吸血鬼のいる街

北岡元

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ゼッターのラッキー・ストライク

ラッキー・ストライクとアーク・ロイヤル

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 思いがけない出会いに、星子は無言でずかずか進んでいくコペルと彼方の首根っこを掴んで、塀の影に隠れた。彼女が目的したのは、真っ黒なマントで全身を覆った通行人だった。吸血鬼たちは日光で灰になる。彼らは日中、黒いマントに身を包んでいるので、一目で分かった。
「どう、こっち来てる?」
 星子はコペルに聞いた。コペルは塀の角から片目を少し出した。T字路にはもう人影は無い。
「いや、見たところもういないみたいだ」
「このまま左に曲がって、背後からスターを使うわ。それでいいわね」
「ああ」
「分かった」
「ぼくは反対だね」
「うわぁ!」
 星子は4人目の声に驚愕して後退した。コペルと彼方は星子に引っ張られて、足がもつれて皆で仲良く転倒してしまった。
 声の主、全身が黒いマントに包まれた少年は、転倒した3人をじっと見つめて笑っていた。
「ぼくはゼッター。我らがマックスの指揮で、ここで君たちを待っていた」
 星子は慌てて立ち上がり、ギロリと少年を睨みつけた。ゼッターは依然、戦う意思なんかないよ、というような感じでいた。
「でもぼくは戦わないよ。その代わり、君たちに頼みがあるんだ」
「信じると思うかしら?」
 星子はこめかみから頬に汗が滴るのを感じた。無防備なのに、なんでここまで自信たっぷり、ノープロブレムだもんねってふうな態度なのだ。ただ者じゃない……。コペルと彼方も、戦闘態勢を取ったまま動けずにいた。
「うん、信じてもらえるとは思っていないよ。だから、これを見て」
 そう言うとゼッターは、肩のマントの紐を歯で解いて見せた。露わになったゼッターの肩から伸びているはずの両腕が、そこにはなかった。
「こ、これは……!」
 3人はその意図を図りきれずにいた。なぜ戦うことを嫌う?
「まずはぼくの別荘に行こう。少し先に洞穴がある」
 コペルは星子小さく、どうする? と聞いた。星子は判断できずに硬直したままだった。その沈黙を遮ったのは彼方だった。
「行こう。彼の目は本気の目だった」
 洞穴、と言えば洞穴。彼の別荘というのは、住宅街の道路にある大きなマンホールの中の空間であった。予め用意してあった6つの椅子。そこに4人は腰をかけた。
「改めて、ぼくはゼッター。ここまで信じてついてきてくれて、ありがとう」
 ゼッターは深く頭を下げた。星子は相変わらず警戒しているが、彼方は話を続けるように促した。
「まずはぼくの目的から話すよ。マックス……、つまりマクスウェルを、元のマクスウェルに戻してあげたいんだ」
 彼方はマクスウェルという名にピリついた。コペルと星子は顔を見合せた。
「マクスウェルを元に戻す?」
 ゼッターは頷いて、話を続けた。
「マックスは、元は仲間思いで人間を心から愛していたんだ。なのに……、今は変わってしまった。仲間の死を戦死と割り切っていた。6人しかいないぼくたちにとって最も大切な女の吸血鬼も躊躇なく出払って、人間を襲わせている。マックス自身も人間を襲いたい衝動に駆られて、何人もの人間を銀の彫刻に変えていった。」
 ゼッターは俯いたままだった。声が怯えていた。
「ぼくは今、もう1人の吸血鬼、テラスと行動している。テラスには今、一時的にこのエリアから場所を移してもらっている。そのうちに済ませてしまいたい。テラスはマックスの言う通りに能力を持った人間を襲っている」
 ゼッターは仲間を裏切ることの罪悪感から、1粒の涙をこぼした。
「もうぼくのことは信じてもらえないかも知れない。でも、頼れるのはカルマと、君たちだけなんだ……」
 彼方は俯いたまま何も反応しなかった。星子は膝を組んで、ピリついた彼方に気をやっていた。コペルは真っ直ぐにゼッターの肩を見ていた。
「条件がある……」
 コペルの声に、ゼッターは顔を上げた。不安そうな目をしていた。
「星子と彼方は外へ出すんだ。それと、俺が頼まれたら、銀像にされた彼方の母親の元へ案内してくれ……」
 星子と彼方は、コペルの返答に驚愕した。
「コペル……」
「2人は龍一組と合流するんだ。俺は、大丈夫だと思う」
 彼方は思い出していた。以前、シャッター街での戦いでコペルと交わした約束。コペルは、誰かの為に本気で生きられる男だと理解していた。分かっている。ゼッターを助けたいと考えているのだ。だから、決断をしたコペルに対して、何も言うことは出来なかった。彼方はゼッターと目を合わせた。
「コペルに何かあれば、容赦しない」
「分かった。では、2人は出口へ」
 彼方は一言、ありがとうとコペルにこぼした。そうとしか言えなかった。星子は、やはり不安があるのか厳しい顔をしていたが、やがてゼッターに、このことは部員全員に報告する旨を伝えて踵を返した。その後、2人は下水道を出て行った。
「俺は何をすればいいんだ?」
 コペルは尋ねた。ゼッターは、真剣な目で答えた。
「これから君には、過去を見てもらう。元のマックスの姿を。そこから、楽園……、マックスの企みを阻止する術を、見つけ出して来て欲しいんだ」
 楽園。それは龍一から聞いたことがある。彼ら吸血鬼の目的は、彼らにとっての楽園を作り出すことだと。そうだ。コペルには気になることがあったのだ。なぜそのために、人間……とりわけ能力者のみを襲おうとするのか。過去を見れば、その謎が解かれるとでもいうのか。
「ぼくの能力はラッキー・ストライク。どんなことでも実現できる。その代わり、非現実的なことを現実に起こすためには、多大なエネルギーを必要とする。ぼくは能力者の血を啜ってエネルギーを集めていたけど、もう楽園を実現させようとは思わない。だから、この蓄えたエネルギーで、君を過去に飛ばす」
「ということは、マックスは知っているんだな? それとは別の方法で、楽園を作り上げる術を……」
 ゼッターは頷いた。それを止めたいのだと、コペルに告げた。
「君は……、いいのか? 楽園を作り上げることが、お前たちの目標ではなかったのか」
 ゼッターは難しい顔で俯いたが、すぐに顔を上げた。
「今のマックスの楽園は、もう楽園じゃなくなってしまった。だから、止めなくてはならない」
 ゼッターのためにも、コペルは早く、一刻も早く真相を暴くべきだと考えた。大きな進展への鍵が、今自分の手に握られようとしているのだと感じた。
「心の準備が出来たら、君の精神を過去に送る。こちらの世界では、過去を体験してから戻ってくるまでは、こちらの時間ではほんの3時間の出来事だ」
 コペルは静かに立ち上がった。途端に、ゼッターから凄まじいエネルギーが放出されるのを肌で実感した。
「ラッキー・ストライク! 君は西暦1800年、過去のイギリスへとタイムスリップする!」
 コペルは大きな力に飲み込まれるような感覚を覚えた。そして、実感に変わったところで、意識を失った。
 コペルが次に目を覚ましたのは、雪山の中腹であった。一面に広がる銀世界に、コペルは一瞬、途方に暮れるような思いで、意識を朦朧とさせた。ここが、過去の世界……。
 果てしない銀世界に目を奪われていたコペルだったが、遠くから聞こえる声によって意識を繋いだ。声のする方向へと視線を移した。
「あ、あの男は…… 」
 声の主とは、以前シャッター街で戦った吸血鬼、カルマであった。彼を目撃した時、呆然としていたコペルは一気に我に返った。そうだ、彼らを……、吸血鬼を追わなければ!
 一方、地上へと戻ってきた彼方と星子は、龍一のもとへと向かうべく走っていた。吸血鬼、ゼッター、テラス。このことを早く龍一と武情にも伝えなければならない。2人が超特急で住宅地を駆け抜け、人気のない岩場に差し掛かった時、異変は起きた。急に何かに足を奪われ、転倒した。
「うわっ!」
「きゃ! 何!? うわ、冷た!」
 2人が転倒した理由。それは、地面が凍りついていたからであった。ツルツルの氷に足を奪われて転倒したのだった。
「まさか……あれがテラス!」
 彼方がそう考えた時、上空からつららが降ってきた。彼方はとっさに、近くを飛んでいた虫に入り込んで攻撃をかわした。
 2人の前に姿を現したのは、黒いマントに覆われた女だった。あまりにも冷たい視線が彼方を貫いて、うろたえた。今まで味わったことの無い程に禍々しいオーラを感じた。彼方の決断は早かった。
 彼方は羽虫から飛び出ると、星子を連れて岩の影へと全速力で走り抜けた。女は歩きながら岩へと向かってくるのみで、特に変わったアクションを見せることは無かった。
「行け……、星子。ここは俺が相手をする……」
「何言ってんのよ! 一緒に戦うわよ!」
「龍一たちの元へ逃げるんだ……、こいつは、ヤバすぎる!」
 彼方の力強い視線に、星子はたじろいだ。真っ直ぐな目から、強い覚悟を感じた。
「俺はコペルのことを、コペルのちっぽけだが誇るべきプライドを、尊敬している……」
 彼方が想うのはコペルのことであった。シャッター街で、コペルは自分を助けてくれた。そして、さっきは、自分と星子を逃がした。それだけではなく、母親までも助けようとしている。彼方は今、母親と共に失くしたものを取り戻そうとしていた。
「彼方……、あなたの気持ちは分かるわ。でも、それは皆同じよ。皆、誰も失いたくない。たったの2週間あまりの付き合いでも、心が通じた友だちじゃない。……違う?」
 星子は冷静に応じることにした。彼方の言いたいことは分かっている。それでも、抑えきれない気持ちがこぼれそうだったから、必死に抑えた。
「あなたは誰よりも真面目な性格だわ。私にはそんな彼方が、本当に輝いて見えた……。お母さんを探しているあなたの日々は、誰よりもかっこよかった。お願いだから、あなたを一人ぼっちにさせようだなんて、私に考えさせないで。皆同じよ、皆……」
 彼方は俯いたまま、答えを返せなかった。独りよがりだった。あの時は、シャッター街の時は、コペルに肩を借りようと思えた。改めて、コペルの凄さを思い知らされたと思った。
「その代わり、龍一たちをここに呼ぶわ。もう空気が冷たい……、敵は氷の使い手で間違いなさそうだわ……。一緒に戦うわよ!」
「……ああ!」
 星子が思い切り立ち上がろうとした、その時だった。背中をくっつけていた岩と背中が離れない。星子は驚愕した。
「こ、これは!?」
「氷っているぞ、星子! 凍らせてくっつけてある!」
 彼方は岩がいつの間にか凍らされているのを発見した。一気に冷たい汗が額に溜まる。
 肘をぶつけたり殴ったりしたが、岩は砕けない。彼方はどうにか敵を見ようと首を伸ばした。しかし、かろうじて岩の外から覗くことの出来た光景に、更なる窮地を目撃することとなった。敵はその辺一帯を凍らせていた。 どこに隠れていようとも、敵には関係のないことだ!
「戦い慣れている……、ほんの10数秒で、俺たちはあっけなく追い詰められていた!」
 無防備な状態で確実に距離を詰められる。簡単な理屈で焦らされている自分を、彼方は情けなく感じた。同時に、その簡単な理屈を意図も容易く実現したあの吸血鬼を、彼方は恐怖に感じた。どうする。どうすればいいのだ。
「どうする? こうするのよ、彼方」
 星子は彼方の手を握った。ぎゅっと握りしめた。それは、何年も孤独に戦い続けてきた彼方に、星子にしてあげられる精一杯のことだった。
「1人で背負いこんではいけないわ。もう仲間がいる。何度も言うわ。あなたはもう、1人じゃない。私は共に戦う仲間よ」
 星子の手の温もりは、彼方の心の奥底に眠った暖かいものと共鳴するようだった。彼方はあの夜、母親と2人だったこと。当たり前のことを今になって実感した。皆と共に歩くこと。そんな当たり前のことすら見えなくなるほどの怒りと恐怖が、彼方を覆い尽くしていた。孤独の彼方にもたらされたものは、本当にちっぽけなものだった。本当にちっぽけでありふれたもの、しかし、誰もが探しているもの。この世の何よりも大切なもの。
 目の前の岩が粉砕されたことで、吸血鬼は歩みを止めた。土埃が晴れた時、そこには岩を壊して立ち上がって見せた星子と彼方がいた。
「スター……。ここからは本当の私が使うわ……。彼方と2人だもの……、私を隠す必要なんてない」
 槍を握りしめた星子の人格は変わっていなかった。これでいい。もう繕わなくったって、いい。
 彼方は握りしめた星子の手を静かに離した。これでいい。もう1人で立っていられる。仲間といるのだから。
 2人は1歩、前へ出た。ここから始まるのだ。星子の爆発は。彼方があの夜から踏み出せなかった、新しい1歩が。
「かかってきなさい……」
「かかってこい……」
 太陽の熱で氷が溶けて、背中の岩がどさりと地面に落ちた。それを合図に2人は走り出した。
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