こうして、世界は再び色を持つ

月咲やまな

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【第14話】

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 二人の心拍数が上がり、敷地の広い古民家の静かな部屋の中では、葵の耳にまで届いてじゃないかと思うくらいに煩い。
「布団、は、離してぇ…… 」
 涙混じりの声で、必死に掛け布団を引っ張り、葵が小さな体を隠そうとする。
「「ご、ごめん!」」と、匡と涼が同時に言い、パッと掛け布団を離した。
 取り返した掛け布団で自分の体を慌てて覆う。そのままの状態で葵がぬっと起き上がり、顔だけ出した状態で敷布団の上に座った。その姿がまるで子供が折り紙で作った雛人形の様で、匡と涼が吹きだす。

「あはははは!」
「か、可愛いなぁ、葵は」

 目頭に涙を浮かべ、匡達はお腹を押えて笑い出す。
「わ、笑わなくてもいいじゃないですか!」
 葵はそう叫んだが、その顔にも次第に笑顔が浮かぶ。
「だ、だって…… すごく、か、かわ…… あはははは!」
「匡、笑い過ぎだって」と言う涼もただ堪えているだけで、今にも大笑いしそうな雰囲気だ。
 葵が不貞腐れて頬を膨らませると、匡の笑い声が大きくなり、涼がで釣られて笑い出す。
「だ、ダメ…… 僕、死ぬっ」
「ぼ、僕も…… 」
 酸欠状態になるほど笑う二人を、最初は膨れっ面のまま見ていた葵だったが、段々と微笑ましいと感じられるようになってきた。

 軽く息をつき、「よかった、普段のお二人に戻ってるっぽいですね」と葵が小さな声で言う。目頭に浮かぶ涙を細い指先で拭いながら、匡と涼が葵の方へと顔を向ける。歳相応の幼い笑顔を浮かべる葵を、匡の涼の二人が不思議そうに見詰めた。
「死んだような顔をしていましたからね、ずっと」

「…… だって、当たり前じゃないか、君に…… あんな事、したんだし」
 匡の言葉に続き、「だよ、な」と涼も頷く。

「いいんですよ、恨んでいないと言ってるじゃないですか」

「「でも…… 」」

「ずっと怖かったんです。匡さんも涼さんも、決して『私』を見ている訳じゃないんだなと思っていたから」

「「葵…… 」」
 そう思われても当然な行動をしていた自覚がある二人は、言い訳すらも思い浮かばない。

「二人が互いを好きなのは、すぐにわかりました。…… その世界に私は居ないまま、あ、あんな、事されて…… るんだなって、思っていたから…… すごく嫌で、辛かった…… 」

「そんな事ないよ!あ、その…… 今は…… と、言った方がいいのかもしれないけど…… 」と口にし、匡が俯く。
「「でも、僕等では…… 葵の世界には入れないんだよね」」と、匡と涼が同時に呟いた。
「それは私の方です。お二人の絆はとても強い、私なんかが入るような隙間なんてありませんよ」

「…… 葵が?それって、えっと…… 意味が、わからないんだけど」
 きょとんとした顔で涼が言う。
「え、や、待って。葵の言葉は嬉しいけど、でも、葵には、好きな人が、い…… いるんだもん、ね?」と、消え入りそうな声で匡が訊いた。

 一瞬、驚いた顔を葵がした。でもすぐに、「あぁ、大和兄さんから聞いたんですか?」と二人に問い掛けると、直様二人が頷いた。
「あぁー…… 」と、眉間にシワを寄せながら葵が呟く。

(そういえば私、気になる人がいるって言っちゃってたっけ…… )

 曇った顔色で葵の言葉を待つ二人に向かい、彼女がゆっくりと口を開いた。
「なるほど。それもあって、お二人は暗い顔だったんですね」
 無言で二人が頷く。

(さて、困ったぞ)

 葵はそう心の中で呟き、悩み込むみたいに黙ってしまった。匡と涼が葵にした事は、『傍に居たい』という深い気持ち故の行為だったとしても、簡単に許していいものではなかった。

(でも、二人は私を好きだと言ってくれた)

 『傍に居たいんだ』って。『私の世界に入れて欲しい』って。親を亡くし、その後初めて、『私』を愛してくれた人達だ。行動は異常な程に性急だったが、二人は本気で自分を見てくれている。それにどこか懐かしくて、失った宝物を見付けられた時みたいな…… そんな衝撃を、彼らを初めて見た瞬間、葵は感じていた。
 もっと一緒に居て欲しくて家に入ってもらって、その結果——

(流石に、失敗したかなと思うけど)

 でも、それでも、葵は二人を憎めずにいた。
 一緒に居る事が心地いい。こうやって、一緒に笑える事が嬉しい。

(一緒に…… この先、二人と寄り添って歩いていけたら、どんなに幸せだろうか?と考えちゃう自分は、どこかオカシイのかもなぁ)

 突然、無理矢理彼らに純潔を奪われ、三日間も自宅で蹂躙され続けたというのに、何故か不思議と彼らに惹かれてしまう気持ちに対し、葵は戸惑いを隠せなかった。
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