インキュバスのお気に入り

月咲やまな

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第二章

【第四話】『瀬田浩二』という名の災難④ (ウルカ・談)

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 “サキュバス”と“インキュバス”という種族が“魔女”に呪われて以来、私達は人の見る淫猥な夢を食べて精力を手に入れ、それを糧に魔力を回復させて細々と生きている。直接体で交わり、不特定多数の人間から精力を得る事はもう私達には出来ない。唯一ソレが出来るのは、たった一人の特別な相手——

 “夫婦”、もしくは“夫夫ふうふ”となった者とだけだ。

 なので普段はイヤラシイ夢の匂いを辿って人の家に勝手に侵入し、夢を食べさせて頂いているのだが、これがまぁ少ないのなんの……。無理に淫乱な夢を見せる事も出来はするが、淡白な人に当たってしまうと魔力が減っただけで終わってしまう恐ろしさが付き纏う。
 鼻血モノの激しい内容だったらそれなりに魔力を頂けるのだけど、意外とそんなご馳走にはなかなかお目にかかれない。コレばっかりは運次第なので、ワタシはあまり運が良くないのだろう。

「……お邪魔しまーす」

 閉まるドアをすり抜けて、こっそりひっそりと中に入る。
 玄関に靴は同じサイズの男性物しかないので、きっと彼は一人暮らしだ。新たな情報を掴み、ニヤリと笑う。
 独身である事はサーチ済みだ。しかも婚活中!さっき即お断りされてしまったのはきっと、花束でワタシのナイスボディが見えなかったせいよ。顔だって少し隠れていて、イマイチ『すごいゴージャスな美人が告白してきた』と感じられなかったんだわ。

(そ、そうに決まってる!……多分)

 意を決し、ヒールの高い靴を消して廊下に入る。抜き足差し足忍び足……今は何処に居るのかしら?どこもかしこも彼のステキな匂いだらけで、絞り込めない。

 居間に入り、寝室や仕事部屋っぽい場所を覗いても居なかった。『出かけた』だけはあり得ないので、トイレ?……もしかして、お、お風呂とか?
 ちょっと想像して、顔がポッと赤くなった。服の上からでもわかるくらいに瀬田さんの体は引き締まっていてスタイルが良いんだもの、想像だけでもヨダレが……。

「いけないいけない。レディーはヨダレなんかこぼさないのよ」

 口元を手の甲でさっと拭い、背筋をくっと伸ばしてボソッとこぼす。トイレは流石にソッチの趣味がないので覗く気はないが、お風呂ならば……誘惑するチャンスでは?
 花束を食卓に一度置き、花瓶を探す。でも残念ながら男性の一人暮らしではそんな物を買ってはいないみたいで、こっそり花を飾っておく事は出来そうになかった。

(有り金叩いて買ったのにな。とても綺麗な花なのに、飾れないだなんて残念だわ)

 ふぅと息を吐き、花束をそのままにする。
 魔力があれば花瓶なんか簡単に用意出来るのに……無いモノ強請りなんかしちゃダメね。今は瀬田さんを堕とす事に集中しないと。

 廊下の方へ戻り、洗面所の奥にあるお風呂場の様子を伺う。予想通りだ、シャワーを浴びる音が中から聞こえるから、今彼は全ら——ゴホゴホッ!

(あ、危ない、またヨダレが……)

 こっそり浴室の方へ近寄り、着ている服を全て消し去る。大きな胸、引き締まったウエスト、女性らしい腰のラインを洗面台の鏡で確認し、完璧な我が変身っぷりにウットリする。金色の腰まである髪を上でまとめてうなじを出し、セクシーさをよりアップさせると、ワタシは意を決してお風呂場の扉をそっと開けた。
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