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side:透也―4
しおりを挟む職場に新しい事務員が入った。
主に社長夫人である常務の補佐をする為に雇われたらしい。
見た感じ、極々普通の主婦。
どこにでもいるような生活感漂う小太りのおばさんといった所だ。
名は、水川さんというらしい。
下の名前は確か……………忘れた。
興味がないから覚える気すら更々ない。
どうせ、あのワンマンヒステリーババアの常務の下じゃすぐに嫌になって辞めていくだろうし。
ウチの会社は、常務以外女性がいない。
男だらけのむさ苦しい職場で働きたいなんて随分物好きなもんだ。
久し振りの女性の入社とあってか、年配者は喜びを隠せないらしい。
大して用もないのに事務所内に立ち入っては、水川さんに声を掛けて世間話をしている。
30過ぎの小太りのおばさんでも、50,60のオッサン達からしてみれば若い娘さんなんだろう。
「妙香ちゃん、お疲れ様」
入社して間もないのに、既にちゃん付け。
「お疲れ様です」
「これ、現場監督から貰ったんだけど食うか?」
「えっ、いいんですか?嬉しい!ご馳走さまです」
こんな光景を良く目にするようになった。
「あ、でも、また太っちゃうかなぁ」
「いやいやいや~妙香ちゃんのポッチャリはキャラクターだから良いのよ」
「えぇー私、ポッチャリ通り越してデブですよ」
「いいのいいの若いんだからちょっとくらい太くても~」
いい歳したオッサン達が鼻の下を伸ばしながらうっれしそうにニヤニヤしている様を、俺は冷ややかに見ていた。
ある日の事
作業が予定より早く終わり、道具と余った材料を降ろしに会社に戻ったのは午後2時頃。
常務に報告と次の指示を仰ぐ為に事務所に入ったものの、常務は不在。
代わりに小太りの新人事務員が一人留守番していた。
「…………お疲れ様です」
パソコンと必死に睨み合っている彼女に声を掛けると、大きく肩が揺れた。
「あ………浅倉さん、お疲れ様です」
こちらを振り返った彼女の笑顔は、少し疲れているように感じさせた。
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