主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

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最終章

64 誰が魔術師を殺した

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「ああ!?ちょっ!?離せ!俺に触るな!おい!こらぁっ!そこのお前!!気安くユノに触ってんじゃねぇぞ!!」

現れたキラキラした騎士団の奴等に羽交い締めにされながら俺はわめきまくった……らしい。

「ユノに何かしやがったらお前ら殺してやる!だから触んなって言って……いったー!痛い痛い痛い!!血出てる!血ぃ出てる!……ってハウスがぁ!!俺のハウスが燃えてる!?何で!?おい!消せ消せよ!水魔法でパパっと消してくれ!あっ!やっぱ駄目だ!そこら辺の水に触れたら感電する!死ぬから!近付くなよ!」

話している途中で我に返った俺は目の前の燃え盛る炎になすすべもなく、バチバチと音をさせながらハウスが燃えていく姿を見ながら呆然と立ち竦んだ。

「俺のハウスが……金の成る木がぁ……。」

そこで俺はパタリと倒れた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「だから、俺が殺したと言ってるだろう。」

「嘘を言うな!お前のような魔力も持たぬ子供が魔術師を殺せるはずがないだろう!正直に何があったか話せ!」

あの後瀕死だった俺をヒールで回復させた騎士団は俺に尋問をしてきた。俺は正直に話したが全く信じてくれない。確かにこんなもやしっ子の俺が筋骨粒々でしかも魔術師の奴を殺せたなんて信じてくれないのは仕方ないのかもしれない。

「じゃあ、水魔法でびしょ濡れの男は雷が落ちて死んだ。でいい。」

「でいい、って何だ。でいい、って。」

キラキラ騎士団の男がため息をつき頭を抱える。

ガチャリ。後ろからドアの開く音がして誰かが入ってきた。俺は前を向いたまま不機嫌丸出しでそいつの顔を見ようとはしなかった。

するとそいつが懐かしい声でキラキラ騎士団の男に話しかけたんだ。

「どうだ?何か分かったか?」

「団長~。こいつ話が通じません。」

……団長?そうかお前騎士団長になったのか。何かな。

俺は下を向きにやける顔を隠す。

そして好奇心に負けてチラリとその男の顔を盗み見た。

緑の短髪と真っ直ぐなまなざしは相変わらず。それに余裕のある落ち着いた雰囲気がプラスされ安心感のある大人の男になっている。


久しぶりだな、芝生頭。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



俺の中で芝生頭と言ったらダンジョンへ連れていって貰っただけで醜男に惚れた恥ずかしい奴なんだよなぁ。

その事は今やご立派な騎士団長となったこいつの中でどんな位置づけになっているのか正直気になる。いい思い出なのか?恥ずかしい思い出なのか?はい!消し去りたい過去に1票‼

「顔色が悪いな。治療は済んだと聞いていたが?……どうしてニヤついている?」

芝生頭が訝しげに俺を見下ろす。

「傷は回復させましたが、元々体が弱いらしくて……。そんな体のくせにお尋ね者の凶悪な魔術師を一人で倒したなんて嘘をついています。どうしましょうか?」

ええと、まさかまた牢屋行きじゃないだろうな。

「すんません、最初に嘘吐きました。雷です。本当に雷があの男に運良く落ちて僕は助かりました。」

俺は全く心を込めず棒読みで嘘を言った。

「……凄い、子供のくせにここまでふてぶてしく嘘をつくとは。」

キラキラ騎士団の男が疲れ果てたように呟く。

「子供じゃねぇし。成人してるし。」

ガタッと音を立てて騎士団の男が椅子から転げ落ちた。

「嘘だろ!?12才くらいかと思っていた。」

「16才になりましたけどぉ!!!背も伸びたんですけどぉ!!!!!!」

そこ、そんな驚くとこぉ!?

「こら!失礼だぞ。世の中には色んな種族がいるんだ。」

芝生頭が騎士団の男を嗜める。

「いや、種族同じだし!お前が一番何気に失礼だぞ!!」

俺はプンスカ怒って芝生頭に抗議する。

「お前、団長に何て口を……。」

あっまずい、不敬罪とかで牢屋行きか?
牢屋での人間扱いされなかった5年を思い出す。

「……何か、気持ち悪い吐きそ、うっぷ。」

壮絶な記憶に、吐き気をもよおし両手を口に当てる。

「我慢しなくていい、大丈夫だ。」

芝生頭が優しく背中を擦ってくれる。

……おいまて、何が大丈夫なのか、そんなに擦られると……

駄目だ、芝生頭には背中を擦った責任を取ってもらうことにした。

俺はきらびやかな騎士団長の服装に身を包んだ芝生頭の胸に全てをリバースした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




ゴシゴシゴシ。後ろから髪を凄い力で洗われる。

「っいて!痛い!やめっ!」

「我慢しろ。男のくせにこのくらいで根をあげるな。……成人しているのだろう?」

あの後盛大に吐いた俺は吐瀉物が零れないように芝生頭と密着したままお姫様抱っこされそのまま騎士団の公衆風呂場と思われる所に服のまま入れられ洗われている。一緒に汚れた芝生頭と入るのは分かるが、何故自分で洗わせて貰えないのか?

俺の弱音は聞いて貰えずそのまま体までゴシゴシされ、一気にお湯で流される。ラインハルトの時と全然違うぞ!?

痛ぇ、身体中がヒリヒリする。

いつもアレンと寝る前はお風呂に入れられ洗われるが使用人達の熟練の働きに今初めて感謝した。あの人たちはプロだったんだなぁ。

ちゃぽんと湯船に浸かりながらヒリヒリをやり過ごす。因幡の白兎もこんなに痛かったのだろうか。

自分も洗い芝生頭がザッバーン!と入って来るとお湯が結構流れ出た。筋肉の鎧をつけてるから結構体重あるんだな。すげーバキバキだ。

おいこんなに広いのに何故隣に座る?

「細いな。これで本当に成人しているのか?ん?どうしてこんなに真っ赤なんだ?のぼせたか?」

俺は珍しい動物じゃねぇぞ。

腕を掴まれ芝生頭の眼前に上げられる。

「あの、俺は牢屋に入れられるんでしょうか?」

触られた所がちょっとヒリヒリして痛くても芝生頭の好きにさせながら恐る恐る訪ねた。

NO   MORE   牢屋!

回避出来るなら敬語使っちゃうYo!!

「君には国王様とその養子であるユノ様への暗殺未遂の嫌疑がかかっている。このままでは牢屋どころか処刑だな。」

何でそうなる!?俺が真っ青になっていると芝生頭は俺の頭を撫でながら俺と視線を合わせた。

「正直に真実を話せば疑いは晴れる。君は何故あの家に居た?そして何があった?」

子供を諭すように話しかけられ、処刑は嫌だともう一度正直に話す。

「……と言うことは君が本当に魔術師を殺したのか?」

コクコクと祈るような気持ちで頷く。頼む信じてくれ!お前、俺に強くして貰った恩があるだろう?返せ!今が返す時だ!

「魔力を持たない者が頭脳だけで魔術師を殺すとは……分かるか?とんでもない事を君はしたんだぞ?我々魔力を持つ者にとってその頭脳は驚異になりうる。この世界の均衡が崩れるかもしれない。」

……よし!完璧なエリクサー作れるの黙っとこうっと。

俺は熱い湯船に浸かっているのに冷や汗をかきながらそう心に誓った。

「このまま君を解放すればその頭脳に目をつける輩が出てくるだろうな。さて、どうしようか。」

なにそれ怖い。目をつけられて捕まったら一生そいつの為に働かせられて、都合が悪くなったらゴミのように捨てられ殺されるパターンだな。

「え……と、芝じゃなくて、あんたが黙っていてくれたらいいんじゃないかと……。」

上目使いに芝生頭を見て様子を伺う。

「俺が?……騎士団長の俺に法を破る危険を犯せと?」

うん、隠蔽してくれ。

じっと俺を見下ろす瞳と芝生頭を見上げる瞳。

シーーーーン。

「……ダメ、ですよね~。」

無理だよなぁ。昔から真っ直ぐで、曲がった事が大嫌いだったもんなぁ。

「良いだろう。それで、見返りは何だ?」

何だと!?芝生頭が大人になって……る?でも見返りって……。

「え、と。俺の好意、とか?」

此処で隠蔽してくれたら芝生頭に感謝して大好きになる!と思う。マブ達希望だ!

「……ぶっ!わっはっはっは!」

あっ、思いっきり笑われた。

「好意か、それはいい。今日の事は俺と君の秘密にしよう。襲われた君とユノ様は、運良く落ちた雷に救われた。それでいいな。」

頭をポンポンと優しく撫でられ、俺はホッと胸を撫で下ろした。

ドクンッ!

ホッとした途端、いきなり心臓が跳ね上がった。

ドクドクドクドク……

ドキドキが止まらない。目の前には頼りがいのある騎士団長になったイケメン芝生頭。

俺はこの症状を知ってる。そう、これは……

あちぃ…………」

NOBOSETAのぼせた

そう、湯船に長く浸かりすぎた俺はのぼせてしまったのだ。

堪らずくたぁと芝生頭にもたれ掛かる。

俺を抱き止める芝生頭。

「……ほっとけない子だ。」

芝生頭が小さく呟いた言葉は俺には聞こえなかった。
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