのを視界の端に捉えた。

余韻を残しながら、忍足さんがそっと唇を離す。


『………教師失格だな…』


たった一言呟いた後、再度重なる唇。

触れるだけのキスが徐々に深くなっていく。


「っ、」


森川が声にならない声を挙げ、両手で目を覆った。

演技とはいえ、彼氏の濃厚なラブシーンは見るに耐えないらしい。


…………なるほど。

これは森川に観せたくないよね…




映画がハッピーエンドで終わると、シアター内が明るくなる。


「………忍足さん、正解だよ」


隣で俯く森川。


「これは彼女に観て欲しくないわ」


映画の感想は、私的に微妙。

ストーリーが頭に入ってこない程、キスシーン、ハグシーンが多かった。

恋愛脳な女子には受けるだろうけど。


「…………慧史くん……10回もキスしてた…」

「いや、まぁ、忍足さんは仕事だし」

「分かってるけど………やっぱショック…」


彼氏と他の女の子とのキスシーンが相当堪えたらしい森川は、よろめきながらイスから立ち上がる。


「うん、でもさ……森川はキスより凄い事、彼としてんじゃん?」


落ち込む相方を立ち直らせようと言った言葉に、森川の膝がガクッと折れた。


「ちょっ……間宮、何て恥ずかしい事を…」


森川の顔が真っ赤に染まる。


「えー?だって、この間もお泊まりして、したんでしょ?」

「っ………やめてよ、間宮……恥ずかしいじゃん」


女になったのに、相も変わらず森川からウブさが抜けない。

そういう所が可愛いし、忍足さんも堪らないんだろうなって思う。


「もう慣れた?」

「うぅ~……聞かないでよ」


顔を隠すように、帽子を深く被り直した森川。

照れている姿も愛くるしい。


「森川ってばかわいー!」

「もう、間宮の馬鹿。からかわないでよ…」


コンビを組んで6年。

ウブな相方をからかうのは、最早日常生活の一部だったりする。

だって、いちいち反応が可愛いんだもの。
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