主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

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最終章

63 君を守りたい

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薬草の葉を手に取る。虫喰いもなく素晴らしい出来だ。

「あちーな。」

汗がじわる。

森の気候に近づけるためにハウス栽培にした所、以前よりも発育がよくなった薬草は元気に青々と育っていた。勿論ビニールなんてこの世界にはないから薄い布を張り巡らしているが中身が見えなくて調度いい。

俺はそのハウスの中で日課の薬草管理をしていた。

「……」

暫く夢中でやっていると、ふと小さな悲鳴が聞こえた気がした。ハウスから出て見てみるが何の変化もないいつもの家が建っているだけだ。
だが胸の奥がザワザワと蠢く。もうそれは本能とかしか言えなかったが嫌な予感がして家へ戻った。

手にスコップを持ちゆっくりと足音をさせないように歩く。何事もなかったら笑い話にしたらいい。そんな事を思いながら目当ての部屋のドアをゆっくりと開ける。

そこには男に襲われているユノの姿があった。

全身が粟立つ。冷静になるようにと奥歯を噛み締めた。ここで突っ込んで行ってもアレンの時の二の舞になるからだ。

俺は弱い。あの体格の男に敵うとは思えない。頭を使え!俺は天才だろうが!どうしたらあいつを倒せる?

フーフーと息を整え目を閉じ頭に上った血を下げ考える。

そして目を開けると男の側へゆっくりと近付き、スコップを振り上げると後ろからこめかみを渾身の力で殴った。

「ぐああっ!」

男が呻きながら床に膝をつく、気絶をさせられなかった事に焦るがすぐさま顎に向けて第2打を放つ。うまくヒットして男は倒れた。

「ユノ!逃げるぞ!」

震えるユノの手を取って部屋から駆け出す。

男が何者か分からない以上、最悪魔法を使う可能性は捨てきれない。魔術師は普通の人間がどう頑張っても敵う相手ではないので逃げるしかないんだ。

ドゴォーン!!!

逃げる俺達の横を水の塊が通過した。

「最悪だ、魔術師かよ。」

どうやら水を操る奴らしい。

「くそ国王の慰めものが、堂々と逃げてんじゃねーぞぉ!!」

男は口から泡を吹きながら怒鳴っている。まともじゃないとすぐ分かった。つまり話が通じないって事だ。

「国王に相手にはされないで寂しいんだろぉがぁ!!!俺が可愛がってやるから出てごぉいぃ!」

俺達は狂った男の目茶苦茶な水の攻撃をなんとかかわしながら外に出ると庭の方へ向かった。

「ラインハルト!?庭の先は行き止まりだ!!」

恐怖に戦きながらユノが悲鳴のように叫ぶ。

「知ってる。」

俺はユノを薬草ハウスの後ろへ隠すと男と対峙した。

「なぁんだぁ?お前はぁ。」

目がイっている。やはり話が出来そうな相手ではない。

男が俺の方に手をかざした。

「グフゥ!!」

右肩に氷の槍のような攻撃が当たりよろめく。

「飽きられちまって残念だったなぁ!!俺が慰めてやるからぁ、素直に足開けぇ!!!」

いたぶるのを楽しんでいるような攻撃が続く。

「ごふぅっ!」

今度は腹に刺さった。たまらず膝をつく。

「あああ!!お前じゃねぇ!!!あの売女ぁ!!どぉごいっだぁ!!!」

男は辺りをキョロキョロと見渡しユノを探しているようだ。

「あいづぅ!!あのバカ国王めぇ!!身分が高い俺が低い奴をどぉしよぉが俺の勝手だろぉがぁ!!いちいち取り締まりやがってぇっ!!道端のゴミを犯して殺したからって処罰するだとぉっ!!ふざけんなぁっ!!挙げ句の果てにお家断絶だぁ!?親は自殺したぁっ!!妹は娼婦にぃぃっ!!」

男が涙を流しながら俯く。

「あの悪魔あああああ!!!!」

男の体全体から水柱が上がる。あれをくらったら水圧で死ぬな。力をためているのかどんどん水柱は大きくなっていく。

朦朧とする意識の中立ち上がる。ここで俺が死んだらユノは殺されるだろう。そんな事は絶対にさせない。

「俺は今度こそユノを守ると約束したんだ。」

そう言うと俺はハウスへ繋がっているゴムに似た魔物の素材で作ったホースを掴むと水柱を上げている奴に投げつけた。

「バカがぁ!これが攻撃かぁ!情けねぇなぁ。お前みたいなヒョロガキがぁ守れる訳ねぇだろぉがぁ!!」

そう言って奴はホースを氷の刃で切り裂いた。その瞬間。

バチバチッ!!!!

「ぎゃあああああ!!!!!」

断末魔をあげて奴は黒こげになっていく。

ホースには電気が通っていた。魔力を持たない俺は電気を作って熱帯地帯に近い環境をハウスの中に作り出していた。

――まあ、天才だから?電気くらい作っちゃうわな。

氷の槍で裂かれたホースの中の電気は溶けた水を伝いずぶ濡れの奴を感電死させた。

「……ふふふ、あははは。勝ったぞ、ユノ!魔力を持たない俺がクソ魔術師に勝った!魔力がなぁんだっ!!魔法が何だって言うんだ!!だぁれがバカだぁ!!この俺にバカなんて言う奴は絶対に許さない!このバーカ、クソ野郎!!クズクズクズっ!!」

黒歴史なのでハッキリとは覚えていないが俺はダラダラと血を流し燃え移った炎に巻かれていくハウスを見ながらハイテンションに喚き散らしていたらしい。

ユノはとっくに気を失ってた。

じゃあその様子を誰が見たって?

騒ぎを聞き付けた王国騎士団だよ。

そうだよあえなく御用だよ。
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