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プロローグ

前世の私と決意

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ああ、また。

また貴方は番の私より愛する女性を優先するのですね。

貴方を番と認識した瞬間に蘇る前世の記憶。

ああ、また。

私へ勝ち誇る視線をまた、貴方に並ぶ女性から感じて唇を強く噛む、私は上手く笑えてるのだろうか?

何度その視線を受けたのだろう。

貴方の甘い表情も、視線も、言葉も、声色も
なぜ彼女が一身に受け止めているの?

なぜなぜなぜなぜなぜ!!
番である私では無いの?

ああ、また。
繰り返し姿が変わっても、この場面に遭遇してしまう。

甘えた声で彼女が貴方に微笑みかけている。

「ねえ、私は貴方にとってなぁに?」

すれ違いすがら、また聴こえるだろう貴方のあの言葉に足が竦み、繰り返されている筈なのに心が耐えられず、慣れる事が出来ないでいる。
それなのに、ああ、貴方の薫りを番としての本能で感じている私は立ち去る事も出来ないのです。

「ふふ、ねえ何度でも聴きたいの」
愛しい人」

すれ違う瞬間、心が、魂が、貴方のだと叫び耐えられない。



1度目は、その場でショック死でした。
真実と現実の乖離に耐えられなかったのでしょう。

2度目は、婚約者になれた様ですが仮面夫婦でした。番の彼女が第二夫人になり、この場面後、私は心を病みそのまま死亡した様です。

3度目は、何処かの村で幼なじみでした。順調だった筈でしたが、子爵令嬢の彼女に出逢い、私はでは無いと捨てられてしまったのです。
心が耐えられなくて自死したようです。冷たい水の記憶にぶるりと震えがでてしまいます。

4度目は、出逢ったのも遅く身分差が激しい事もあり、使用人の私は何とか耐えていた様です。

5度目は、お互いに国が違っていました。
ですが、使節団で我が国を訪れた貴方に交流会で出逢え、私は天にも昇る高揚感に胸を躍らせたのです。

夢にまでみた貴方の甘い表情、喜び溢れ求めて止まないと訴える声色が向けられたのだから。

「ああ、私のよ、やっとお逢いできました。手を取る事をお許し下さい」

まさか、ああ、横に居る姉上が
私は姉に嫌がらせをしたとして出奔させられ、修道女で生涯を終えました。

6度目と7度目は、何処かの令嬢だったようで、貴方に出逢う迄は記憶は無く日常を送り、そして婚約者が貴方だったのです。

私は貴方に、私が番だと常に言って、煙たがれていたのに呪文の様に言い続けてました。
今度こそ、世の番の様に愛し愛されたいと!
しかし、運命は皮肉にもふたりを出逢わせてしまいました。

彼女に出逢ってしまった貴方は、私に更に冷たくて、貴方を取り戻したい私は意固地になり、彼女に害を与え自分が真実であると詰め寄り、投獄死と貴方に斬られて死亡し人生を終えたのです。

体格も髪色も目の色も違うのに、追体験したかの様に、それらは貴方と彼女と私だとわかってしまいます。

記憶は恐怖と凍りつく様な哀しみに溢れて絶叫してしまいました。


絶叫は、何故か赤児の泣き声で響き渡ります。

私は耐えられず泣き叫んでいるのです。
そして、聴こえる赤児の泣き声は私だとぼんやりと感覚で感じました。

ふと、とても良い匂いがして、柔らかな手と温もりを感じました。
泣く赤児の私をあやしてくれているようです。

ああ、私は記憶を持ったまま8度目の生まれ変わりをしたのだと知り絶望感に包まれました。


8度目の生まれ変わりですが、今回は記憶が何故か生まれた時からある様です。

今はまだ赤児ですが、流石に疲れました。
番である貴方は、今生で先に生まれてるのを魂が教えてくれていますが、同時に私は心が擦り切れてしまったのを感じます。


魂は止めろと訴えますが、無理なものは無理なのです。
ですから、今生から貴方の番を永久に辞めたいとおもいます。

決意して番の魂との鎖を破棄する方法を捜して貴方では無い誰かと幸せになりたいのです。

溢れる涙と哀しみで潰れそうな心は今だけ、泣き疲れたら鍵を掛けて、そっと仕舞い込む事にします。

貴方の番である波動を感じながら、心の中でさよならを告げました。
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