主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

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第2章

29 三角関係

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side  とある宿屋の一室にて――



「一体何者なのかしら?」



ラインハルトは風呂に入っていていない。



「分かりません。が、あのヒール、今まで受けた事のあるヒールと違い心まで癒されるような不思議な力がありました。」


リリィは憂いの表情で暗くなった窓の外を見た。


「ポーションを万能薬に代える魔法。威力の凄まじいヒール。そしてあの容姿。これから先、邪な心で彼を欲する者が沢山出てくるでしょう。」


「奴に救われた身、今度は俺がこの命に代えても守ります!」


ライナスが決意を新たに誓うと、頼もしそうにリリィが微笑んだ。途端にライナスは赤くなる。


「勿論、リリィ様も守ります!」


「ありがとう。ライナスが居てくれるから安心ね。二人で彼を守りましょう。」



等の本人は守られるほど弱くはないのだが、この二人のハートに火をつけてしまったようだ。


「――それにしても遅くないかしら?……そういえばこの宿のお風呂は共同浴場だったのでは?」



二人は真っ青になって顔を見合わせた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


side    ライナス


ライナスが慌てて風呂へ向かうと今、まさに裸で男に馴れ馴れしく体を支えられて風呂へ入ろうとしている彼を見つけカッとなって魔法で輩をぶっ飛ばした。


「俺が目を離したばかりに!!」




守ると誓ったのに!彼を見ると美しいブルーの瞳に涙をためて、頬は赤く色付いている。ライナスはその壮絶な色気に眩暈がした。



「ラ、イナス?……俺、勝った……イケメン滅びろ。」


勝った?勝負でもしたのか?こんなにか弱く儚い存在なのに、俺達の足手まといになるまいと必死に……

なんといじらしく愛おしい存在なんだ。

「そんなことしなくていい、お前は素晴らしい力を持っている。それで十分なんだ。」

そこに居てくれるだけでいい。後ろにお前が居ると思うだけで守らねばと力が出る。今日は張り切り過ぎてミスをしてしまったが、お前が救ってくれた。

「俺、好きなんだ。」

彼が思いつめたように苦しげに呟いた。

「好き?」

……俺が好きだと?

「ああ、中毒みたいに日に日に好きになっていく……ライナス、どうしよう?」

ライナスは潤んだ瞳で見つめられ、目を反らした。しかし反らした先には鎖骨、胸のピンクの蕾、均整の取れた真珠のように輝く白い裸体が見え、目がくらんで理性を保つ為に必死に欲望と戦わねばならなかった。

「どうしようって、そんな夢みたいな事……」

この世のものとは思えないほど清らかで穢れもなく輝くように美しい彼が俺を好きなんてそんな幸福な事が起きるなんて――

――バカな事を!!俺には子供の頃からずっと恋い焦がれてきた想い人がいるじゃないか!

「すまない。俺はお前の思いには答えられない。」

俺は断腸の思いで言葉を紡いだ。

「……そうだよな、変な事を言って悪かったな。どうか、忘れてくれ。……こんな俺でもまだ、仲間でいてくれるか?」

「当たり前だぁ!」

食い気味に答えると、「サンキュー。」と言って輝く裸体で抱きついてきた奴に手を出さなかった事を、俺は自分で自分を誉めてやりたい。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「彼が無事で良かったです。ありがとうライナス。」


後ろめたさに顔を見ることが出来ずに俯く。あの後、意識を失った彼を部屋に連れて来て寝かせた。


リリィ様が不意に俺の両手を取り胸に束ねて取り込んだ。嫌な予感がする。

「ライナス、今日あなたを失うかもしれない思った時に気づいたのです。私は、私は貴方を愛しています。」

溢れ落ちそうな大きなグレイ色の少し垂れた瞳が好きだ。

可愛らしい鼻に、サクランボのような唇、どれをとっても愛らしい。肌をさらさない地域に住んでいたから部屋で顔を覆う布を外した時に見れる愛らしいかんばせにいつも胸が躍った。選ばれし学園へ行ってしまった時は毎日心を過去に飛ばし泣いた。離れた事など無かったから身が引きちぎられるような感覚に痛みを感じた。ジリジリと死を待つだけの故郷にいて、彼女が卒業を待たずに帰って来た時は思わずその柔らかい体を抱き締めてしまい、自害しようとするのを止められた。

「この地を救いたい。」可愛い見た目に相反してしっかりとした意思の強い瞳で告げられたら迷う事などなかった。

二人きりの希望と絶望を背負った何処か排他的な旅は俺を更に拗らせた。

ずっとこのままでいたい。

このまま故郷が滅んで絶望にうちひしがれる彼女を抱き締め慰め、俺しかいないと思わせたい。

ずっと二人で――

そんな事ばかりを思っていたから罰が当たった……

まさか同じように愛しく思う存在が現れるなんて。


絶望に心が落ちていく。この告白が昨日までに起こっていたら俺は間違いなく世界中の誰よりも幸せだっただろう。幼少の頃より大切だった、彼女を守るために辛い修行にも耐えられた。俺の宝、俺の全てだったのに。

「ライナス、キスを。」

頬を染め、長い睫毛を伏せて俺のキスを待つ誰よりも大切な彼女に俺は絶望のキスを落とした。
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