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第1章
18 涙と後悔
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「ラインハルト、久しぶりだね。」
ハリーが優雅で優美な嘘くさい笑顔で俺に話しかけてきた。確か、この4年間、国の優秀な学園に留学生として通ってたんだっけ?
「お前…まだ居たのか。」
ハリーがガンっと音がしそうな位衝撃受けた。ような気がする。
「ハイハイ、まだ居ましたよ。たくさん勉強出来たので、近々帰るけどね。アレンもついて来てくれるし、楽しみだよ。」
「何?」
アレンがハリーについて行く?
あの日からもう半年がたつが、俺はアレンに会っていなかった事に初めて気が付いた。死を覚悟したあの時、アレンにバレないようにエンが助けてくれたから事無きを得たが、大好きな兄が死にかけたんだ。アレンはショックを受けたに決まってるのに俺は何をやっていたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目の前にある綺麗な細工のされた重たい扉がギィと音をたてて開いた。中にはアレンがこちらに背を向けて荷造りをしていたが、俺に気付いてこちらを振り返る。
「本当に行くんだな。」
入り口に右肩をもたれかかせ、首をかしげる。
「はい、明日出発します。」
立ち上がり、アレンが歩み寄ってくる。
そんなの俺は知らなかった。
聞いてなかった。
知っていたら絶対に止めた。
居なくなるのは俺のはずだろう?
アレンは近付くと俺の両肩に手を置いて俺を見つめた。
落ち着いた瞳の奥底に燃えたぎる焔が見える。
いつの間にこんな風に感情を抑える事が出来るようになっていたのか。
心が震える。
「必ず戻ってきます。だから泣かないで。」
そっと優しく抱き締められる。俺は泣いていたのか。いつの間にか背丈を抜かれていた。優しく抱き締める事をいつ覚えたのか。俺は涙を止める事はしばらく出来なかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アレンが旅立ってから邪念を払うように一層修行に没頭した。そして、15才の頃からギルドで素材等をコツコツと換金して今や俺の個人資産は国の国庫予算を超えている。旅立つ準備は既に整っていた。
「おっおい!幻の悪魔が来た!今度は蜥蜴を連れてるぞ。」
ヒソヒソと遠巻きに話す冒険者のマッチョ達。流石にエンを連れた俺に話し掛けるやつは居ない。死線を幾度となく経験している彼等には本能的に分かるのだろう。
【おい、この臭くて消滅させたくなる所は何だ?】
ほらね。物騒でしょ?
「だから、ギルドだって言ってんだろ?魔石とか素材がお金と交換出来るんだよ。……龍の素材っていくらで売れるんだろうな?」
おかしいな、エンが大金に見えてきたぞ。
じゅる……
【この恩知らずめ。いつかぶち犯してやるから覚悟しておけ。】
ハイハイ……失礼しました。
「立派な青年になっちゃって、今夜、お姉さんとどう?」
おおう!色っぽいお姉さん、後腐れがないのなら一度お願いしたい所だが、エンの恨めしそうな視線を感じて断腸の思いで断る。結局アレンとのおままごとがおままごとで終われたのも、エンのこの視線のお陰だ。最中にこの視線で見つめられてみ?出来ないから。
お姉さんは「あら、そう。」と言って代わりに交換したお金をくれた。もう、これだけでもいつでも出て行けるがアレンは今12才。俺がゲームの中で追い出したのは13才の時だ。その時まで王は生きていた。出ていくのはそれからでもいいだろうか。アレンが13才になったら、アレンではなく、俺が出ていく。その頃までにアレンは戻って来てるだろうか。最後に一目会いたい、会って話して抱き締めて、あの宝石のような赤い瞳を見てから去りたい。
――しかし、アレンはもうすぐ13才になる頃になっても、一向に帰ってくる気配がなかった。会えないまま去ることになるのかと半ば諦めて荷造りをしていた時、俺は王に呼び出される事になる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「――兄として、事態を収拾して参れ。」
「はぁ。」
俺は虚ろな目をしていたと思う。王の御前ではあり得ない事だ。こんな態度を取るなんて、愛されていない俺なんか、すぐに牢屋行きだろう。でも、俺は全く状況が飲み込めなかった。
考えたくなくて窓の外を見る。雲一つない真っ青な空を小さな鳥が一直線に飛んでいる。いや、小さく見えるだけで実物は大きいのかもしれない。
俺は視線を王に戻す。俺の態度に怒りを含んだ赤い瞳が俺を見ている。
この人はどうして俺を追い出さないのか。自分の子ではないって分かってんだろ?そんな事を知らない愛されない俺はイロイロやらかすんだからな。それで、いつの間にか死んじゃって、俺が王になって人生が狂いだす。そうならない為に俺がこんなに苦労してるのはあんたのせいだ。俺が嫌いだからって、こんな仕事を押し付けるなんて。
――俺は信じない。あの可愛いアレンが女の子を妊娠させたなんて。そんなの嘘だろ?
ハリーが優雅で優美な嘘くさい笑顔で俺に話しかけてきた。確か、この4年間、国の優秀な学園に留学生として通ってたんだっけ?
「お前…まだ居たのか。」
ハリーがガンっと音がしそうな位衝撃受けた。ような気がする。
「ハイハイ、まだ居ましたよ。たくさん勉強出来たので、近々帰るけどね。アレンもついて来てくれるし、楽しみだよ。」
「何?」
アレンがハリーについて行く?
あの日からもう半年がたつが、俺はアレンに会っていなかった事に初めて気が付いた。死を覚悟したあの時、アレンにバレないようにエンが助けてくれたから事無きを得たが、大好きな兄が死にかけたんだ。アレンはショックを受けたに決まってるのに俺は何をやっていたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目の前にある綺麗な細工のされた重たい扉がギィと音をたてて開いた。中にはアレンがこちらに背を向けて荷造りをしていたが、俺に気付いてこちらを振り返る。
「本当に行くんだな。」
入り口に右肩をもたれかかせ、首をかしげる。
「はい、明日出発します。」
立ち上がり、アレンが歩み寄ってくる。
そんなの俺は知らなかった。
聞いてなかった。
知っていたら絶対に止めた。
居なくなるのは俺のはずだろう?
アレンは近付くと俺の両肩に手を置いて俺を見つめた。
落ち着いた瞳の奥底に燃えたぎる焔が見える。
いつの間にこんな風に感情を抑える事が出来るようになっていたのか。
心が震える。
「必ず戻ってきます。だから泣かないで。」
そっと優しく抱き締められる。俺は泣いていたのか。いつの間にか背丈を抜かれていた。優しく抱き締める事をいつ覚えたのか。俺は涙を止める事はしばらく出来なかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アレンが旅立ってから邪念を払うように一層修行に没頭した。そして、15才の頃からギルドで素材等をコツコツと換金して今や俺の個人資産は国の国庫予算を超えている。旅立つ準備は既に整っていた。
「おっおい!幻の悪魔が来た!今度は蜥蜴を連れてるぞ。」
ヒソヒソと遠巻きに話す冒険者のマッチョ達。流石にエンを連れた俺に話し掛けるやつは居ない。死線を幾度となく経験している彼等には本能的に分かるのだろう。
【おい、この臭くて消滅させたくなる所は何だ?】
ほらね。物騒でしょ?
「だから、ギルドだって言ってんだろ?魔石とか素材がお金と交換出来るんだよ。……龍の素材っていくらで売れるんだろうな?」
おかしいな、エンが大金に見えてきたぞ。
じゅる……
【この恩知らずめ。いつかぶち犯してやるから覚悟しておけ。】
ハイハイ……失礼しました。
「立派な青年になっちゃって、今夜、お姉さんとどう?」
おおう!色っぽいお姉さん、後腐れがないのなら一度お願いしたい所だが、エンの恨めしそうな視線を感じて断腸の思いで断る。結局アレンとのおままごとがおままごとで終われたのも、エンのこの視線のお陰だ。最中にこの視線で見つめられてみ?出来ないから。
お姉さんは「あら、そう。」と言って代わりに交換したお金をくれた。もう、これだけでもいつでも出て行けるがアレンは今12才。俺がゲームの中で追い出したのは13才の時だ。その時まで王は生きていた。出ていくのはそれからでもいいだろうか。アレンが13才になったら、アレンではなく、俺が出ていく。その頃までにアレンは戻って来てるだろうか。最後に一目会いたい、会って話して抱き締めて、あの宝石のような赤い瞳を見てから去りたい。
――しかし、アレンはもうすぐ13才になる頃になっても、一向に帰ってくる気配がなかった。会えないまま去ることになるのかと半ば諦めて荷造りをしていた時、俺は王に呼び出される事になる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「――兄として、事態を収拾して参れ。」
「はぁ。」
俺は虚ろな目をしていたと思う。王の御前ではあり得ない事だ。こんな態度を取るなんて、愛されていない俺なんか、すぐに牢屋行きだろう。でも、俺は全く状況が飲み込めなかった。
考えたくなくて窓の外を見る。雲一つない真っ青な空を小さな鳥が一直線に飛んでいる。いや、小さく見えるだけで実物は大きいのかもしれない。
俺は視線を王に戻す。俺の態度に怒りを含んだ赤い瞳が俺を見ている。
この人はどうして俺を追い出さないのか。自分の子ではないって分かってんだろ?そんな事を知らない愛されない俺はイロイロやらかすんだからな。それで、いつの間にか死んじゃって、俺が王になって人生が狂いだす。そうならない為に俺がこんなに苦労してるのはあんたのせいだ。俺が嫌いだからって、こんな仕事を押し付けるなんて。
――俺は信じない。あの可愛いアレンが女の子を妊娠させたなんて。そんなの嘘だろ?
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