15 / 17
【第14話】
しおりを挟む
二人の心拍数が上がり、敷地の広い古民家の静かな部屋の中では、葵の耳にまで届いてじゃないかと思うくらいに煩い。
「布団、は、離してぇ…… 」
涙混じりの声で、必死に掛け布団を引っ張り、葵が小さな体を隠そうとする。
「「ご、ごめん!」」と、匡と涼が同時に言い、パッと掛け布団を離した。
取り返した掛け布団で自分の体を慌てて覆う。そのままの状態で葵がぬっと起き上がり、顔だけ出した状態で敷布団の上に座った。その姿がまるで子供が折り紙で作った雛人形の様で、匡と涼が吹きだす。
「あはははは!」
「か、可愛いなぁ、葵は」
目頭に涙を浮かべ、匡達はお腹を押えて笑い出す。
「わ、笑わなくてもいいじゃないですか!」
葵はそう叫んだが、その顔にも次第に笑顔が浮かぶ。
「だ、だって…… すごく、か、かわ…… あはははは!」
「匡、笑い過ぎだって」と言う涼もただ堪えているだけで、今にも大笑いしそうな雰囲気だ。
葵が不貞腐れて頬を膨らませると、匡の笑い声が大きくなり、涼がで釣られて笑い出す。
「だ、ダメ…… 僕、死ぬっ」
「ぼ、僕も…… 」
酸欠状態になるほど笑う二人を、最初は膨れっ面のまま見ていた葵だったが、段々と微笑ましいと感じられるようになってきた。
軽く息をつき、「よかった、普段のお二人に戻ってるっぽいですね」と葵が小さな声で言う。目頭に浮かぶ涙を細い指先で拭いながら、匡と涼が葵の方へと顔を向ける。歳相応の幼い笑顔を浮かべる葵を、匡の涼の二人が不思議そうに見詰めた。
「死んだような顔をしていましたからね、ずっと」
「…… だって、当たり前じゃないか、君に…… あんな事、したんだし」
匡の言葉に続き、「だよ、な」と涼も頷く。
「いいんですよ、恨んでいないと言ってるじゃないですか」
「「でも…… 」」
「ずっと怖かったんです。匡さんも涼さんも、決して『私』を見ている訳じゃないんだなと思っていたから」
「「葵…… 」」
そう思われても当然な行動をしていた自覚がある二人は、言い訳すらも思い浮かばない。
「二人が互いを好きなのは、すぐにわかりました。…… その世界に私は居ないまま、あ、あんな、事されて…… るんだなって、思っていたから…… すごく嫌で、辛かった…… 」
「そんな事ないよ!あ、その…… 今は…… と、言った方がいいのかもしれないけど…… 」と口にし、匡が俯く。
「「でも、僕等では…… 葵の世界には入れないんだよね」」と、匡と涼が同時に呟いた。
「それは私の方です。お二人の絆はとても強い、私なんかが入るような隙間なんてありませんよ」
「…… 葵が?それって、えっと…… 意味が、わからないんだけど」
きょとんとした顔で涼が言う。
「え、や、待って。葵の言葉は嬉しいけど、でも、葵には、好きな人が、い…… いるんだもん、ね?」と、消え入りそうな声で匡が訊いた。
一瞬、驚いた顔を葵がした。でもすぐに、「あぁ、大和兄さんから聞いたんですか?」と二人に問い掛けると、直様二人が頷いた。
「あぁー…… 」と、眉間にシワを寄せながら葵が呟く。
(そういえば私、気になる人がいるって言っちゃってたっけ…… )
曇った顔色で葵の言葉を待つ二人に向かい、彼女がゆっくりと口を開いた。
「なるほど。それもあって、お二人は暗い顔だったんですね」
無言で二人が頷く。
(さて、困ったぞ)
葵はそう心の中で呟き、悩み込むみたいに黙ってしまった。匡と涼が葵にした事は、『傍に居たい』という深い気持ち故の行為だったとしても、簡単に許していいものではなかった。
(でも、二人は私を好きだと言ってくれた)
『傍に居たいんだ』って。『私の世界に入れて欲しい』って。親を亡くし、その後初めて、『私』を愛してくれた人達だ。行動は異常な程に性急だったが、二人は本気で自分を見てくれている。それにどこか懐かしくて、失った宝物を見付けられた時みたいな…… そんな衝撃を、彼らを初めて見た瞬間、葵は感じていた。
もっと一緒に居て欲しくて家に入ってもらって、その結果——
(流石に、失敗したかなと思うけど)
でも、それでも、葵は二人を憎めずにいた。
一緒に居る事が心地いい。こうやって、一緒に笑える事が嬉しい。
(一緒に…… この先、二人と寄り添って歩いていけたら、どんなに幸せだろうか?と考えちゃう自分は、どこかオカシイのかもなぁ)
突然、無理矢理彼らに純潔を奪われ、三日間も自宅で蹂躙され続けたというのに、何故か不思議と彼らに惹かれてしまう気持ちに対し、葵は戸惑いを隠せなかった。
「布団、は、離してぇ…… 」
涙混じりの声で、必死に掛け布団を引っ張り、葵が小さな体を隠そうとする。
「「ご、ごめん!」」と、匡と涼が同時に言い、パッと掛け布団を離した。
取り返した掛け布団で自分の体を慌てて覆う。そのままの状態で葵がぬっと起き上がり、顔だけ出した状態で敷布団の上に座った。その姿がまるで子供が折り紙で作った雛人形の様で、匡と涼が吹きだす。
「あはははは!」
「か、可愛いなぁ、葵は」
目頭に涙を浮かべ、匡達はお腹を押えて笑い出す。
「わ、笑わなくてもいいじゃないですか!」
葵はそう叫んだが、その顔にも次第に笑顔が浮かぶ。
「だ、だって…… すごく、か、かわ…… あはははは!」
「匡、笑い過ぎだって」と言う涼もただ堪えているだけで、今にも大笑いしそうな雰囲気だ。
葵が不貞腐れて頬を膨らませると、匡の笑い声が大きくなり、涼がで釣られて笑い出す。
「だ、ダメ…… 僕、死ぬっ」
「ぼ、僕も…… 」
酸欠状態になるほど笑う二人を、最初は膨れっ面のまま見ていた葵だったが、段々と微笑ましいと感じられるようになってきた。
軽く息をつき、「よかった、普段のお二人に戻ってるっぽいですね」と葵が小さな声で言う。目頭に浮かぶ涙を細い指先で拭いながら、匡と涼が葵の方へと顔を向ける。歳相応の幼い笑顔を浮かべる葵を、匡の涼の二人が不思議そうに見詰めた。
「死んだような顔をしていましたからね、ずっと」
「…… だって、当たり前じゃないか、君に…… あんな事、したんだし」
匡の言葉に続き、「だよ、な」と涼も頷く。
「いいんですよ、恨んでいないと言ってるじゃないですか」
「「でも…… 」」
「ずっと怖かったんです。匡さんも涼さんも、決して『私』を見ている訳じゃないんだなと思っていたから」
「「葵…… 」」
そう思われても当然な行動をしていた自覚がある二人は、言い訳すらも思い浮かばない。
「二人が互いを好きなのは、すぐにわかりました。…… その世界に私は居ないまま、あ、あんな、事されて…… るんだなって、思っていたから…… すごく嫌で、辛かった…… 」
「そんな事ないよ!あ、その…… 今は…… と、言った方がいいのかもしれないけど…… 」と口にし、匡が俯く。
「「でも、僕等では…… 葵の世界には入れないんだよね」」と、匡と涼が同時に呟いた。
「それは私の方です。お二人の絆はとても強い、私なんかが入るような隙間なんてありませんよ」
「…… 葵が?それって、えっと…… 意味が、わからないんだけど」
きょとんとした顔で涼が言う。
「え、や、待って。葵の言葉は嬉しいけど、でも、葵には、好きな人が、い…… いるんだもん、ね?」と、消え入りそうな声で匡が訊いた。
一瞬、驚いた顔を葵がした。でもすぐに、「あぁ、大和兄さんから聞いたんですか?」と二人に問い掛けると、直様二人が頷いた。
「あぁー…… 」と、眉間にシワを寄せながら葵が呟く。
(そういえば私、気になる人がいるって言っちゃってたっけ…… )
曇った顔色で葵の言葉を待つ二人に向かい、彼女がゆっくりと口を開いた。
「なるほど。それもあって、お二人は暗い顔だったんですね」
無言で二人が頷く。
(さて、困ったぞ)
葵はそう心の中で呟き、悩み込むみたいに黙ってしまった。匡と涼が葵にした事は、『傍に居たい』という深い気持ち故の行為だったとしても、簡単に許していいものではなかった。
(でも、二人は私を好きだと言ってくれた)
『傍に居たいんだ』って。『私の世界に入れて欲しい』って。親を亡くし、その後初めて、『私』を愛してくれた人達だ。行動は異常な程に性急だったが、二人は本気で自分を見てくれている。それにどこか懐かしくて、失った宝物を見付けられた時みたいな…… そんな衝撃を、彼らを初めて見た瞬間、葵は感じていた。
もっと一緒に居て欲しくて家に入ってもらって、その結果——
(流石に、失敗したかなと思うけど)
でも、それでも、葵は二人を憎めずにいた。
一緒に居る事が心地いい。こうやって、一緒に笑える事が嬉しい。
(一緒に…… この先、二人と寄り添って歩いていけたら、どんなに幸せだろうか?と考えちゃう自分は、どこかオカシイのかもなぁ)
突然、無理矢理彼らに純潔を奪われ、三日間も自宅で蹂躙され続けたというのに、何故か不思議と彼らに惹かれてしまう気持ちに対し、葵は戸惑いを隠せなかった。
0
あなたにおすすめの小説
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる