独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た

月咲やまな

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【最終章】

【第十話】応接室にて③

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「アイツ等が、いくら断っても全然引いてくれないのってさぁ、貴族には、血統主義の奴等が多いせいだよねぇ」

 アイシャの発言を受け、アリスターも「そうなんだ。往々にして、生まれへの不満があがりそうな場合は貴族の養子になってもらってから婚姻を結ぶ場合が多いんだが、今回の場合は天文学的な収益を伴う利権を狙っての話だから、その手を使おうが『その血統だけでは、“王”の伴侶には相応しくない』と不満を言う事が目に見えているんだよね」と私見を述べた。
「そう、なんですね」
 スラム街出身である事を恥じた事はないが、足枷にしかならない事は理解出来る。だが長年浮世離れした生活を送ってきたせいか、血筋云々を個々の気持ち以上に優先せよと他人に言われるのは納得がいかない。だがそれを言ってもいいのか悪いのか、子供らだけの状況であれば平気で口にしただろうが、王族であるアリスターを前にすると、レオノーラはわからなくなって口をつぐんだ。

「でね、向こうが、『色狂い』だなんだと噂を立てて普通なら有り得ない人数の『側妃』を向かい入れる流れを意地でも作ろうってんなら、こっちも攻勢に打って出ようかと思うんだが、どう思う?」

 アリスターに訊かれ、「まぁ、このまま断り続けるだけじゃ何も変わんないもんね。挙式への乱入は日程的に防げるだろうけど、世論や民衆意見を操作されたこ事で発生する数の暴力的な流れってのも、そうそう無視出来ないし」とアイシャが返した。
「さっきの、薬師を筆頭とした一団は、どうせそれの一環だったんだろう?」
「流石、カラミタはとっくに気が付いていたか。まぁ、結構あからさまだったもんね。だけど私は『恩人に会えそうだけど、どうする?』程度しか彼等には言っていないよ。あれだけの人数が集まったのは、まぁあれでも相当数の者達に諦めてもらったんだけど、全て本人達の希望さ」

 レオノーラの作った回復薬の効果は絶大だ。

 その製法は無駄だらけな自己流ではあるものの、世界樹の恩恵を受けた素材のみで作っているのだから納得である。
 彼女が作った薬の存在は薬師達か支配階級の者達の間では相当有名ではあるが、希少が故に、王族や皇族、もしくはその能力が世から失われるには惜しい者達のみでの服用が許された物とされてきた(運良く献上者となれた者や、直接レオノーラから買い取った薬師達が『自分達用に』と少し避けて置いていた物は別として)。その為貴族令嬢や令息程度の者ではその薬の存在すらも知らない場合が多い。だが各分野の著名人達が、王城にて、こぞって感謝を捧げた女性ともなれば少しくらいは噂になるはずだとアリスターは踏んだ様だ。

「じゃあ次は、『世界樹の後継者』の噂話を利用するって手はどう?」

 前のめりになり、口元にニヤリと笑みを浮かべながらアイシャが言う。
 冒険者を中心に、ダンジョン最深部に突如現れた壁画に描かれている『伝承』らしきものの話ははすでに広がっている。それを利用し、レオノーラを『特別な存在』に仕立て上げ、令嬢達の『血統』程度では対抗出来ぬ程の付加価値を母親に持たせようという魂胆の様だ。
「でもそれって、確信のある話じゃ……」とレオノーラが困り顔になったが、「あぁ、何もそう宣言する訳じゃないよ、こっちは匂わせるだーけ。結果が出るまではどうやったって答え合わせが出来ない事案だとはいえ、やっぱ断言するのは良くないからね」とアイシャが笑顔で返した。
「……聖獣の作ったウェディングドレス、ヒューマ族なのに百八十歳という年齢、世界樹の麓に住み続け、しかも今此処に、二体もの聖獣が同行している事実」
 セリンがレオノーラを取り巻く現状を一つ一つあげていく。
「確かに、周囲が『後継者である可能性』を勝手見出してくれる情報が多々有りますよね」と言い、テオドールが頷いた。

「その案を突き通すのに、他国の王族や皇族達の説得はかなり容易だと思うよ」

 何故?と不思議に思った面々の視線がアリスターに集まった。当人だからか、レオノーラは『そんなバカな!』と言いたそうな顔にまでなっている。
「主要都市の各所にある巨大な門を通ると、通行税として、一日に一度だけ個々の魔力の一割を徴収しているだろう?」とアリスターが言ったが、そうとは知らないレオノーラが『そうなの?』と言いたそうな視線をカラミタに向けた。
「そっか、レラには教えてなかったね。近年の目まぐるしい魔導具の発展の影響で、世界樹の根から噴き出す『魔力溜まり』からだけじゃ公共設備を動かす魔力が不足し始めて、最近では個人から魔力の一部を徴収する様になったんだ。『魔力溜まり』は王城の結界や転移系の魔導具でその大部分を常に使っているから、他の魔導具が増えればすぐに足りなくなるのは当然だよね。まぁ、魔力に関しては一晩寝れば自然に回復するし、街の中に居るんなら、一割程度ならこれといって影響は無いから教えるのを忘れていたよ」
「そっか、だから街の中があんなに明るいんだ」
「全部ウチのおかげだよ!」とアイシャが誇らしげにレオノーラに教えると、頑張って手を伸ばして彼の頭を撫でてもらえた。その時体にレオノーラの胸がむにゅりと当たったおかげか、二人の間に座るカラミタがご満悦顔になった。
「討伐依頼を受けた冒険者達みたいに、これから戦闘に出る者達からは流石に取らないから、今の所不平不満は上がっていないのが救いだねぇ」
 ライゼの言葉に、「『そこからは絶対に取るな』と冒険者ギルドや騎士団などから釘を刺されたからね」とアリスターが返した。

「——で、だ。話を戻すんだが、先程レオノーラさんも門を通過しただろう?その時に徴収した魔力が、我が国だけでも、十年分の魔力備蓄が魔水晶の中に出来てしまった程だったんだよ」

「たったの一割で⁉︎流石に盛ってない?」と真っ先に声を上げたのはアイシャだった。
「いや、管理者達から『爆発的は魔力量のせいで危うく備蓄用の魔水晶が壊れる所だった』と悲鳴が上がったらしいから間違った情報ではないよ」
「……アレって、確か相当なサイズだったよね。建物の二階分の高さはある一枚岩だったはずなのに、それが壊れそうって、ウチの予想よりも母さんの保持魔力は膨大だって事か」
 その話を聞き、『そんなに?』と驚くよりも先に『それだけの魔力をほぼ枯渇させるって、カラとの転移魔法は欠陥品じゃ⁉︎』とレオノーラは思った。『術式の違いにより発生する欠点』とだけでは説明がつかない。だがそれは、魔力が枯渇すれば一層レオノーラを好きに出来るからと、敢えて不要な術式も織り交ぜているからであるという事はカラミタだけの秘密である。

「そうなんだ。だからその魔力を別の魔水晶に移し、交渉材料にすればいい。何処の国であろうとも主要な都市の公共設備は全て魔導具頼りだからね、永久的に魔力不足に陥っている国ばかりだからすぐに乗ってくると思うんだが、レオノーラさん的には問題無いだろうか」

「私は別に。魔力を遊ばせておくよりは役立ててもらえた方がいいので」
「魔力が空の状態でも良ければ、魔水晶は外界からも相当数提供出来るぞ。もし今後も、不定期にでもレラの魔力を提供するという流れになるなら、補充先は上質な物を使う方が無駄が無くていいだろうからな」
「もし会談の流れで、この先も提供するとなっても、私の方は問題無いですよ」と言い、レオノーラが軽く手をあげた。
「そうか、それはかなりありがたいな。提供してもらうのなら供給時にロストしてしまう分は少しでも減らしたい。となると、樹界で採れる物よりも、外界で採れる物の方がサイズも大きい物が多いし、何よりも純度が高いからね」
 レオノーラの返答と、カラミタの案に対してアリスターが頭を下げる。一国の王太子が?とレオノーラは少し慌てたが、他の者達が無反応なので特に何も言えずに終わった。

「支配者階級はそれで良いとして、残る問題は人口比率の高い、俺らみたいな平民だよな」

 リトスがそう言うと、アイシャがニヤリと笑った。
「大丈夫!それならウチにいい案があるよ。母さんの凄さをド派手に見せ付け、ついでにその全員にも体感出来るレベルでの恩恵があれば、すぐ世論はこっちの思惑通りになるだろうよ!」と自慢げに宣言した。
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