主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

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第1章

06 兄と弟のイチャコラピクニック

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「ヒール」



ボウっと青白い幻想的な光が俺を包む。



ふふふ、1日2回が限度だが出来るようになった。




そうして俺は人伝に魔法使いのじじいに伝えたが、音沙汰ないので次の段階に勝手に進む事にした。


そう、ハイヒールだ。



ヒールよりも威力があり怪我など完璧に治すその技を、俺も使えるようになりたい。


ゲームの世界では簡単にレベルをあげたら出来るようになっていた魔法だが、現実となると何とも難しい。俺の能力がないのもあるのだが、ヒールに1年かかってしまった。


やはり、魔物と戦わないとレベルはあがらないらしい。剣術も子供のお遊びレベルだ。しかし、王子が魔物と戦いたいと言って行かせてくれる人間はおらず。俺は焦っていた。



「ウォーターッ!」



庭ではもの凄い音をさせてアレンが魔法の訓練をしている。



あいつ、水魔法も出来るようになったのか。こないだ雷も落としてたよな。




教えたら何でも吸収出来るってじじぃが言ってたな。……何でも出来るようになるのか…



「……そりゃあ、いいな。」







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇










ドンッ!と部屋の扉が開かれる。ビクッてなるからやめてほしい。




「何のご用でしょうか?」




ニコニコ笑顔で、アレンが現れた。後ろでしっぽをブンブン振っているように見える。




あれ、こいつ獣人だったっけ?




俺に呼び出されたのが余程うれしいらしいな。こいつの将来が心配だ。まぁいい。人払いをして要件を伝える。




「お前、テレポート出来るようになれ。」




アレンにこっそり外に連れていってもらい、魔物と戦う作戦だ。




「えっ、どうしてですか?僕、次は土属性の魔法を教えてもらう予定なんですけど。」




きょとんとした顔をしてアレンはやんわりと拒否をした。




俺はわざとらしくため息をつく。



「お前と魔物の森に行ってピクニックしたいんだ。でも皆、許してくれないから、お前の魔法でこっそり行けないかな?と思ったが……無理なようだ――」




「――1日で覚えてきます!」




未来の勇者すげーな。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








初めての森はわくわくだった。アレンは何度も剣術の先生と来ているらしく、6才にして15レベルになっていた。ここら辺の魔物はほとんど倒した事があるらしい。とりあえず俺は、一番弱い敵のスライムと戦う事にした。



「……何これ、気持ち悪ぃ。」



俺の思ってたスライムと違う。生臭いドロッとした塊に、目茶苦茶引いてしまう。あいつはもっとこうさ、こう、可愛いもんじゃないのか?こんなゲロみたいなもんじゃないだろ?



後ろに待機させているアレンをすがるように見る。6才児にすがる11才の俺。




情けない。





「なぁこれ剣、刺さんのか?」





アレンは困ったように眉毛を寄せる。



「刺さるっていうか、切る感じですかね。」




スライムとやらを睨む。ヤツは動かない。こいつ、悪いやつなのか?こちらが攻撃しないと動かないんじゃないないか?こんなゲロみたいなやつを倒すなんて人間は酷いな。踏むのが嫌で倒すのか?



「――あの、別の魔物にしますか?あっ!危ないっ!」



固まって動かない俺とスライムを見てアレンがそういいかけた時、ヤツは裏切ったんだ。



蛇みたいな跳躍力で俺に飛びかかってきやがった!とっさにアレンが俺を庇って傷を負いながらも剣でスライムをぶったぎる。



キュウと可愛い声を出して裏切り者は倒れた。



「大丈夫ですか?」



「ああ、お前のお陰で助かった。見せてみろ。」



自分が怪我をしているのに、俺の心配をするアレンの腕をとり、覚えたてのヒールをかける。ボウっと青白い光にアレンの腕が包まれて傷がみるみるうちに塞がっていく。



「ほぅ。俺のヒール、効果があるんだな。」




少し感動する。



「……ありがとうございます。」




アレンの赤い瞳が涙で薄い膜を張っている。そしてにっこりと笑った。とろけそうな笑顔だ。



痛かったのに泣くのを我慢して偉いな。




「さて、魔物も一匹倒したし、おやつにするか。」




おやつと言ってもサンドウイッチだが、部屋にアレンと籠って遊ぶからと料理長に作らせた旅のお伴だ。




布を敷いてサンドウイッチを広げると俺はパクリと食べる。うん、旨い。戦いの後の食事は格別だな。




ふと、アレンが食べていない事に気づく。




「食べないのか?」



「……まだ少し腕が痛くて。お兄様食べさせて下さい。」



あーんっと可愛い口を開けるアレン。




それは可哀想にと俺はアレンに一つ一つ食べさせた。いちいち俺の指を舐めるのはやめてほしかったが、俺のヒールが力不足のせいでアレンは痛いのだし、無理は言えなかった。



――通り食べ終わったあと、アレンは満足そうに言った。




「ピクニックってとても楽しいですねぇ。」





うん、それは良かった。
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