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番外編
93 こんにちは赤ちゃん 2
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微妙な雰囲気のままその日の仕事は終わった。こんな日は家に帰っても「嫁」に集中出来ないし、友と呑む事にする。
「――いつも貴方は突然ですね。」
年をとっても緑の短髪の爽やかイケメンはエールを呑むと「困った人だ」と笑って言った。いや、むしろ年をとって色気が増し増しになって腹のたつことにこれまた最強になっている。
「騎士団長だろう?落ちこぼれ街道まっしぐらな可哀想な俺を慰めろ。」
俺はエールを飲み干し机の上にダンと置いた。
「慰めろって、自分でその道を蹴っといてよく言う。受けていたら貴方は今頃花形の魔術師団長だったのに。」
「だって面倒くさかったんだ!団長だぞ?忙しすぎて「嫁」との時間が減るだろうが!……だからと言って陛下の寵姫のお守りとか……ないわ。あいつ何を作ろうとしているか知ってるか?あの野郎……あっこれ機密事項だったわ。とにかく男のくせに寵愛を受けてる奴の下で働くなんて地獄だ。」
俺は机に顔を埋め嘆いた。
「……ルカ先輩の飛ばされた先って先生の所なんですか?」
俺が机に顔を埋めたまま頷くと肩を掴まれて顔をあげさせられる。
「先生には気を付けた方がいい。」
眼前に迫るイケメンにぽぅっとなって眼鏡がずれる。
「……気を付けろって、あいつ今じゃ魔法も使えない、レベル1の只のなよなよした男だぞ?ほんとにガッカリだ。」
確かワタヌキも先生の事好きだったんだっけ……。残念、今やあいつは王の寵姫だ。
「いや、あの見た目に騙されてはいけない。兎に角逆らわず、言うことを聞いて下さい。万が一にも恨まれたりしては駄目ですからね?」
俺はワタヌキの鬼気迫る勢いに取り合えず頷いた。
「……それにしても、その姿はどうにかならないんですか?かつての抱かれたい男No.2が台無しだ。」
うって変わって今度はふざけた口調でワタヌキが言うから、俺は冗談言うなとワタヌキから距離を置き耳を塞いだ。
「やーめーろー!黒歴史を堂々と話すな!あれは人生の汚点、お前だってそうだろうが!男相手に抱くだの抱かれるだの気持ち悪い!」
俺が悪寒に震え体を抱え込んでいると、ワタヌキは真剣な顔をして俺を真っ直ぐ見た。
「冗談なんかじゃない。あの頃の貴方はチャラく見せておきながら会長になった俺を人知れず何度も助けてくれた。俺にとっては頼れる先輩でしたよ。……まぁ、この俺が思わず手を出すくらいです。魅力的だったのは事実だ。……あれから若い頃何度か貴方と寝たが、男はルカ先輩だけです。」
俺は不可抗力でワタヌキとそうなった事を思い出す。その後も何度かそういう雰囲気になって寝た。俺だって男はワタヌキ以外となんて考えたくもない。……いや、先生がいた。あの人は別格で未だに俺の心を捉えて離さない罪な人。今のあいつなんかとは違う。
「……先生、会いたい。」
俺がテーブルに顎を乗せ唇をつき出してべそをかいているとワタヌキが俺の手首を掴んだ。
「今の話から何故、先生が出てくるんだ?俺だって先生は今でも大切な人ですよ。だけど貴方が先生を未だに恋しがるのは嫌でたまらない。しかも、今は一緒に仕事をしてるなんて……まだ、好きなんですか?」
焦れたように熱い眼差して言われると下半身が疼いてしまう。俺たちの関係は何なんだろう?友達ではしない、やらしい事をした事があり、でも恋人でもない。
「えっと……する?」
俺はコテンと首を傾げてワタヌキを上目使いに見た。10年ぶりか……
「する。」
わー、こいつ欲情してる。
「……これ呑んでからな。」
まだ並々と入っている二杯目のエールを目線でさすと、ワタヌキは俺からそれを奪い取り一気に飲み干してしまった。ゴクゴクとワタヌキの色気のある喉が上下してとても卑猥だ。
「……必死か。」
俺は恥ずかしくなりそこから目線をそらした。その時……
「あら、騎士団長、奇遇ですね。」
エリートちゃん改め魔術師団長がニコニコと現れた。
「どうも、この度は団長就任おめでとうございます。しかし正式な場ではなくこんな場所でお会いしてしまうとは、正式な祝辞は後程しますのでお許し下さい。」
先程までの獲物を狙う欲情した顔とは違い人好きのする爽やかな笑顔で新しい魔術師団長へすらすらと話しかけていくワタヌキ。
「ありがとうございます。せっかく偶然お会いできたのですし、この後お食事でもいかがでしょうか?」
魔術師団長が頬を染めワタヌキを誘う。
「いえ、私は彼と先約がありますので……」
チラリと俺を見るワタヌキの顔が困ったように揺らぐから、俺は気をきかせる事にした。今まで魔術師団は騎士団を下にみている風習があった。そんな中新しい魔術師団長が友好的に騎士団長のワタヌキへ誘いをかけるということは、関係がよい方向へ進む可能があるかもしれないのだ。
「俺、用事を思い出したから行くわ。」
「え、ちょっ!?」
制止しようとするワタヌキに手をヒラヒラと振り俺は店を出た。
魔術師団長一度もこちらを見なかったな。汚物は見たくないってか……。
それにしても偶然って、エリート中のエリートがこんな男臭い居酒屋に来るとか……頬を染めた魔術師団長の顔を思い出す。
……ワタヌキにもやっと春が来るかもなぁ。
10年前、奴の縁談を俺が体を使って阻止してからあいつは結婚しないでいた。あいつが結婚するって聞いたら無意識に体が動いて「俺にしとけよ」と誘惑してしまった。破談になってから、何て事をしたんだと真っ青になり、逃げて逃げまくって徹底的にあいつを避けた。最近だ、こんな風にまた気軽に酒が呑めるようになったのは……
今度は絶対に邪魔しちゃ駄目だ。
「――いつも貴方は突然ですね。」
年をとっても緑の短髪の爽やかイケメンはエールを呑むと「困った人だ」と笑って言った。いや、むしろ年をとって色気が増し増しになって腹のたつことにこれまた最強になっている。
「騎士団長だろう?落ちこぼれ街道まっしぐらな可哀想な俺を慰めろ。」
俺はエールを飲み干し机の上にダンと置いた。
「慰めろって、自分でその道を蹴っといてよく言う。受けていたら貴方は今頃花形の魔術師団長だったのに。」
「だって面倒くさかったんだ!団長だぞ?忙しすぎて「嫁」との時間が減るだろうが!……だからと言って陛下の寵姫のお守りとか……ないわ。あいつ何を作ろうとしているか知ってるか?あの野郎……あっこれ機密事項だったわ。とにかく男のくせに寵愛を受けてる奴の下で働くなんて地獄だ。」
俺は机に顔を埋め嘆いた。
「……ルカ先輩の飛ばされた先って先生の所なんですか?」
俺が机に顔を埋めたまま頷くと肩を掴まれて顔をあげさせられる。
「先生には気を付けた方がいい。」
眼前に迫るイケメンにぽぅっとなって眼鏡がずれる。
「……気を付けろって、あいつ今じゃ魔法も使えない、レベル1の只のなよなよした男だぞ?ほんとにガッカリだ。」
確かワタヌキも先生の事好きだったんだっけ……。残念、今やあいつは王の寵姫だ。
「いや、あの見た目に騙されてはいけない。兎に角逆らわず、言うことを聞いて下さい。万が一にも恨まれたりしては駄目ですからね?」
俺はワタヌキの鬼気迫る勢いに取り合えず頷いた。
「……それにしても、その姿はどうにかならないんですか?かつての抱かれたい男No.2が台無しだ。」
うって変わって今度はふざけた口調でワタヌキが言うから、俺は冗談言うなとワタヌキから距離を置き耳を塞いだ。
「やーめーろー!黒歴史を堂々と話すな!あれは人生の汚点、お前だってそうだろうが!男相手に抱くだの抱かれるだの気持ち悪い!」
俺が悪寒に震え体を抱え込んでいると、ワタヌキは真剣な顔をして俺を真っ直ぐ見た。
「冗談なんかじゃない。あの頃の貴方はチャラく見せておきながら会長になった俺を人知れず何度も助けてくれた。俺にとっては頼れる先輩でしたよ。……まぁ、この俺が思わず手を出すくらいです。魅力的だったのは事実だ。……あれから若い頃何度か貴方と寝たが、男はルカ先輩だけです。」
俺は不可抗力でワタヌキとそうなった事を思い出す。その後も何度かそういう雰囲気になって寝た。俺だって男はワタヌキ以外となんて考えたくもない。……いや、先生がいた。あの人は別格で未だに俺の心を捉えて離さない罪な人。今のあいつなんかとは違う。
「……先生、会いたい。」
俺がテーブルに顎を乗せ唇をつき出してべそをかいているとワタヌキが俺の手首を掴んだ。
「今の話から何故、先生が出てくるんだ?俺だって先生は今でも大切な人ですよ。だけど貴方が先生を未だに恋しがるのは嫌でたまらない。しかも、今は一緒に仕事をしてるなんて……まだ、好きなんですか?」
焦れたように熱い眼差して言われると下半身が疼いてしまう。俺たちの関係は何なんだろう?友達ではしない、やらしい事をした事があり、でも恋人でもない。
「えっと……する?」
俺はコテンと首を傾げてワタヌキを上目使いに見た。10年ぶりか……
「する。」
わー、こいつ欲情してる。
「……これ呑んでからな。」
まだ並々と入っている二杯目のエールを目線でさすと、ワタヌキは俺からそれを奪い取り一気に飲み干してしまった。ゴクゴクとワタヌキの色気のある喉が上下してとても卑猥だ。
「……必死か。」
俺は恥ずかしくなりそこから目線をそらした。その時……
「あら、騎士団長、奇遇ですね。」
エリートちゃん改め魔術師団長がニコニコと現れた。
「どうも、この度は団長就任おめでとうございます。しかし正式な場ではなくこんな場所でお会いしてしまうとは、正式な祝辞は後程しますのでお許し下さい。」
先程までの獲物を狙う欲情した顔とは違い人好きのする爽やかな笑顔で新しい魔術師団長へすらすらと話しかけていくワタヌキ。
「ありがとうございます。せっかく偶然お会いできたのですし、この後お食事でもいかがでしょうか?」
魔術師団長が頬を染めワタヌキを誘う。
「いえ、私は彼と先約がありますので……」
チラリと俺を見るワタヌキの顔が困ったように揺らぐから、俺は気をきかせる事にした。今まで魔術師団は騎士団を下にみている風習があった。そんな中新しい魔術師団長が友好的に騎士団長のワタヌキへ誘いをかけるということは、関係がよい方向へ進む可能があるかもしれないのだ。
「俺、用事を思い出したから行くわ。」
「え、ちょっ!?」
制止しようとするワタヌキに手をヒラヒラと振り俺は店を出た。
魔術師団長一度もこちらを見なかったな。汚物は見たくないってか……。
それにしても偶然って、エリート中のエリートがこんな男臭い居酒屋に来るとか……頬を染めた魔術師団長の顔を思い出す。
……ワタヌキにもやっと春が来るかもなぁ。
10年前、奴の縁談を俺が体を使って阻止してからあいつは結婚しないでいた。あいつが結婚するって聞いたら無意識に体が動いて「俺にしとけよ」と誘惑してしまった。破談になってから、何て事をしたんだと真っ青になり、逃げて逃げまくって徹底的にあいつを避けた。最近だ、こんな風にまた気軽に酒が呑めるようになったのは……
今度は絶対に邪魔しちゃ駄目だ。
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