売名恋愛

江上蒼羽

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おまけエピソード[相方間宮編③]

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「お疲れー」


待ち合わせた店の個室に案内され、芹沢さんの音頭で乾杯をする。


「素良、これ一口食べてみなよ。旨いよ」

「あ、ありがとう。慧史くんもこれ食べてみて」


早速向かい側でイチャつき出した相方カップル。

相思相愛だったくせに、意地っ張りで鈍ちんの森川の所為でくっつくまでに散々時間が掛かったこの二人。

くっついた途端、見てるこっちが恥ずかしくなる程、甘々な雰囲気を漂わせている。

胸焼けも良いとこって感じ。


「今日は二人で何してたの?」


芹沢さんの問いに「え……その…」と口ごもる森川に代わり、私が答える。


「森川が観たい映画あるって言うから、二人で観に行って、その後買い物してたんですよ」

「へぇ、どんな映画?面白かった?」

「忍足さんの初主演映画。キスシーンばっかりで、観てて恥ずかしかったです」

「ぐっ………ごほっ…」


わざとらしく言うと、向かい側で忍足さんが噎せた。


「だ、大丈夫?」


心配そうに彼の背中を擦る森川。

私は、してやったりとほくそ笑む。


「………素良、俺、観なくていいって言ったよね?」


グラスに入った飲料を流し込んで、落ち着きを取り戻した忍足さんが森川を睨む。


「ご、ごめんなさい……どうしても観たかったから…」


慌てふためく森川に、芹沢さんが「そりゃ、観るなって言われたら観たくなるよね」と優しいフォローを入れる。


「はぁ、最悪…」


頭を抱えて溜め息を吐く忍足さん。

森川に観られたのが相当ショックだったらしい。

彼の姿に笑いを堪えながら「でね」と、続ける。


「森川ったら、忍足さんのキスシーン観てヤキモチやいちゃって……可愛かったんですよ~」

「ちょっ………間宮!余計な事を…」


真っ赤な顔で抗議する森川を見て、忍足さんが「そうなの?」と、目を見開いた。

森川が顔を赤くしたまま黙って頷くと、忽ち忍足さんの口角が引き上がる。


「素良………嬉しいな」

「いや、その………」


嬉しそうに目を細める忍足さんと、見つめ合う森川。

見事に二人の世界へ突入した。

見ている側は、かなりこそばゆい。


「あーあー……二人のお陰で飯が甘ったるいわ」


芹沢さんが嫌味っぽく言いながら、手羽先餃子にかぶり付いた。


「同感ですね」


彼に同調して、私も竜田揚げを口に放り込む。

心なしか、室温も上昇したような気がする。


「ご、ごめん…」


森川と同じように顔を赤くした忍足さんは、照れを誤魔化すようにグラスに口を付ける。

まるで学生カップルみたいに初々しい二人。

微笑ましいし、森川の幸せは嬉しいけど、何となく面白くない。



相方を奪われたみたいで、寂しい。

忍足さん相手に嫉妬している自分が悔しいし、馬鹿みたいだ。

でも、ついつい我慢出来ずに意地悪を言いたくなる。


「本当、ラブラブだね、二人って」

「え……やだ、間宮ってば」


照れながらも、森川が嬉しそうにはにかむ。


「森川にとって、忍足さんが初めての彼氏な訳だけど……このまま忍足さんしか知らないで終わるのって、勿体なくない?」


忍足さんに対する宣戦布告とも取れる私の言葉に、森川はキョトン。

代わりに忍足さんが反応を示す。


「間宮さん……それ、どういう意味?」


口元は笑っていながらも、目は笑っていない。

内心、カチンときたらしい。


「いや~ね、色んな人と付き合ってみるのも経験かなって。人生は一度きりなんだし~」

「素良には必要なくない?」

「うん、でも、男は忍足さん一人じゃないし」


忍足さんの威圧感たっぷりの目が怖い。

けど、二人に揺さぶりを掛けるのをやめるつもりはない。


「いっそ、芹沢さんとも経験しちゃえば良かったのに」

「ぶほっ!!」


唐突に名前を出された芹沢さんが、アルコールを噴いた。


「ちょっと、間宮ちゃん……冗談きついわ。笑えねーって」


苦笑いを浮かべる芹沢さんに「芹沢さんもそう思いません?」と同意を求めると、彼はブンブンと首を左右に振る。


「そんなんしたら、おっしーに殺されっから」


芹沢さんの表情には、焦りの色が滲んでいる。

そして、芹沢さんを鋭い眼差しで睨み付ける忍足さん。

彼の隣で居心地悪そうに身を小さくしている森川を見て、ちょっぴりやり過ぎたかな……と、反省。


「あ、はは……ごめんごめん、幸せそうな二人が羨ましくてつい、ね?」


ペロッと舌を出しながら、許しを乞うと、森川が「もう……」と、呆れ顔を披露した。
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